人気急落でサッカー協会困窮 頼みの綱はやっぱり”旅人”(前編)
#サッカー #座談会 #中田英寿 #Jリーグ
2010年南アフリカW杯に向けて戦う日本代表に内紛勃発、そして疑問視される岡田監督の手腕……。一方、その裏では、サッカー協会のサエない台所事情が……。そして、たびたび報じられる「中田復帰説」の真相までをも、サッカー専門誌編集者、スポーツ紙記者などが大胆暴露!
●座談会出席者
A……サッカー専門誌編集者
B……サッカー専門誌記者
C……スポーツ紙デスク
D……スポーツ紙記者
【A】 今年の日本サッカー界は、来年の南アフリカW杯出場へ向かっての大事な年となるはずなんだけど……。
【C】 正直、記事をつくるにあたっても、盛り上げどころがほとんどないよね。昨年11月のアジア最終予選でカタールに負けようものなら、監督の進退問題でいくらでも記事が書けたのに、あんなところで岡田ジャパン発足以来最高のゲームをしてしまってはね(苦笑)。
【A】 目の肥えたサッカーファンは、アジア最終予選が「実は楽」ってことを十分知っているし、日本代表がどう引っくり返っても、W杯本番で通用しないこともわかっている。かといって一般層のサッカーへの関心は昔に比べてかなり薄れているし。
【B】 要は6月のウズベキスタン、カタール、オーストラリアと続く3連戦で1勝1敗1分でも予選通過ですから。たとえその前の2月のホームのオーストラリア戦で負けても、3月のバーレーン戦に勝てば、もうグループリーグ2位以内=南アフリカ行きは手に入ったも同然ですよ。ということで、岡田ジャパンにはぜひ連敗していただいて、監督交代で話題作りをしていただければ(笑)。
【A】 でも、仮にそうなったとしたら、誰が次期代表監督を受けるのかな? 後任として日本サッカー協会(以下、JFA)が目をつけているのは、昨年末のクラブワールドカップでマンチェスター・ユナイテッドと対戦したガンバ大阪の西野朗監督という話もあるみたいだけど。
【B】 いや、その線はないでしょう。というのも、西野さんは96年のアトランタ五輪サッカー代表監督時代、JFAのバックアップがなかったことを今でも根に持っているらしくて、「クラブチーム監督のほうが自由にできる」って、代表監督にはまったく興味がないらしいんですよ。まぁ、日本代表選手全員をG大阪の選手にするのなら、話は別でしょうけど(笑)。
【C】 じゃあ西野さん以外で、JFAは次期監督として誰をリストアップしているのかな?
【B】 小野剛・技術委員長が「2010年まで体制を変えるつもりはない」と発言してますけど、それは協会側の偽りない総意みたいですよ。昨年当初、岡ちゃんの後継筆頭候補だった反町(康治)さんが、北京五輪サッカー代表監督で3連敗を喫して、今年はJ2の湘南ベルマーレ監督に都落ちしたし、U-19日本代表監督の牧内(辰也)さんも、ライバル韓国に手も足も出ず世界大会出場を逃す大失態。
現在、日本人監督で有能な人材は、ほとんどJ1クラブに流出していますし、とはいっても、かつてのトルシエやジーコみたいに外国人監督を雇う資金も今の協会にはない。各年代の代表監督を岡田さんが極力兼務するようになるのも、すべては経費削減のためですよ。
【D】 前代表監督のオシムさんが昨年いっぱいで「健康上の理由」という名目で、JFAアドバイザーを退任したけど、あれも本当はオシムさんに支払う報酬を捻出できないから。アドバイザー契約といっても、治療費含めて年間1億円は下らないし。
【B】 じゃあ、岡田ジャパンは消極的理由で揺るぎなしってわけか。彼がいつもメガネの奥で渋い顔をしているのも、それなら納得いくよな(笑)。
●サッカー協会財政難で地に落ちた日本代表
【A】 そう考えると、なんだかかわいそうにも思えてくる岡田監督なんだけど、選手からの評判は?
