プロレスでテレビを変える男・プロレスラー『マッスル坂井』
#お笑い #DVD #インタビュー #プロレス
マッスル坂井という男がいる。「行こうよ! プロレスの向こう側」を合い言葉に、舞台仕立てのプロレス大会「マッスル」を立ち上げ、毎回満席の集客を誇るマット界の異端児である。そんな彼が初の地上波進出を果たしたテレビ番組『マッスル牧場CLASSICS』が、12月19日にDVD化された。
某有名番組のパロディー企画「埼玉に泊まろう!」から、ゲイレスラー・男色ディーノの必殺技を詳細に解説した「ゲイ・レスリングのHOW TO DVDを作ろう」まで、地上波の限界に挑んだ危ない企画の数々が収められている。
DVD発売にあたって、「この番組でいったい何をしようとしていたのか?」について、マッスル坂井氏にインタビューを試みた。
――まず、番組成立の経緯についてうかがいたいんですが。
【マッスル坂井(以下、マッスル)】 ずっと前から、テレビの深夜番組をやってみたいという気持ちはあったんです。ただ、どうやればいいのか想像がつかなくて。でも、知り合いの『大日本プロレス』という団体がテレビ埼玉でプロレスの中継番組をやっていたんですね。そこに聞いてみたら、『枠を買ってる』という答えが返ってきまして。テレビ埼玉なんかだと、放送の枠をお金で売っているということがわかったんです。
僕らは普段、お金を払って会場を借りて興行をやっているわけですから、テレビをやるのもそういうことと大して変わらないんだな、と思って。割と気軽な感じで始めることにしました。
――それにしてもなぜ、テレビ番組をやりたいと思われたのでしょうか。
【マッスル】 正直、会場を借りて興行をやるというスタイルに少し限界を感じていたんです。今のご時世に、わざわざチケットを買って会場まで足を運んで見に来るって、すごくハードルが高い行為だと思うんですよ。いつも来てくれるお客さんには本当に感謝しているし、それはそれですごくありがたい話なんですけど、そうじゃない人たちにも自分たちの活動を広めたいなあ、と思って。変質者みたいに裸で夜道に飛び出す感覚ですかね(笑)。夜中にたまたまテレビをつけた人の心にどれだけ深い傷を残せるか、っていうことを試したかったんです。
――それにしても、プロレスの世界とテレビの世界は、かなりジャンルが違うような気もするのですが。
【マッスル】 いや、結局、テレビだって一種のプロレスだと思うんですよ。例えば、『笑点』の大喜利なんかは、あらかじめ台本があるんじゃないかとよく言われていますよね。バラエティだけじゃなくて、ニュースなんかも同じで、『今回の自民党総裁選はプロレスですよ』なんて解説されていたりして。実際、自民党の総裁選候補者は、討論会に入場曲付きで出てきてましたからね。小池百合子はマドンナの曲で、石破茂は勇ましい感じの映画『エアフォース・ワン』のテーマ曲だったりとかして。
今は『プロレス』っていう言葉が『やらせ』みたいなネガティブな意味で使われがちじゃないですか。でも、僕に言わせれば、もっと軽い『茶番』ぐらいのものだと思うんです。実際、茶番くらい面白いものはないですよ。あらゆる番組がコントであり、プロレスであり、茶番だと思うんです。そういう意味ではテレビとプロレスは近いところがありますよね。ただ、近頃はそうではない種類の番組も増えてきているのが気がかりではあるんですが……。
――どういうことですか?
【マッスル】 最近、お涙頂戴系のドキュメンタリー番組とか多いじゃないですか。ああいうのって、見ていて少し気持ち悪くないですか? 芸能人の誰々の子供が障害を抱えているとか、そういう話が何らかの美談として取り上げられたりしていて。下手すると『障害の度合いが深刻なほど感動できる』みたいな、すごく危ういつくりになっている。
だから結局、そういうものに立ち向かえるのは我々プロレスラーしかいないんですよ。今、お笑い芸人だって好感度なんかを気にしますからね。プロレスラーは何をやってもいいわけですから。野蛮に、大胆に、お茶の間に向けて「プロレス」という壮大な茶番を仕掛けていくべきだと思うんですよ。たとえ僕が倒れても、プロレスラーはほかにまだたくさんいるし。そういう形で何とかして、プロレス的発想に基づいた番組作りを貫いていきたいという信念はありますね。
――最後に、DVDの告知をお願いできますか。
【マッスル】 僕らは毎回興行をやってこつこつ貯めたお金を、去年から今年にかけてこの番組の制作費につぎ込んだんですね。それで、本来なら利益として残っていたはずの額を返ってくるあてのないテレビ制作事業に投資してしまったため、2008年の我が社の決算状況は非常に悪かったんです。これが回収できるかどうかは、今回のDVDの売れ行きにかかっています。
ただ、このDVDは、AVでいうとソフトオンデマンドが出しているようなメジャーなものじゃなくて、アロマ企画のフェチビデオとかに近いと思うので(笑)、販売店の方々にはその辺のことを理解していただきたいですね。マッスル坂井という男のキャリアの最初の1枚として、できれば2、3年かけて長い目で見て売ってもらいたい、と。僕らもここでつぶれるわけにはいかないんで、ぜひよろしくお願いします!
(取材/ラリー遠田)
●まっする・さかい
マッスル主催者。DDTプロレスリング所属のプロレスラーと有限会社DDTテック代表取締役というプロレスラーと映像クリエイターという2つの顔を持つ。プロレス以外にもYOSHIMOTO DIRECTOR’S 100 で『シルバーホストG』監督、”めちゃ×2イケてるッ!”の「只今参上 色とり忍者第二章」に徳川綱引将軍役で出演、お笑いイベント、「ダイナマイト関西R」にプロレス界から初の出場し準優勝を収めるなど多方面でその鬼才を発揮している。日経エンターテイメント2007年4月号の「時代を動かす100人~ヒットメーカー列伝」で「新たなジャンルを確立した」としてあの三谷幸喜より上の98位にランクイン。今、最も注目されるクリエーターの一人。
●マッスル牧場CLASSIC DVD-BOX
発売日:2009年12月19日(金)
価格:¥9,800(税込¥10,290)
分数:3枚組 約100分x3
『マッスル牧場CLASSIC・DVD発売記念インストアライブin HMV』開催!!
『マッスル牧場CLASSIC』のDVD発売を記念いたしまして、HMV渋谷店にて発売記念インストアライブを開催いたします。
マッスル坂井をはじめ、おなじみのマッスルメンバーが渋谷の街をジャックします!!
日時:12月20日(土) 14:00~
会場:HMV渋谷店※HMV渋谷店にて対象商品「マッスル 牧場 CLASSIC (BOX)」、「マッスル 牧場 CLASSIC: 1、2、3(単品)」のいずれかをご予約、又はご購入頂いたお客様に先着にてイベント優先参加券を配布致します。イベント参加券をお持ちの方には「さらに豪華な体験」がありますのでお忘れなくお願いします。
※また、全国HMVにて対象商品をご購入頂いたお客様にはオリジナル特典といたしまして、「ポッドキャスト風トークCD-R」をプレゼントいたします!!
HMVイベント情報ページURL:http://www.hmv.co.jp/st/event.asp
「プロレス」の懐を見た。
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