食べて満足!? 『駿河湾深海生物館』の深すぎるユル空間
#退屈巡礼
この退屈なご時世に、退屈しのぎに退屈な場所に行ってみるシリーズ【退屈巡礼】。第九回は、伊豆半島の『駿河湾深海生物館』へ行ってきました。強烈なルックスの深海生物標本は圧巻ですが、そこはかとなく漂うB級感は隠しがたく……。(館内の様子はこちらから)
この連載ではいろんな意味でディープなスポットを紹介していますが、最近はそういう深~い世界を垣間みる喜びに理解を示してくれる人は確実に増えている気がします。ま、ネット界隈で”スイーツ(笑)”と揶揄されるような、ごく一般的な流行にしか興味を示さない人たちがもちろん世間の主流派とはいえ、ひと昔前ならこんな話題に興味を持ってくれる人はほとんどいませんでしたからね。特に女子。
そんなワケで、今回はとびきりディープな……というか、文字通り深~い世界の住人であります「深海魚」関連の施設。伊豆半島の戸田(へだ、と読みます)にあります『駿河湾深海生物館』をご紹介。
戸田はタカアシガニ漁が名物の町ですが、戸田が面している駿河湾は最深部が2500メートルにも達するという、湾としては日本一の深さのため、カニ以外にも深海魚がよく獲れるとのこと。いわば深海魚は”ウラ名物”みたいなものですね。『駿河湾深海生物館』はそうした古くから深海魚が身近だった土地柄のせいか、いわゆる博物館のようなアカデミックなお堅さがまるで無いのが味です。なんせ、もともとは「なんか珍しい魚が獲れた」のを集めた「村営」の博物館だったらしいですし。(現在の戸田は沼津市に編入されて村ではありません)
で、入館してのパッと見はまるで学校の理科室のような雰囲気でノスタルジックな気分にもなったりするんですが、ズラリと並ぶホルマリン漬け標本(全部で300種以上もあるんだとか)は、もともと強烈なルックスの深海魚がホルマリンのせいでさらにスゴいことに! もはや宇宙生物か諸星大二郎のマンガに出てきそうなヤバいものにしか見えません。
かと思うと、地元の方々がカニの甲羅で作った魔除けが陳列されていたり、いきなり本物の深海魚の剥製をダイレクトにぶら下げたジオラマ状のステージ(夏休みの工作なんかでよくある、箱の中に魚の絵を吊るして水族館っぽくしたやつを「実物」でやってると思ってください)があったりして、手作り感やローカル感が醸し出すゆる~い空気も充満しているというなんとも不思議な空間。しかもその吊るされてる深海魚の剥製が、日本でここにしか無いという貴重なものだったりするからたまらないですね。大胆にもほどがある!
さらに、さきほど深海魚のことを”ウラ名物”と書きましたが、今やオモテ名物のカニを脅かす勢いで「深海魚料理」が味わえるお店も近くに並んでいたりします。ずっと以前に伊豆の他の場所(あえてどこかは伏せておく)で深海魚料理(具体的な料理名も伏せておきます)にチャレンジしたときは自分の好奇心を呪いたい気分でしたが、最近では料理法や魚の選びが洗練されたのか、ちゃんとした名物料理になっていました。このコラムで紹介されてるからといって「がっかり」なものではないのでご安心を。あ、ただし食事中は、さっきのホルマリン漬け標本のことは忘れておいてください。
と、個人的にはえらく満足度の高いスポットだったのですが、フツーの人を連れて行った場合の反応には責任を持ちかねます(笑)。ま、こういうディープなところで盛り上がれる友人とか彼女ってのが一生続く関係なんじゃないかと勝手に思っていますが。これぞ「Deep Love」ってやつ?(古ッ!)
『造船郷土資料博物館』も併設されています。
理科室にはいなさそうなものばかりですが。
諸星大二郎の「妖怪ハンター」にこういうの出てきましたよね。
東京の博物館ではありえない展示がステキ過ぎ。
深海ザメ「ラブカ」の標本。けっこうカワイイ顔かも?
●ご利用の心得
・生きた深海魚はいません。ホルマリン標本の独特の雰囲気をご堪能ください。
・深海魚のシーズンは秋から春なので、刺身を食べたい人はご注意を。
・食べてから見るか、見てから食べるかは各自のご判断で。
●あまり親切でないご利用案内
■開館時間 午前9時から午後4時30分
■休館日 水曜日(祝日の場合は翌日休)および年末年始
■入館料 大人300円
小中学生100円
■住所 沼津市戸田2710-1
■アクセス 伊豆箱根鉄道修善寺駅から東海バス戸田行き50分、終点から東海バス土肥行きに乗り換えて御浜口下車。さらに徒歩10分。車の場合は東名高速沼津インターから国道414号方面へ約80分。
※公式HPなし
(取材・文/大黒秀一)
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