“ガッカリ観光地”になる!? 廃墟の王様『軍艦島』の未来
#DVD #サブカルチャー
長崎市の南西に浮かぶ「軍艦島」(正式名称:端島)といえば、廃墟好きを中心に、多くの人に知られている近代遺産だ。石炭採掘のために開発された島は、まさに”廃墟の王様”の名に劣らず、圧倒的に異様な外観で見るものを惹き付けている。2008年には文化庁の世界遺産暫定リストにも登録され、目下ユネスコに世界遺産登録申請中の軍艦島には、日本だけでなく、アメリカやフランス、ドイツのクルーまでもが取材に押し寄せるという。
しかし、そんな軍艦島は、これまで安全上の理由から一般客には開放されておらず、クルーズ船で海から眺めることしかできない「遠い島」だった。そんな事情から不法に上陸をする不届き者が後を絶たず、安全面の不安やマナーの悪さなどが指摘されていた。
そのような状況を打開するために、地元長崎市では軍艦島を本格的に観光施設として整備しようと目論んでおり、この春から遊歩道が敷設される予定だ。これでようやく憧れの廃墟に足を踏み入れることができる、と廃墟マニアが喜びの声を上げたのも束の間。「ちょっとガッカリしてしまうかもしれない」と語るのは、「NPO法人 軍艦島を世界遺産にする会」理事長であり、軍艦島ガイドを務める坂本道徳さんだ。「遊歩道が敷設されるのは、ドルフィン桟橋と呼ばれる船着き場からわずか220メートル。廃墟として人気の高い住居跡や炭坑跡などには、崩落の危険もあり立ち入ることができません」という。
どうやら観光地化され、解放されたとしても、その魅力を存分に味わうことができず、寸止め状態の歯がゆさを味わうことになりそうな軍艦島。これでは、軍艦島の魅力が全国に広まるどころか逆に”ガッカリ観光地”の仲間入りをしてしまうかもしれない。やはり軍艦島の魅力は、日本で初めて鉄筋コンクリートで造られた集合住宅や、高度経済成長を支えた石炭の採掘場の廃墟探索だろう。
そんなわけで、一般人にとってはまだまだ「遠い島」のままでありそうな軍艦島なのだが、その魅力を余す所なく紹介したDVD『軍艦島オデッセイ~廿世紀未来島を歩く~』が昨年末に発売され反響を呼んでいる。
このDVDに収録されているのは、廃墟として風化しつつある現在の軍艦島の風景。住居跡や商店街跡、学校跡などの人々が生活していた場所の物寂しい映像に、人が生活していた頃の貴重な映像が折込まれている。廃墟探索の最大の魅力とは、そこに人が生活を営んでいたという場所の記憶だろう。現在と昔の状況が重ね合わされることによって、「ここに人が生活していたんだ」という想像が掻き立てられる映像だ。錆び付いたまま放置された冷蔵庫や年代物のステレオセット、ジュースの空き瓶に風化した住居の外壁……。マンションの屋上に設置されていた、現在では荒れ果てている屋上庭園の映像など、まさに某国民的アニメ映画の天空の城そのものだ。軍艦島の風景を盛り込んだ本編の他にも、DVD特典として、旧島民のインタビューや、軍艦島島民の火葬場があった「中ノ島」の映像など、軍艦島上級者にも楽しめるものとなっている。
近年、趣味としても一般的になりつつある廃墟探索。果たして廃墟が人を惹き付けて止まないのはなぜなのか? このDVDに収録されている、軍艦島にひっそりと佇む建築物の映像を見ることによってその理由が分かってくるような気がしてくる。
ちなみに、35年前の閉山までこの島で生活をしていたという坂本さんによれば、軍艦島の思い出はその「音」だという。「人の声や石炭採掘の音、軍艦島はとてもうるさかったんですよ。でも今になって軍艦島のことを思い出すと、そのうるさかった音も心地よく聞こえてくるんです」と、話し振りもどことなく懐かしそうだ。もう二度と聞くことができないそんな「音の記憶」を求めるために、多くの人が軍艦島に足を運ぶのかもしれない。
文/萩原雄太(かもめマシーン)
●DVD『軍艦島オデッセイ~廿世紀未来島を歩く~』
KING OF 廃墟
現在、過去、未来が交錯する、異空間のタイムカプセル・軍艦島
前作『軍艦島~FOREST OF RUINS~』から4年──。
満を持して、新しい切り口で描く軍艦島DVD登場!
今作品では、現在から過去にさかのぼり「人が住んでいた時代の軍艦島」を紹介。
懐かしく、そしてやさしい「昭和」という時代を追体験できます。
どこにもない風景。
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