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日刊サイゾー トップ > カルチャー  > カリスマ映画監督・若松孝二からのお年玉の中身は一体、何?

カリスマ映画監督・若松孝二からのお年玉の中身は一体、何?

kojiwakamatsu.jpg下北沢トリウッドでトークする若松孝二監督(1月12日)。「あさま山荘事件は大東亜戦争に次ぐ、昭和の大事件だった。あの事件を映画にしないことには、オレの映画人生を終わらせることはできなかった」と振り返った。

 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』が大反響を呼んだ”インディペンデント映画の帝王”若松孝二監督がお年玉を準備していると聞き、下北沢の映画館トリウッドへいそいそと出掛けた。同作のロングラン上映を記念して、『若松孝二からのお年玉』と銘打ったトークイベントが1月11~12日に行なわれたのだ。1月12日、満席状態でも47席という、つつましいトリウッドの観客を相手に、若松監督はマイクなしで映画製作の裏話から人生相談までざっくばらんに語りかけた。

 『実録・連合赤軍』は若松監督が中東に出向いて、「あさま山荘事件」の当事者である連合赤軍元幹部の坂東國男から山荘の内情を聞き出すことで撮り上げたノンフィクション大作。若松監督は自宅や名古屋で経営する映画館など全財産を担保にすることで製作費を捻出している。

「クライマックスで機動隊との銃撃戦となる”あさま山荘”は、仙台にあるオレの別荘。あの山荘はセットで再現すると3000万円はかかるから、それまで脚本の打ち合わせなどに使っていた自分の別荘をぶっ壊したんだ。今は更地になってるよ。誰か購入希望者がいれば、お譲りします(笑)」

 橋本真也主演の『あぁ!一軒家プロレス』(04)という映画があったが、若松監督はマジで撮影のために別荘(温泉付き)を丸ごと潰していたとは! 『実録・連合赤軍』が放つただならぬ狂気は、若松監督の己の人生と全財産を賭けた迫力から生まれていたのだ。

rengousekigun_cap.jpg(c)若松プロダクション

 同士を”総括”という名の元に粛正した永田洋子役の並木愛枝、森恒夫役の地曳豪らが大熱演している連合赤軍のキャスティングについて聞いてみた。

「みんなオーディションですよ。マネージャーと付き人の現地同行NG、衣装は自前、ギャラは全員均一という条件で、坂井真紀やARATAもオーディションを受けてくれた。佐野史郎も坂東國男役で出たいと言ってきたが、『自分の年齢を考えろよ』と断ったんだ(笑)」

 大学で映画製作を学んでいるという学生の人生相談にのるひと幕も。

「表現するのに大事なのは、怒りの感情。オレは『突入せよ!「あさま山荘」事件』(02)を観て、無性に腹が立ったんだよ。連合赤軍がやったことは良いか悪いかは別にして、警察側・権力側の立場から一方的に描いていることに怒りを覚えた。それで『実録・連合赤軍』を銀行から借金して撮ったんだ。そういう意味じゃ、『突入せよ!』の監督には感謝している。だからキミも学校の先生の言うことなんか、素直に聞いてちゃダメだ」

 若松監督のトークは1時間では収まらず、下北沢の居酒屋でモツ鍋を囲みながらの延長戦へと突入した。

「某有名歌手の曲を主題歌に使えば、1億円を出すというスポンサーがいたよ。でも、お金をもらう代わりに作品内容にあれこれ口を挟まれたら、それはもう若松作品じゃなくなるだろ? それで断ったんだ。確かに1億円は魅力的だったけどな(苦笑)」

 うぅ、1億円よりも、自分の生き様を貫くことを選んだということか。どんな高級な酒よりも、しびれる言葉じゃないか。今年73歳になる若松監督からの最高のお年玉である。うまそうに生ビールをジョッキで次々と飲み干す若松監督は、新作の構想も明かした。江戸川乱歩原作の『芋虫』、さらに『17歳の風景』『実録・連合赤軍』(山荘に立て篭った加藤元久は当時16歳)に続く「少年3部作」の完結編となる企画を準備中だそうだ。

「死ぬまで”現役”でいたいんだよ。オレなんか映画を撮ってなかったら、ただのジジイだしな。今日みたいに、みんなから『監督、監督!』と呼んでもらいたいのさ」

 これから公開される欧州での配給権や2月27日(金)にリリースされるDVDの収益で借金は何とか返済できる見通しとのこと。若松監督に新作を撮らせるためにも、ぜひ『実録・連合赤軍』を上映中の劇場へ、またDVDに手を伸ばしてほしい。
(取材・文/長野辰次)

●『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』
学生運動の終焉を告げた72年2月の「あさま山荘事件」が何故起きたのかを「山岳ベース事件」を交え、克明に追った衝撃作。第58回ベルリン映画祭で最優秀アジア映画賞、国際芸術映画評論連盟賞の2冠を受賞している。
製作・脚本・監督/若松孝二 撮影/辻智彦 音楽/ジム・オルーク ナレーション/原田芳雄 出演/坂井真紀、伴杏里、地曳豪、大西信満、並木愛枝、ARATA、坂口拓、高野八誠、奥貫薫、佐野史郎ほか。下北沢トリウッドで2月6日(金)まで上映中。また2月27日(金)にはDVDがリリースされる。http://www.wakamatsukoji.org/

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

2月27日発売。

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最終更新:2009/01/20 12:08
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