「どちらか殺す。お前が選べ」パールマン『ダイアナの選択』
#海外 #映画 #アカデミー賞
映画界は春休みシーズンに突入。ファミリー向けの感動作や大作も悪くはないが、ちょっと違った映画を楽しみたいという方には、意外な結末が頭脳に刺激的な小作を2本おすすめ。
1本目は、3月14日より公開の『ダイアナの選択』。2003年の監督デビュー作『砂と霧の家』(ジェニファー・コネリー、ベン・キングズレー主演)がアカデミー賞3部門にノミネートされた、バディム・パールマン監督の第2作だ。
舞台は、アメリカ・コネチカット州郊外の小さな町。17歳の高校生ダイアナはある日、親友のモーリーンと一緒にいたところ、校内で同級生が引き起こした銃乱射事件に巻き込まれてしまう。犯人に銃を突きつけられ、「どちらか殺す。お前が選べ」と迫られた彼女は……。それから15年後、32歳になったダイアナは美術教師として働き、優しい夫と愛する娘と、花に囲まれた美しい家で暮らしているが、今でも事件の記憶と、あの時の”選択”に思い悩んでいる。
映画はエバン・レイチェル・ウッドが演じる17歳のダイアナと、ユマ・サーマン演じる32歳のダイアナの人生を、人気TVシリーズ『LOST』をほうふつとさせる、フラッシュバックとフラッシュフォワードを多用して交互に描いていく。あらすじを読むと、ダイアナは事件を生き延びたのだし、彼女が犯人の脅迫に対してどのような”選択”をしたかは想像できる気がするが、そうは問屋が卸さない。もちろん結末はネタバレになるので書けないが、そこはぜひ本編を鑑賞してもらいたい。
また、CM界出身のパールマン監督による美しい映像と、緻密で知的な構成も見どころ。映画には随所に花や水、鳥、ミツバチといった自然のモチーフが何かのメタファーであるかのように映し出され、色彩にあふれながらも、どこか怪しいムードを漂わせている。また、同じようなシーンが繰り返されるところもあるが、随所に変更が施されており、それぞれが伏線となっているらしい。1度見ただけでは気が付かない部分を探してみたくなる作品でもある。
もう1本の映画は、7日より公開されている『パッセンジャーズ』。今年2月のアカデミー賞では、『レイチェルの結婚』(4月日本公開)で主演女優賞にノミネートされた、アン・ハサウェイが主演するサスペンスで、監督は『美しい人』など、これまでヒューマンドラマを多く手がけてきたロドリゴ・ガルシア。
ハサウェイ演じるセラピストのクレアは、飛行機事故から奇跡的に生き残った5人の乗客のカウンセリングを担当。彼らの語る事件当時の様子はバラバラで、しかも彼らの背後には怪しい人影が見え隠れする。やがて、生存者たちが1人、また1人と姿を消していき、クレアは航空会社が事故の真相を隠していると疑い、調査しはじめるのだが……。
どちらの作品も、思いがけないラストに「どういうこと?」と思う人もいるかもしれないし、あるいは「そんなのありか」と思う人もいるかもしれない。また、細部に注意を払いながら鑑賞し、どういう結末が待ち受けているのか予想を立てながら見るのも面白い。納得がいくかいかないかは別として、予想が当たると、それはそれでうれしいもの。そんな楽しみ方のできる映画たちだ。
(eiga.com編集部・浅香義明)
『ダイアナの選択』
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パールマン監督の前作。重い。
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