園子温『愛のむきだし』で満島ひかりが”むきだし状態”に!
#アイドル #映画 #邦画 #園子温 #満島ひかり
美しいネコを見つけたので手を伸ばしたところ、鋭い爪で思いっきり引っ掻かれた。09年最注目の若手女優・満島ひかりとの初遭遇はそんな印象だった。
上映時間約4時間という園子温(その・しおん)監督の話題作『愛のむきだし』の中で、男嫌いなヒロイン・ヨーコを演じた彼女は、ギラギラとした野性的な魅力を放っている。
ゆらゆら帝国の歌う「空洞です」をBGMに”パンチラ上等!”とばかりに大立ち回りを演じる他、新興宗教・ゼロ教会の幹部・コイケ(安藤サクラ)とのレズ的なシーンもあり、体当たり演技の連続なのだ。また、金子修介監督の『プライド』(現在公開中)ではビンボーな境遇に生まれた己の負のオーラを武器に、天才歌手・史緒(ステファニー)と火花を散らす宿命のライバル・緑川萌役をこってりと演じている。アイドルユニット「Folder5」として活動していた満島ひかりが、大変なことになっているのだ。
──すっごい主演映画が2本続けて公開されますね。
「アハハ、本当すごいことになってますね。『愛のむきだし』『プライド』の順で撮ったんですが、どちらも素の自分をそのままバーンと出してしまった感じです。そういうと、みなさん引かれてしまうんですけど(笑)」
──『帰ってきた時効警察』(テレビ朝日系)の第3話では、タコを踏んづけて階段から転落死するさえない漫画家役でした。園監督とは、それ以来の付き合いですか?
「その前に、園監督のホラー映画『エクステ』(07)にちょっとだけ出演していたんです。その次が『帰ってきた時効警察』でした。タコを踏んづけるわ、洋服はいつも裏返しに着てるわ、変な漫画家の役でしたね(笑)。コタツに入って『私って、ダメよねぇ……』と呟くシーンがあったんですが、そのときの私の表情を見て、園監督は『こいつとは、次もまた仕事することになる』とピンと感じたそうです」
──なるほど、ホップ、ステップ、そして本作で大ジャンプしたんですね。
「はい、ちょっとジャンプしすぎちゃいましたかね(笑)。園監督とは仲良くさせていただいていて、ふだんから脚本を読ませてもらっているんです。『愛のむきだし』もまだキャストの決まってない準備稿の段階で読ませてもらい、電話帳みたいに分厚い脚本を一気に読み終えて、号泣してしまったんです。『この作品に出る方は、役者冥利(みょうり)に尽きるなぁ』なんて思いながら。で、いつの間にか私が出ることになってたんです(笑)」
──アイドルとしてデビューした満島さんにとって、思い切った挑戦じゃないですか。
「元々の私はヨーコみたいな性格なんです。アイドルをやってたときも『私、何やってるんだろう?』とか思ってたんです(笑)。でも、お芝居がすごく好きで、役をもらえる様になってきたのですが、どうしても頭の中で描いているイメージに対して、自分の手足が思うように動かないもどかしさを感じていたんですね。その溜め込んでいたものが、今回バクハツしちゃったんです。最初の脚本ではヨーコは普通の女の子でしたが、私がヨーコ役に決まってから、園監督が当て書きっぽく、アクの強いロックな感じの女の子に変えたんです。それで、もう自分自身を”むきだし”にして撮影現場に挑みました!」
──秘めたる資質を園監督は見抜いてたわけですね?
「園監督は、人の本質を鋭く見抜く方ですね。ちょっと、イラッとすることもありますけど(苦笑)。私のことを全否定するんです。『キミ自身がダメ。キミの人生がダメ』と。私メソメソ泣いちゃいましたけど、園監督は『泣いてないで、ちゃんと(演技)やれよ』と厳しいんです。でも実は園監督はすっごく愛情のある方でもあるんです」
──まるで劇中に出てくるゼロ教会の洗脳方法みたいじゃないですか!
