単館映画『バンク・ジョブ』実話に基づいた珠玉のサスペンス
#海外 #映画
09年の正月映画興行が、11月22日公開の『私は貝になりたい』からスタート。同作は11月1日から続映されている『レッドクリフ』に頭を抑えられて興行ランキングで2週連続2位だったが、12月5日にピクサー・アニメ最新作『ウォーリー』、6日に和製パニック大作『252 生存者あり』が公開されると、それぞれ1位、2位を奪取し、正月興行が本格化してきた。今後も『地球が静止する日』(19日公開)、『K-20 怪人二十面相・伝』『ワールド・オブ・ライズ』(20日公開)など大作が続々と公開される。
もちろんそうした全国ロードショーの大作を楽しむのも良いが、秋公開の単館系作品にも見逃せないものがある。そのひとつがイギリスで実際に起こった銀行強奪事件を描いた『バンク・ジョブ』だ。
映画の舞台は1971年のロンドン。しがない中古車販売業を営み、借金で首が回らないテリーのもとに、元恋人マルティーヌから銀行強盗の計画がもちこまれる。ベイカー街にある銀行の地下金庫室に、トンネルを掘って侵入するというその計画に乗ったテリーは、仲間を集めて計画を実行。数百万ポンドにも及ぶ現金や宝石類を盗み出し、見事に成功させたかに見えたが、しかし、彼らの盗んだものの中には、英国王室を揺るがす一大スキャンダルの証拠となるものが含まれていた……。単なる小悪党の集団に過ぎなかった彼らは、国家から追われる羽目になった上に、地下金庫には他にも黒社会の大物や政府高官、警察官らの公に出来ない”秘密”も含まれており、悪徳警官やマフィアからも命を狙われてしまう。
英国政府はこの事件を国家機密として厳重な報道規制を敷き、現在に至るまで詳細は伏せられたままだが、独自に調査したジャーナリストによって明かされた事柄を映画化した本作は、描かれる”9割が真実”なのだとか。
追う者と追われる者が複雑に絡み合い、冒頭からハイスピードで展開される物語は、手に汗握り、片時も目が離せない緊張感に満たされている。事件の顛末は? 最後に笑うのは誰なのか? それとも誰も笑うことなく終わるのか?
監督のロジャー・ドナルドソンは、『13デイズ』(00)、『世界最速のインディアン』(05)などで知られ、巨匠、名匠と呼ばれるほどではないが、御年63歳のベテラン。主演は『トランスポーター』シリーズなどで映画ファンにはおなじみのジェイソン・ステイサム。彼を含めていわゆる大スターと呼べる人は出演しておらず、キャストやスタッフの名前だけ客を呼べる作品ではないが、映画を知りつくした”職人”たちの手により、思わずスクリーンに没頭してしまうサスペンスに仕上げられている。
東京では渋谷・シネマライズの1館のみで上映。シネコンの普及で、どこに行っても同じような劇場で、同じような映画が上映されていることが多い昨今、「見られるのはそこだけ」という文字通りの単館公開だが、そこに行くだけの価値はあると思う。それもまた、映画館へ映画を見にいくことの醍醐味。また、正月映画というものは年をまたいで上映されるので焦らなくても大丈夫だが、『バンク・ジョブ』の東京での上映は26日まで(今後、地方で順次公開)。正月映画に目移りしている間に、隠れた良作を見逃さないようにしたい。
(eiga.com編集部・浅香義明)
バイクで300km/hに挑むおじいちゃんの物語。
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