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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 闇社会の勢力図と今後の展開 そしてそのキーパーソンとは!?
北芝健の「いわんや悪人においてをや」vol.05

闇社会の勢力図と今後の展開 そしてそのキーパーソンとは!?

kabukicho_kitashiba.jpg石原都知事の”浄化作戦”で安全になった
ともいわれる歌舞伎町だが……。

「犯罪者である彼あるいは彼女にも我々同様に人生があり、そして罪を犯した理由が必ずある。その理由を解明することはまた、被害者のためにもなるのでは?」こんな考えを胸に、犯罪学者で元警視庁刑事・北芝健が、現代日本の犯罪と、それを取り巻く社会の関係を鋭く考察!

 今回は、社会の数多の出来事に何かしらつながっている”闇社会”の動向について、少し考えてみたい。まず、闇社会の勢力図というのは、簡単にいってしまえばシノギを行う力と縄張り、いわゆる「シマ」と呼ばれるテリトリー同士のせめぎ合いの構図が関東圏の基本である。そこに個人の人脈や政財界への影響力など、力の絡み合った構造が、総体としての業界勢力図ということになる。

 関東の場合、その勢力図は多数の団体が入り乱れ、落ち着かない状態になっている。格の上では東京一の歓楽街である銀座をはじめ、諸外国の公的施設が存在し金を落としていく赤坂、新しい外国人犯罪の苗床として「第二の歌舞伎町」と呼ばれる六本木などは、関東最大勢力住吉会のシマということになっているが、三大指定暴力団の一つ稲川会の本拠地は長い間六本木にあったし、その辺りの細かい線引きというのは非常に混沌としている。また2002年には、関西のみならず日本全国に勢力を伸ばす山口組が歌舞伎町に本格的に進出し、05年には関東で強い力を持つ國粹会を傘下に取り込むなど、影響力を拡大させたことも、関東の勢力図が不安定になっている要因の一つである。

 全国的にみれば日本の闇社会は、その総数の半分以上を占める山口組優位の勢力がますます強くなっている。山口組の組織内では、全国を7つのブロックに分けた道州制が敷かれ、その様相がかつて欧州を統治したローマ帝国にも見立てられるほど、強大になっている。また、山口組は政界から芸能界まで、幅広く太いパイプを持っており、さらには諸外国のマフィアともつながっている。したがって、今後のヤクザ界の勢力図や動向を知るには、最大勢力である彼らの動きが一番のポイントになる。そして、その山口組のトップ、いわばローマ皇帝ともいうべき人物こそが、今後の闇社会の動向を考える上での最大のキーパーソンにほかならない。

 そのキーパーソンである六代目組長司忍こと篠田建市氏は、現在府中刑務所に収監されている。実質的に組を取り仕切っている若頭の高山清司氏は、ナンバー2としての器量や実力は認められているが、組の総意として担がれているわけではないとも一部で言われている。高山氏は六代目の信頼が厚く、山口組の直参になってから4ヵ月たらずで若頭に就任しているが、先代を輩出した山口組の中核勢力である山健組などには、現状に対してある種の不満を抱える人口がおり、不穏当な動きがあるとも影では囁かれている。絶対的カリスマ性を持った皇帝不在の状況下、拡大しすぎた帝国の裏側ではまさしくローマ帝国さながらに、分裂の火種がいつもくすぶっているといっても過言ではないのである。だからこそ、司氏は獄中にいながらにしてなお、キーパーソンであり続けている。

 実際、皇帝がいない現状を省みて、ヤクザ業界全体の衰えを指摘する意見もある。私は、ある組長から、「指定を逃れるためには、一度組を解散し地下に潜って細々と活動を続けていくしかない。組員の生活や家族を養うにはそうするしかない」と、ヤクザ業界の厳しい現実を聞かされたことがある。組織のマトリクスを保持するためには稼ぎは絶対に欠くことはできないが、92年に施行された暴対法のもとに、約9割の暴力団が国から指定を受け、どこもシノギは確実に厳しくなり、各勢力とも衰えは隠せなくなっている。

 06年に勃発した、九州における道仁会とそこから分裂した九州誠道会による一連の抗争が、いつまでたっても収束しなかったのも衰退が進んだ証であろう。親子ケンカのような私怨を発端にした抗争が長引けば、いたずらに世間の注目ばかりを集め、当局による取り締まりが厳しくなる。これは闇社会全体においてなんのメリットもないものであるにもかかわらず、さらに佐賀県の病院で入院患者を誤認によって殺害するなど、抗争に一般市民を巻き込む最悪の事態となった。これら一連の流れを受けて、当然当局側は取り締まりを強化し、闇社会全体がその影響を強く受けることになる。このような抗争をすぐさま手打ちにできる大物の不在、これはまさに業界全体が衰退している現れといえるであろう。そんな状況に加え、海外マフィアが続々と日本に進出し、その活動範囲を広げてきている。これが、日本の闇社会の厳しい現状なのである。

 キーパーソンたる司忍六代目組長がいつごろ出所するのか、詳細は当局も発表していないが、出所はそう遠い話ではないだろうという目測もある。彼が出てくれば、山口組内部においてマスコミ、司法に対しての対応が強化され、警察との交流は末端においてまで、かなり厳しく制限されることになるのは論を待たない。そうやって手綱が締められることで、闇社会内部の秩序は少しずつ安定に向かっていくのであろう。

 今後の動向は、前述のように最大勢力である山口組と司忍氏によって大きく左右される。しかし、彼が出所したとしても、業界の衰退は止まらないのではないかと考えられる。山口組は闇社会のローマ帝国として、他団体の手本となるような努力目標を掲げ、ある種の社会的な落としどころに落ち着いた存在として認められない限り、業界全体が現状の勢力を維持していくのは難しいだろう。なんなら組織を改変して、そのメンタリティだけを保持した、命がけの道楽としてヤクザをやるようなスタイルに変貌してくれれば時代も変わると私は思う。田岡一雄三代目の言い残したように、「山口組は親睦団体である」という任侠のマインドを考察するならば、選択肢も広がるのである。
(談・北芝健/構成・テルイコウスケ)

shibakenprf.jpg●きたしば・けん
犯罪学者として教壇に立つ傍ら、「学術社団日本安全保障・危機管理学会」顧問として活動。1990年に得度し、密教僧侶の資格を獲得。資格のある僧侶として、葬式を仕切った経験もある。早稲田大学卒。元警視庁刑事。伝統空手六段。近著に、『続・警察裏物語』(バジリコ)などがある。

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最終更新:2009/03/14 11:00
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