【D】 W杯予選初出場の若手選手である岡崎(慎司/清水エスパルス)や興梠(慎三/鹿島アントラーズ)を途中投入して引き分けてしまった昨年10月のホーム・ウズベキスタン戦直後は、メンバー同士で揉めごとが起こるなど最悪の雰囲気だったようだけど、カタールに快勝した後は表面上、不平不満は収まっています。
【C】 それでも闘莉王(田中マルクス/浦和レッズ)や大久保(嘉人/ヴィッセル神戸)とかは、監督のチーム作りに不満を持っているようだね。
【A】 闘莉王は自分を戦術の中心にしてもらっているのに、文句だけは世界トップレベルだな(苦笑)。
【B】 でも、岡ちゃんは98年フランスW杯でも、当時清水ユースの高校生だった市川大祐を帯同させるなど、選手の年齢にこだわらない半面、自分が「使えない」と判断した選手はほとんど試さないですから。昨年Jリーグ前半戦で素晴らしい活躍をしていた小笠原(満男/鹿島)がまったく代表からお呼びがかからなかったのも、岡ちゃんなりのこだわりがあったからだと思いますよ。
【D】 当時は「呼ばれても(代表には)行かない」と、小笠原もへそを曲げていたらしい。その矢先、試合中の大けがでシーズンを棒に振ってしまうし、彼にとっては踏んだり蹴ったりの08年だったね。
【C】 小笠原のような選手がいた一方で、「代表には呼ばれたくない」と駄々をこねた選手もいたんだって?
【B】 それは清水のDF高木和道のことですね(笑)。彼は昨年6月に阿部勇樹(浦和)の負傷で、急遽代表初招集されたんですが、記者に「代表に選ばれるかもよ?」と教えられても、「実家に帰る予定を入れているので、電話がかかってきても出ないっす」って(笑)。結局、代表には合流したんですけど。
【A】 選手に自分の帰省と代表招集を天秤にかけられるなんて……。ジャパンブルーの威光も地に落ちたもんだな。
【C】 それにしても「JFAにお金がない」という話は、いろんなところから聞こえてくるよね。
【B】 07年度は9000万円の赤字になったJFAの当期決算ですが、08年度はさらに悪化しそうな勢い。代表戦を管理している電通とJFAの代表事業部は、今年のアジアカップ予選を中心に、まだ”代表バブル”が残っている地方都市で代表戦を開催することで、首都圏ではあまり期待できない観客動員数増加を目指すようですけど、それも失敗に終わる可能性もある。いずれにせよ、キリンとの2015年までの長期スポンサー契約があるから、代表戦の試合数もそうそう減らせない。試合開催によってお金ばかりが出ていくという現状というわけです。
【D】 さらに、川淵前会長(現名誉会長)の肝入りで07年4月からスタートした通称”ユメセン(夢先生)”といわれる「JFAこころのプロジェクト」も相当財政を痛めているようですよ。現役選手やOB選手を体育の先生や講師として、小学校に派遣して、プロスポーツ選手としての体験を伝えるという理念は確かに素晴らしいんですけど、残念ながらお金は一切生まれないプロジェクトですからね。派遣された選手にもギャラを払わなくちゃいけないですし(笑)。一時、この事業をJFAから切り離すNPO化も画策したようですが、それも挫折。水面下ではプロジェクト縮小や廃止も検討されているようです。
【C】 川淵さんの”負の遺産”が、現在のJFA会長である犬飼基昭の足かせになっているってことか。即断即決だった浦和社長時代と比べて、彼の判断力が鈍ってしまうのも無理はないな。
(後編につづく/構成=宇美悠/「サイゾー」2月号より)
志岐幸子と岡ちゃん対談。
【関連記事】 もうひとつのニッポンスポーツ史『在日アスリート列伝』
【関連記事】 “King of Tokyo”アマラオが語る『王の矜持、戦う意味』
【関連記事】 サニーサイドアップ上場の裏に悪評飛び交う”偽善系”仕事術
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事