窪塚洋介×三池崇史 もっとも危険な役者論
#映画 #対談 #邦画
三池崇史と窪塚洋介。監督と役者という立場の違いこそあれど、互いに共通しているのは、映画界の常識や既成概念を覆すような、型破りの存在であることだろう。
そんな2人は過去に一度、撮影所ですれ違い、挨拶を交わしたことはあるものの、これまで一緒に仕事をしたことはなく、こうしてじっくり会話をするのも初めてだという……。
──まず、三池監督は窪塚くんに対して、どんな印象を抱いてました?
【三池】 いやぁ……危険だな、っていう印象(笑)。
【窪塚】 大手の企業が俺のことをそう思ってる、みたいな(笑)。
【三池】 でも本来、役者ってのはアウトローなんですよ。「普通の大人にならずに死んでやろう」みたいな覚悟があってしかるべきで。ところが最近の映画界は、いい子ばかりが求められる。しかも、売れれば売れるほど、どんどん自分が「格好悪い」と思ってるような役ばかりが回ってくる。会社でウジウジ悩んでた男が、恋によって救われるとか(笑)。
【窪塚】 ふふふ。
【三池】 「そういうヤツの頭をブチ抜いてやるっ!」と思って役者になったはずなのに、真逆の作業をやんなきゃいけない。そんなジレンマに対して、窪塚くんは「言うべきことは言っていこう」という強い意志を持っているように感じますね。
──窪塚くんは、三池監督にどのようなイメージを持ってますか?
【窪塚】 俺の三池さんに対する印象は、以前、なんかの映画の主演男優を渋谷駅の改札でスカウトしたって話を聞いて……。
【三池】 ああ(笑)、『漂流街』(00年)のTEAHだ。
【窪塚】 そう、それ、気になって見に行ったんですよ。「うわ、すごいのスカウトしてきたな。この役者、今後仕事を続けていけんのかな」と思いながら見てましたよ。でも、主役をそういう形でサクッと使えるなんて、懐深いし、イケイケなんだな、と思いましたね。
【三池】 それを許してくれたプロデューサーの懐が深かったんですよ。あの当時はまだ、そういう冒険がギリギリで許される時代だった。でも今はどんどん映画の枠が狭まっている。昔は映画って、「俺はこの作品が好きだけど、お前はどんな作品が好きなの?」って他人との違いを発見するための道具だったのに、今は「みんな一緒に楽しもうよ」と人と喜びを共有するための道具になってしまった。その対極にあるのが音楽じゃないかな。これほど多ジャンル化して、好みも多様化して、ビジネスとして成立しないんじゃないか? って思うんだけど。
【窪塚】 俺は去年から二足のわらじを履きだして、卍LINEという名義でレゲエミュージシャンもやってるんですけど、一応それだけでも生活できるし、好きなこともできてますね。でも映画に関しては、唯一、自分が企画段階から入ったのは『凶気の桜』(02年)だけ。今後もこういうことやっていけたらすげえ楽しいじゃん、と思ってた矢先に、落っこちてケガをして。今、マイナスからはい上がってる状況なんですよ。
最初に役者を目指したとき、やりたくない仕事をたくさんやることで、やがて『凶気の桜』にたどり着いたという実感がある。さっき三池さんがおっしゃったような、「自分が上がれば上がるほど、やりたくない役が回ってくる」というのと、俺は逆ですね。上がれば上がるほど理想に近付いていくイメージがある。で、今もやりたい作品とか原作はいっぱいあるけど、まだ自分がそれを演じられる状況にはない。だからとにかく今は我慢して、やんなきゃいけないことはやんなきゃ、って思うんですけど、どこか踏ん切りついてないところがあって……。たとえば「ジャ○ーズが出るならやんねえよ、E○ILEの相手役なんかやれねえよ」とか思っちゃう。
【三池】 僕はその点、自虐的というか、マゾっぽいところがあるんですよ。昔、SPEEDが主演した『アンドロメディア』(98年)という作品の話が来たとき、すごくうれしくて。「えっ、俺がSPEED?」って(笑)。それまで中条きよしさんなど男臭い俳優と一緒に仕事をしてきたのに、いきなりアイドルを撮る話が来たから、「おんもしれー!」と思って。
【窪塚】 たとえば、モーニング娘。の映画をやれって話がきたら、どうしますか?
(写真・粟根靖雄/構成・岡林敬太/続きは「サイゾー」12月号で)
三池崇史(みいけ・たかし)
1960年、大阪府生まれ。横浜放送専門学院(現日本映画学校)卒業後、今村昌平、恩地日出夫監督に師事。95年『第三の極道』で劇場映画監督デビュー。独特の暴力描写と映像表現を武器にあらゆるジャンルの作品を精力的に撮り続けている。代表作に『DEAD OR ALIVE』シリーズ、『殺し屋1』『妖怪大戦争』など。『クローズZERO』の続編である『クローズZEROII』、『ヤッターマン』が来年公開予定。
窪塚洋介(くぼづか・ようすけ)
1979年、神奈川県生まれ。95年にドラマ『金田一少年の事件簿』(日本テレビ)でデビュー。その後、『池袋ウエストゲートパーク』(TBS)や『GO』『凶気の桜』など数多くのドラマ・映画に出演し、俳優として活躍。現在、映画『ICHI』『まぼろしの邪馬台国』が公開中。俳優業と並行して、レゲエ・ディージェイ「卍LINE」としても年間100本近いライブをこなしている。
原作の馳星周に「役者にゃマーリオは演れませんよ」と言ったそうです。
【関連記事】 不条理アイドル映画を完成させた佐藤佐吉が語る「映画の神様」
【関連記事】 “アート界の錬金術師”村上隆が映画参入! 第1弾は超ロリ映画
【関連記事】 “大川総裁”のお墨付き!? トンデモ映画と「幸福の科学」の関係
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事