繰り返される「つこうた」データ流出はなぜ止まらないのか
#ネット #著作権
WinnyやShareなど、ファイル共有ソフトを介したデータの流出が止まらない。私生活を撮影したプライベート画像や、住所、氏名などの個人情報、さらには企業の顧客名簿、未公表の企画書、取引先の一覧リストなど、ネット上に一度流出したデータは瞬く間に拡散し、世界中のパソコンやサーバーに保存されることになる。これらの流出データを完全に消去することは、事実上不可能だ。
巨大掲示板「2ちゃんねる」では、こうした流出騒ぎを「つこうた」と呼ぶ。2005年にWinnyを通じて個人情報を流出させた滋賀県草津市の市議がマスコミの取材に対し「息子に聞いたら『Winnyをつこうた』と言っていた」と応えたのがその語源だ。この市議の例を出すまでもなく、データを流出させたユーザーは「2ちゃんねる」などの掲示板で祭り上げられ、私生活や仕事に深刻な支障をきたすケースも決して少なくないという。
にも関わらず、データ流出騒ぎは後を絶たない。今年初頭には、ファイル共有ソフトによるデータ流出に関して注意を喚起すべき立場の独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」職員が2GB以上という大量のデータを流出させ、大きな騒動を起こした(記事参照)。
なぜ「つこうた」は止まらないのか。事情に詳しいネットライターA氏に話を聞いた。
「WinnyやShareを通じてデータを流出させる暴露ウイルスは複数確認されていますが、その多くはユーザーが自らクリックすることで発動する”アプリケーション”なんです。つまり、流出騒ぎを起こすユーザーは自らそのスイッチを押しているということです」
暴露ウイルスの多くは、フォトショップなどの高額アプリや動画ファイルなどに偽装されて流通しているという。その偽装を見破れなかったユーザーが暴露ウイルスを自分のパソコンで実行することにより、データはユーザーの意に反してネット上へと流出していくのだ。
「データ流出を起こすユーザーは、ほぼ100%、P2P(ファイル共有ソフト)を使って違法にソフトや動画をダウンロードしようとしていたと考えるのが自然でしょうね。そうでなければ、偽装ファイルを安易にクリックする理由がない。もともと暴露ウイルスそのものが、Winnyの違法利用者を”こらしめる”ために作られたものだと言われているんです」(同)
ファイル共有ソフトによる個人データの流出はネット初心者が起こしているものではない、ともA氏は語る。そもそも、ネットに関するある程度の知識がないと、共有ファイルを自分のパソコンにダウンロードすることはできないのだそうだ。共有ファイルがダウンロードできなければ、当然、暴露ウイルスに感染することもない。
「WinnyにしろShareにしろ他のP2Pにしろ、ある程度ネットに慣れたユーザーでなければ使いこなせません。逆に言えば、ネットに慣れたユーザーだからこそ、慢心が生まれるんでしょうね。『自分だけは大丈夫』と思っているんです。そして、偽装された暴露ウイルスを”お目当て”のファイルとカン違いして実行してしまう。報道では一様に感染ユーザーを”被害者”と呼んでいますが、自業自得という面も少なからずあると思いますよ」(同)
もともとP2Pソフトの草分けであるWinnyは「2ちゃんねる」内の専門掲示板だけで開発、テスト、配布のやり取りが行われていた。だが昨年、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)、日本レコード協会(RIAJ)、日本国際映画著作権協会(JIMCA)が共同で行った調査によると、ファイル共有ソフトを一年以内に使用した「現在使用者」は10.3%。02年の調査開始以来、初めて1割を超え、今なお増え続けているという。
「P2Pの爆発的な普及には、回線の高速化が大きな役割を果たしました。ADSLや光回線などインフラが整ったことで、数百MB、数GBといった巨大なファイルが容易にやり取りできるようになった。しかし、それだけでは、もともとP2Pを知らないユーザーを取り込むことはできません。多くのユーザーをP2Pに取り込んだのは、雑誌なんですよ。複数のネット雑誌が、競って、WinnyやShareなどを『無料でファイルを手に入れられる便利ツール』と銘打ち、詳細な使用方法とともに紹介したんです。それによって、にわか知識でP2Pに手を出す初心者が大量に現れました。中でも、もっとも売れていた雑誌を出版していたのは、当時ADSL回線の普及に躍起になっていたインフラ屋のグループ会社ですからね。高速回線を導入させるために、その恩恵がもっとも顕著に現れるP2Pをばら撒いた、と言われても仕方ないですよ」(同)
最後に、A氏に「個人情報を流出させない方法はないのか」と聞いてみた。
「一般ユーザーにとって、今のところ違法ダウンロード以外にP2Pの使い道なんてないでしょう。だから、答えは簡単です。必要ないなら、P2Pなんて使わなければいい。とはいえ、現在使用している人がP2Pソフトをパソコンから削除しても、感染ファイルが残っている可能性は大いにあります。心配なら今までのデータはすべてあきらめて、新しいパソコンを買ってくるのが最善でしょう。もちろん、ウイルス対策ソフトを導入してアップデートを最新の状態に保つことは言うまでもありません」
それでも、インターネットにつないでいる限り「流出の可能性ゼロ」という状態はありえない、とA氏は言う。その危険性を自覚することが、自己防衛の第一歩と言えそうだ。
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