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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第12回

空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」江頭2:50

egashirapipipi.jpg『江頭2:50のピーピーピーするぞ!2
逆修正バージョン~ノークレーム・
ノーリターン~』
/アミューズソフトエンタテインメント

 江頭2:50ほど、人によって評価が真っ二つに分かれる芸人も珍しい。彼のことを「下品」「くだらない」「気持ち悪い」などと言って忌み嫌う人は多く、各雑誌の「嫌いな芸人ランキング」では上位を独走している。その一方で、体を張った彼の芸風を高く評価して、「江頭こそ芸人の鑑」「笑いの求道者」と崇拝する人も少なくない。江頭2:50への人々の評価は両極端に引き裂かれている。

 ただ、これらの評価が単に「テレビでは放送できないような過激なことをやっているから好き(嫌い)」というだけなら、それは少しピントがずれているような気がする。

 過激な言動をすること自体は、そんなに難しいことではない。江頭2:50は、一見めちゃくちゃに暴走しているようでも、実は場の空気を読んで行動できるタイプの人間である。いつどこに出てきても、自分の与えられた役割をきっちり果たす。多少度が過ぎた行為に及ぶとしても、それによって現場が盛り上がり、お客さんや視聴者が笑える範囲のことしかやろうとはしない。ああ見えて、彼は彼なりに与えられた役割を忠実に演じているだけなのだ。

 江頭は空気を読まずに無茶をする芸人ではなく、空気を読んで無茶ができるからこそ、テレビでも重宝されているのだ。その結果、良くも悪くも江頭の勇姿が人々の脳裏に深く刻み込まれるため、1年にたった数回しかテレビに出ていないのに「嫌いな芸人ランキング」で上位をキープできているのである。彼は「テレビサイズの芸」をきっちりこなせる器用な芸人なのだ。

 そんな彼が唯一、束縛を逃れて好き勝手にできる番組がある。もちろん、地上波のテレビ番組ではない。インターネットで配信されている番組『江頭2:50のピーピーピーするぞ!!』である。この番組のDVD第2弾は12月26日に発売される。

 ここでは芸人・江頭2:50の本気の芸が見られる。フリートークでは笑いを取るためのオチのある話もするし、真面目に映画を語ることもできる。一方で、観覧客に局部を露出したり放送禁止用語を連発したりして、「いつものエガちゃん」の一面も見せてくれる。

 このDVDを見ると、テレビで楽しめるのは江頭という芸人の巨大な才能のほんの一部にすぎない、ということがよくわかる。彼のような芸人を、年に数回テレビでしか見ないというのはもったいない。江頭を好きになるのも嫌いになるのも、とりあえずこの番組を見てから、ということにしてみてはどうだろう。
(お笑い評論家/ラリー遠田)

●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が本になります。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オリエンタル・ラジオ、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算したり、今年で9回目を迎える「M-1グランプリ」の進化を徹底的に分析したりと、盛りだくさんの内容になります。発売は2009年11月下旬予定。ご期待ください。

江頭2:50のピーピーピーするぞ!2 逆修正バージョン~ノークレーム・ノーリターン~

そして伝説に。

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最終更新:2013/02/07 13:02
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