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『私は貝になりたい』公開 リメイク映画に未来はあるか?

watashihakainimain.jpg(C)2008「私は貝になりたい」製作委員会

 今、日本の映画市場は東宝が支えている。今年に関しても、宮崎アニメ『崖の上のポニョ』(興収150億円)を筆頭に、人気TVドラマの映画化『花より男子』(77億円)、『容疑者Xの献身』(45億円)、三谷幸喜監督・脚本の『ザ・マジックアワー』(40億円)、定番アニメ『ポケモン』(48億円)に『ドラえもん』(33億円)、そしてベストセラー・コミックの映画化『20世紀少年』(40億円)などなど、興収30億円を超えた映画が7本も出ている。今年に入ってから、東宝以外で、興収30億円以上の映画を2本以上配給した映画会社はない。

 ジャンル的にも死角の見あたらない印象だが、その東宝にして、なかなか苦戦しているジャンルがある。それは、リメイクだ。ここ2年ぐらいの、東宝配給のリメイク作品の成績を見てみよう。

『犬神家の一族』(06年12月)……9億円
『椿三十郎』(07年12月)…………12億円
『隠し砦の三悪人』(08年5月)……10億円 
※カッコ内は公開時期。その後の数字は興収(編集部推定)

 『犬神家の一族』は、76年の市川崑監督の大ヒット作を、監督自らがリメイクした作品。昨年の正月映画として封切られたが、オープニングの順位は8位と振るわず、最終的に興収10億円にも届かなかった。『椿三十郎』は、黒澤明監督・三船敏郎主演の62年の傑作を、織田裕二主演、森田芳光監督でリメイクし、これまた正月にぶつけたが、最終興収12億円と低迷。ちなみに同作の公開週には、11月上旬から続映中の2作品『ALWAYS・続・三丁目の夕日』(1位)、『恋空』(2位)が居座っており、『椿三十郎』は自社配給作品に頭を押さえられての4位スタートという皮肉な状況になっていた。そして、もう1本の黒澤監督作リメイク、今年5月の『隠し砦の三悪人』も、樋口真嗣監督に松本潤、長澤まさみというスターパワーを加えたが、これまた興収10億円と凡庸な成績に終わっている。
 
 まあ、普通の配給会社なら10億円行けば御の字という話もあるが、そこは常勝軍団の東宝のこと、周囲は『20億円、30億円は当たり前』と期待してしまう。15億円を下回ってしまうと、『成功』ではなく『失敗』と捉えられても仕方がない。

 そして今回の『私は貝になりたい』。こちらのオリジナルは劇場映画ではないが、TBSが58年にオンエアした名作TV番組のリメイクである。上に挙げた3作はいずれも30年以上を経たリメイクだが、今作も50年ぶりのリメイクなので、ちょっと嫌な予感もあった。

 『私は貝になりたい』、オープニング3日間(3連休)の成績は、動員32万5000人・興収4億0700万円。首位にはなれなかったが、『レッドクリフ』に次ぐ2位でデビュー。主演の中居正広が全国28都市を回るキャンペーンも奏功し、まずまずのスタートを切った。ひとまず20億円以上は確実なので、先の3本よりはいい結果を残せそうである。

 リメイク作品の成否については、『なぜ、今の時代にこの映画を再び世に出すか』という、時代に対する必然性がどれだけ高いかがポイントだと思う。06年の『犬神家の一族』の時も、なぜ今さら犬神家なのか?という疑問の声が多かった。そういう意味では、東宝の一連のリメイク作品の中でも、06年7月の『日本沈没』だけが53億円と大ヒットしているのが興味深い。

 また、そういう意味では、黒澤映画のリメイクがいずれも不振なのが気になる。昨年のテレ朝でのリメイク版オンエアも、『天国と地獄』こそ20.3%と健闘したが、『生きる』が11.7%と失敗の部類。世界中で普遍的な名声を浴び続けている黒澤映画は、果たして今の時代には馴染まないのだろうか。こちらは、リメイクの『本場』ハリウッドで進行中の一連の黒澤作品『生きる』『天国と地獄』『七人の侍』が何らかの解答を示してくれることだろう。
(eiga.com編集長・駒井尚文)

作品の詳細は以下より。
『私は貝になりたい』

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本作脚本・橋本忍による伝説的な映画です。必見。

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最終更新:2008/12/01 08:00
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