表情豊かなドロイド同士のボーイ・ミーツ・ガール『ウォーリー』
#海外 #映画 #アニメ
今年の夏は『崖の上のポニョ』が日本列島を席巻し、変わらないスタジオジブリ作品の人気ぶりを見せつけたが、12月5日からは、世界を席巻しているアニメスタジオ、ピクサーの最新作『ウォーリー』が公開される。全米ではサマーシーズン初頭の6月末から公開されて2億ドルを超える興行収入を記録する大ヒットとなっていたが、日本では『ポニョ』を避けて冬まで寝かされたかたちで、満を持しての日本上陸だ。『ウォーリー』の配給はウォルト・ディズニー。ジブリ作品のDVDを発売しているのもディズニーになるので、バッティングを避けたのは当然の選択ともいえるかもしれないが、海外から伝わる高評価に、早く見たいと思っている映画ファンはやきもきしていたことだろう。
映画の舞台は、ゴミだらけになって住めなくなった地球を人類が捨てて700年がたった29世紀。主人公のウォーリーはゴミ処理ロボットで、人類が地球を去ったあとも延々と働き続けているうちに感情が芽生え始め、ゴミの中からお気に入りのものを見つけてはコレクションしている。その中のひとつが1969年の『ハロー・ドーリー!』というミュージカル映画で、ウォーリーは主人公たちが手をつなぐ場面に憧れ、いつか自分も誰かと手をつなぎたいと願っている。
そんなある日、宇宙から巨大なロケットが飛来し、中から流線型の美しいロボット、イヴが現れる。彼女に”一目惚れ”したウォーリーはアプローチをかけ、2人(2体?)はいい雰囲気になるのだが、イヴには重大な任務がプログラムされており、再び地球を去ってしまう。ウォーリーも彼女を追って宇宙に飛び出し、冒険を繰り広げる。
監督は『ファインディング・ニモ』のアンドリュー・スタントンで、彼はこの映画を当初「R2-D2ザ・ムービー」と説明していたそう。つまり、『スター・ウォーズ』の人気ドロイド、R2-D2のように、ウォーリーも基本的に言葉は話さない。たどたどしく自分の名前を言えるくらいなのだが、それでもその機械・電子音と、動きだけで”感情”を見事に伝えてくる。首をかしげてみたり、飛び上がってみたり、肩を落としてみたり、双眼鏡をモチーフにした両目が下がって悲しみを表現したり……その様子がなんとも愛らしい。動きから伝わる情報の豊かさを、ロボットのウォーリーを見ていてあらためて認識する。映画本編は100分程度だが、始まってから半分以上はセリフなしの状態なのに、全く退屈しないというのは驚きだ。
ピクサー作品は、よく練られた脚本によるストーリー性の高さと、優れたCG技術によって映画ファンを常にうならせてきたが、本作は全米では「アカデミー賞の(アニメーション部門のではなく、実写映画を交えての)作品賞にノミネートされるべき」との声もあるほど。また、ピクサーはディズニーの傘下なので、それらのキャラクターは当然ディズニーブランド。親しみやすいキャラクター性の高さもビジネス的には重要な要素になるが、そちらももちろんバッチリ。物語の典型はいわばシンプルなボーイ・ミーツ・ガールだが、そこに「誰もいない地球に取り残さたロボット」という魅力的な設定をあてはめ、くるくると目まぐるしく表情を変えるウォーリーの愛らしさも手伝い、将来はきっとディズニーランドのアトラクションになるに違いない……と思うのだが。ともかく、大人から子どもまで幅広く楽しめる一作なので、正月休みの映画鑑賞には是非。
(eiga.com編集部・浅香義明)
作品の詳細は以下より。
『ウォーリー』
アンドリュー・スタントン監督 インタビュー
映画評
各種動画
そろそろカレンダーを買う季節。
【関連記事】 “アート界の錬金術師”村上隆が映画参入! 第1弾は超ロリ映画
【関連記事】 ほんとにありそう!? 航空業界の群像劇『ハッピーフライト』
【関連記事】 米・韓で賛否激論!『D-WARS』シム監督の尽きない野望
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事