「壊してくれ」アスベスト問題でビルオーナーが異例の上申
当サイトや「サイゾー」12月号でも報じた通り、”ドラッグストアの元祖”と呼ばれ、神奈川県を中心に店舗展開しているスーパードラッグストア「Fit Care DEPOT」にアスベスト公害疑惑がわき起っている。同チェーンの新横浜本部店から基準値以上のアスベストが発生していると、同店の建物の所有者である有限会社三徳が告発、立ち退きを求めて訴訟にまで発展するという騒動になっているのだ。さらにここに来て、所有者側が横浜市の中田宏市長に、被害防止のために建物を解体する行政指導を望むという上申書を提出し、事態は混迷を深めている。
三徳の代理人は、「Fit Care DEPOTを経営する株式会社カメガヤは、今も建物に居座ったままで、”建物明渡訴訟”も遅々として進まない。裁判所はアスベストの実態についての認定は避けているし、裁判が長引けば長引くほど、アスベストの被害者が増えることが予想される。そのときになって、建物の所有者として責任を取れと言われても我々が困る。そのため、やむを得ず、こちらから建物を壊してもらうように、中田市長に行政指導を求める上申書を提出したんです」と語っている。自らの所有物を「壊してくれ」と上申するとは稀なケースであろう。
改めて、ことの経緯を説明すると、三徳はカメガヤに平成18年9月30日までに契約で建物を賃貸した。その前後に「労働安全衛生施行令」が改正され、三徳の調査によって建物から基準値以上のアスベストが検出されたために8000万円の立ち退き料を提示してた立ち退きを要求した。だが、それを拒絶されたために19年11月に”建物明渡訴訟”を横浜地裁に提訴。昨年の7月に2億円の立ち退き料で6カ月以内で立ち退きを命じる判決が出たが、カメガヤは判決を不服として、高裁に控訴している。
「和解協議の席でカメガヤは、”17億円なら立ち退く”と言ったんです。ビルを2棟買える額ですよ。カメガヤの本音は、アスベスト被害など関係なく、商売上都合のいい今の場所から出て行きたくないってことですよ」(前出の三徳代理人)
三徳側は、横浜市にもアスベストの実情を再三訴えたが、アスベストの検出された建物の場所は、厳密には規制外であるということに加え、民間同士の問題だと責任逃れをしてきた。
「実際にはアスベストは建物全体に使用されていて、知らない間に毎日のように店内に巻かれているんです。ストアに出入りするお客さん、社員が被害者にならない保証はない。中田市長に直訴して、一日も早く、建物を壊してほしいです」と、取材してきたフリーライターは言う。
白黒はっきりしない騒動の中で三徳側の言い分通りだとすれば、被害を被るのは客や従業員だ。行政には、積極的に問題解決に乗り出してほしいものだ。
何が問われ、どう解決するのか
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