アニメマスコミを泣かせる”サンライズ様”の銭ゲバ体質(前編)
#アニメ #企業 #マスコミ
こぞってサンライズアニメが表紙に。「アニメディア」に至っては、「すごいぞ! サンライズ」という、
16ページにも及ぶサンライズ巻頭特集を組んでいる。
アニメ不況の中、版権ビジネスでガッチリ儲けているアニメ制作スタジオがある。『ガンダム』でお馴染み、バンダイ傘下のサンライズだ。しかし、そのガメツイやり方に対して、立場の弱いアニメマスコミからは不満が噴出している。
スタジオジブリの『崖の上のポニョ』が興行収入が公開31日目で100億円を突破──こんなニュースを耳にすると、アニメ業界全体の景気が好調かのように思えるかもしれないが、実際はその逆。DVD販売の伸び悩みや劇場版アニメの不発などにより、多くのアニメ制作スタジオが不況にあえいでいるのが現状だ。そんな中で、利益率が高いとされる版権ビジネスに頼るアニメ制作スタジオもある。
「いまだ、昔ながらの現場気質の強いアニメ業界ですが、『ルパン三世』で有名なトムス・エンタテインメントや藤子作品を多く手がけるシンエイ動画、東映アニメーション、虫プロダクション、タツノコプロ……など、過去作や昔からの人気作を使った版権ビジネスで食いつないでいるスタジオも少なくありません」(元アニメーター)
そんな状況下で、『機動戦士ガンダム』に代表されるキラーコンテンツを持ち、版権ビジネスで最も成功しているのが、1976年創業の大手アニメ制作スタジオ「サンライズ」だ。近年のサンライズは、ほかにも『コードギアス反逆のルルーシュ』『ケロロ軍曹』『銀魂』など、”キャラクター押し”のヒット作品を多数生み出し、フィギュアやゲーム、コミックなどメディアミックスを強力に展開。「月刊ニュータイプ」(角川書店)、「月刊アニメージュ」(徳間書店)、「月刊アニメディア」(学研)の”三大アニメ誌”に至っては、表紙や巻頭特集にサンライズ作品を見かけない号はないほどだ。まさにサンライズの姿は、生き残りを模索するアニメ業界にあって、理想的なビジネスモデルといえよう。だがその一方で、そうした人気をかさに着た”殿様商売ぶり”に対して、不満の声もある。
●”サンライズ様”の仕打ちに耐えるアニメマスコミ
あるアニメライターはこう嘆く。
「三大アニメ誌のようなメジャー誌は別として、まだ歴史が浅く、予算のない媒体ではサンライズ作品の特集は組みづらい。というのも、通常は放送中の作品やDVD発売を控える作品に関しては、宣伝扱いと見なして”場面写真”の使用料は発生しないものなのですが、サンライズの場合は1点5000円以上の料金が発生します。以前、サンライズ側から『特集を組んでくれないか』と依頼された案件の記事を書いたことがあるのですが、後になって場面写真の版権使用料と、取材協力スタッフへのギャラを請求され、驚愕しました。今まで多くのスタジオと仕事をしてきましたが、サンライズほど金にガメツくて、態度が傲慢なところはありません。”気に入らない”という理由で、出入り禁止にされたアニメライターも知っています」
さらに、こんな悲痛な声も。
「サンライズで、版権と取材依頼の管理を行っているのは、『ライツ業務部』という部署です。ガンダムシリーズ(ガンダム事業部)とそのほかの作品(キャラクターワークス事業部)とでチームが分かれており、特に収益の大きいガンダム関連の版権は、かなり厳重に管理されているようです。以前、『機動戦士ガンダム00』に出演中の声優に取材を申し込んだら、マネージャーに『まずサンライズに問い合わせてくれ』と言われたんですよ。声優個人のスケジュールをなぜ制作会社が管理しているのか疑問だったのですが、サンライズに連絡すると、『ガンダムの放送期間中は声優もコンテンツの一部と見なすので、(サンライズに)1時間3万円支払ってほしい』と言うんです。通常、放送期間中の取材は宣伝扱いとしてギャラは発生しないものなので、これには驚きましたね。結局、予算もないので泣く泣くあきらめました」(アニメ誌編集者)
しかも、こうしたガンダム版権の徹底管理ぶりは、原作監督の富野由悠季御大にまで及んでいるという。
「以前、富野監督に取材を依頼した際、ご本人は出たいと言ってくださったんですが、結局は実現しませんでした。そのとき監督ご本人に伺ったんですが、なんでも”許可した媒体にしか露出しない”というような契約をサンライズと結ばされているそうです。本来はもっと奔放な方のはずなのに、サンライズに活動を制限されてしまって、今の監督はまるで『Zガンダム』でティターンズに軟禁されているアムロのようなものですよ(苦笑)」(アニメマスコミ関係者)
(後編につづく/文=大松百春/「サイゾー」10月号より)
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