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たけし、タモリ、ダウンタウン...そして、ゆーとぴあまで

徹底討論! タブー破りの『お笑い原論』(後編)

takeshitokyopod.jpg「芸人・ビートたけし」は、演芸の世界なら
勝てると踏んだ、とベンチャー的な発想と
行動力から誕生したという。

前編はこちら。

【まきた】 ぶっ壊す人たちって、そもそもの芸人としての出自からして違う。ビートたけしは、当時の演芸界にベンチャーとして入ってきたという持論があってさ。自分が自由にできる”隙のある場所”を見つけたら、そこに侵入して一儲けするっていうベンチャー的な発想で、たけしは芸人になった。「浅草に死に場所を求めて芸人になった」とたけしは言っていて、当時浅草の芸人になるって行為は、社会的には自殺と一緒だよね。でも、たけしは、隙だらけな演芸界なら自分のアイディアは通用するはずだと勝算を持って、浅草に行った。そういう芸人だからこそ、”ぶっ壊す”ということに説得力がある。

【かしま】 今、芸人って”職業”じゃない? だから、芸人になれた時点でウットリしちゃう人っているけど、芸人という職業に憧れて芸人になった人間と、芸人の世界なら勝てると思って芸人を選んだ人間とでは、根本的に違う。

【まきた】 たとえば、タモリはサラリーマン時代から四カ国語麻雀みたいなネタは持っていたわけ。でも、職場の宴会でやっても一切ウケない。当時サラリーマンが宴会で何をやってたかっていうと、サルの物真似なんだから。

【かしま】 そんな時代にいきなり四カ国語麻雀みたいな密室芸をやられても、田舎の人は理解できないよね(笑)。

【まきた】 だけど、そこでタモリはシンデレラとして赤塚不二夫や山下洋輔のいる舞踏会に顔を出して、そこに可能性を見い出したわけだ。そして、あろうことかガラスの靴を置いて帰った。

【かしま】 だから、赤塚不二夫の葬儀でのタモリの弔辞は驚いた。みんなタモリのシンデレラ・ストーリーを信じていたのに、弔辞で「私がお笑いの世界を目指して九州から上京して……」って、はっきり言ったわけだから。

【たつお】 タモリは芸人になりたかった人じゃないとみんな思っていたはずが、実は確信犯だったとバレた瞬間だった。

【まきた】 タモリというシンデレラは自分の美しさを知っていて、さらに赤塚不二夫がガラスの靴を見つけて「これ、誰の?」って探してくれるのをちゃんとわかっていた。そこはもう、未必の故意だよね。

●”ひな壇芸人”は棚に並んだ商品のよう

【たつお】 お笑い芸人が「なりたい”職業”」になったのは、ダウンタウン以降ぐらいかなぁ。吉本興業がそれまでの戦略を変えて、テレビを主戦場としたタレント養成を目的として、NSC(吉本総合芸能学院)というお笑い学校を作った。その1期生がダウンタウンだっていうのは象徴的だと思う。

【まきた】 その学校を作ったのが、いみじくも”生き物としての芸人”の象徴ともいえる横山やすしのマネージャーを務めていた木村政雄(元・吉本興業常務)だったわけだ。これからの時代を見通すと、突出した才能を持った芸人に依存する商売じゃなくて、背広組がリードしてコンテンツ・ビジネスを開拓しなくちゃならない、と木村は考えたわけだ。

【たつお】 ダウンタウン以前のお笑いは、例えるなら、コンビニがなかった時代の個人経営の食料品店だと思うんだよ。今は、コンビニエンス的な、つまり養成所で育った芸人が全国に流通するというシステムが完成した。

【かしま】 それに対抗しうるのは、近所のタバコ屋かもしれないね。こないだ、ゆーとぴあが解散したでしょ。そこでホープさんが、もう60歳近いのに、「新コンビを組んで頑張っていきたいと思います!」と言ってて、やっぱりあの時代の芸人ってすごいなと思っちゃうよね(笑)。もう、”業”としか言いようがない。

【まきた】 芸人って、やっぱり”生き物”なんだよね。

【かしま】 月亭可朝とかもすごいじゃん。こないだ捕まっちゃったけど、記者会見で一節歌うだけ歌って、一言も謝らない(笑)。最近、”空気を読む”ということがひな壇芸人として売れるための武器になってるけど、昭和の芸人って空気なんか読まないんだよ。だけど、それを押し切っちゃうんだよね。

【まきた】 そもそも”ひな壇”って考え方自体が、今の時代らしい考え方だよな。まさにコンビニに並べられた商品のようで。

【たつお】 でも、なんだかんだ言って、ひな壇芸人の中から選抜された人たちが残ってきてるよね。その人たちが年を重ねていくうちにカリスマになる可能性ってないの? それとも、タモリとかたけしって、出てきたときからカリスマだったのかな。

【まきた】 カリスマではないにせよ、明らかに異質な存在ではあった。黒船というか、エイリアンというか。

【かしま】 テレビの中に存在しているという違和感がものすごいんだよ。でも今、他の分野からちっちゃいスケールでそういう人が出てきてるよね。女医の西川史子とか、オカマタレントとか。

【たつお】 芸人が職業として成立するルートができた瞬間、「芸人とは○○である」というくくりができてしまう。だけど、カリスマになった人たちって、くくりを取っ払っていった人たちでしょう。ビートたけしは映画を撮ったり、松本人志はエッセイをベストセラーにしたり。それに比べると、レールに乗って芸人になった人が、その道を自ら外れて、芸人という殻を破れるかといえば、なかなか難しい。

【かしま】 その点、鳥居みゆきの売れ方って面白いよね。ネットを最大支持勢力にしてテレビに登場した。

【たつお】 結局、芸人らしからぬ人のほうが、背広組の用意した正規ルートを覆して登場してきそうなんだよね。

【まきた】 90年代に、オシャレなスーツを着てオシャレなコントをする人たちがいたじゃない? それに抗う形で、爆笑問題や浅草キッド、それから大川興業がいた。それと同時期に、電気グルーヴが、ラジオや音楽を通して、妙に面白いことをやってたわけ。あの匂いって、遡っていくとタモリに通じると思うんだ。そういった匂いを持った人たちが、これからのお笑い界をひっくり返す一大スペクタルをやってのけるのかもしれない。

【かしま】 面白い芸人はこれからもたくさん出てくるだろうけど、”生き物”として面白い、カリスマ性を持った芸人は、養成所を通過せずに、全然関係ない場所から出てくるかもね。
(敬称略/構成・橋本倫史/「サイゾー」12月号より)

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●”ミスター印象批評”まきた局員
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上記3人と、謎の局長・みち(写真左)によるポッドキャスト。

タモリ

まさかの復刻版。

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最終更新:2018/12/10 19:25
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