「そうですねぇ。私、”園子温教”に勧誘されちゃったのかも(笑)。でも園監督に隠れた部分を暴き出していただいたお陰で、演じることがすごく楽になりました。パンチラやアクションもあって、みなさんから大変だったでしょう? と聞かれますけど、全然平気でしたね。アクションは坂口拓さんの道場に西島隆弘くん、安藤サクラの3人で2か月間毎週通ったんです。坂口さんに厳しく指導してもらい、自分の中の余計な部分を削ぎ落とすことができたんじゃないかな。例えば、自分では意識してないのに、いつの間にか笑っていたり、人を喜ばせようとしていたり……。激しいトレーニングを積んだことで、自分をむきだしにしたヨーコ役により近づいていったと思います」
──コイケ役の安藤サクラさん(奥田瑛二の次女)とは、若手女優同士として今後ライバル関係になりそうですね。
「確かにサクラはすごい女優です。彼女の持っている怨念みたいな迫力が空気感染して広がっていくような雰囲気がありますよね。その空気を、私は見えないナイフで切り裂きながら演技している感じでした。サクラと私は女優としてのタイプが違うけど、サクラが得意そうな役を私が頑張って自分のものに出来たら、サクラ悔しがるだろうなぁとか考えたりしますね。サクラも同じこと考えているかも知れないから、油断できないですけど(笑)。この間も安藤桃子さん(奥田瑛二の長女)の初監督作品に主演して、クランクアップしたところにサクラが現れたんです。『お疲れ』の言葉と同時に私の頬をビンタして、え? なんでビンタなの? じゃあ私もビンタしちゃおう! って2人でビンタし合いながら、最後は抱き合って……。サクラとは不思議な関係なんです(笑)」
──男子には理解できない世界です(笑)。では、自分の好きな人が”変態”だったらどうしますか。
「西島くんって、”変態”役でしたっけ? あ、そうか盗撮魔の役か。でも、西島くんって、さわやかなイメージが強いから、全然”変態”っぽく見えないですよね(笑)。盗撮はダメですけど、まぁ、自分の好きな人なら許せるんじゃないですか」
──『愛のむきだし』『プライド』が公開され、さらに大変な役のオファーが来そう。もう怖いものはない?
「いえ、怖いものだらけです。『愛のむきだし』を改めて観ていたら、『私、もうこんな演技できないかも』なんて思ってしまいますし、『プライド』も無我夢中でやってましたし。ほんとスタッフとキャストがぴたっとハマったから、ヨーコみたいに生きたキャラクターを演じることができたんだと思います。『愛のむきだし』って観れば観るほど面白い、不思議な作品なんです。あれ、何だか今日のインタビュー、全然論理的にしゃべれてませんよね(笑)」
いやいや、言葉の端々から満島ひかりの奔放(ほんぽう)さは充分に伝わってきたのではないだろうか。インタビューが終わり、写真撮影中の彼女に「怖いって言われない?」とぼそっと聞いてみた。
「『プライド』を観た人からは怖いって言われますね。え? 今の私、怖いですか? 超フツーのつもりなんですけど。でも、そう言われるの、ちょっと嬉しいかも。エヘヘ」
手だれの監督以外には到底飼い馴らすことのできそうにない美しいネコは、無邪気に微笑んでみせた。
(取材・文=長野辰次/ヘアメイク=宮本盛満【For Koh Gen Do】/衣装=CAROLINA GLASER boutique)
●みつしま・ひかり
1985年沖縄県出身。ダンスボーカルユニット「Folder」で歌手デビュー。後に女性アイドルユニット「Folder5」として活躍。女優としての出演作に映画『モスラ2 海底大決戦』(97)、TVシリーズ『ウルトラマンマックス』(TBS系)、金子修介監督の大ヒットシリーズ『DEATH NOTE デスノート』『デスノート the Last name』(06)など。1月17日より公開中の一条ゆかり原作の『プライド』では緑川萌役でステファニーとW主演。
●『愛のむきだし』
新興宗教に入信した妹を力づくで脱会させたという園子温監督の知人(盗撮魔)の実体験をベースにした、上映時間237分のエンターテイメント超大作。血のつながらない兄妹(西島隆弘、満島ひかり)が同じ屋根の下で暮らすというラブコメ的設定を使って、宗教・家族・性欲・モラルといった問題が怒濤のごとく描かれる。R-15指定
原案・脚本・監督/園子温 主題歌/ゆらゆら帝国 出演/西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラ、渡辺真紀子、渡部篤郎 配給/ファントム・フィルム
1月31日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国ロードショー。
http://www.ai-muki.com/
この頃はこの頃でステキです。
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