評論家・佐高信が喝！「日本にいい企業なんて無い」（前編）

　毎年、新卒者向けに日本経済新聞社やリクルートが発表する人気企業ランキング。

　しかし、上位に食い込む人気企業の中には、学生が抱くイメージとその実態がかけ離れた企業も少なくない。日本企業を監視し続け、その腐敗ぶりに対しては一家言ある「週刊金曜日」発行人にして評論家の佐高信が、人気企業の化けの皮を暴く！

日経HRと株式会社ディスコが共同運営する、
大学生向けの新卒就職情報サイト「日経ナビ」
が、昨年10月～12月にかけて、就職活動を控
えた全国の大学3年生男女を対象に行った就
職希望企業調査の結果より。

──今日は、「日経ナビ」の2008年度版人気企業ランキング【表参照】を例に、お話を聞いていきたいと思います。佐高さんから見て、この結果はどう思われますか?

【佐高】　まず、論評に値しないですね（笑）。1位が全日空となっていますが、航空会社は事故も多く、今、大変な時期にあることを大学生はわかっていない。なぜ事故が増えているのか?　その原因のひとつに、94年頃から段階的に航空各社が契約社員制度を導入し、現在、キャビンアテンダント（CA）の半数以上がアルバイトと同等の扱いになっていることがあります。CAの仕事内容は、乗客に機内食を配るだけの「サービス要員」ではなく、本来は「保安要員」。安全が最も求められるそうした仕事で保安要員を非正規雇用にするから、安全が二の次になってしまう。むしろロクに働きもせず、責任もちゃんと取らない社長のほうをアルバイトにすべきでしょう。こんな結果を見ると、学生の頭のほうが空を飛んでいるとしか思えませんよ（笑）。

──2位は三菱東京UFJ銀行ですが、ほかにも三井住友銀行（12位）などメガバンクは倒産しないという安心感からなのか、総じて人気が高いですね。

【佐高】　銀行ほど汚い企業はない。最近でも、みずほフィナンシャルグループ（8位）傘下のみずほコーポレート銀行の齋藤宏頭取が路チューを写真週刊誌に撮られましたよね。そういう非常識な人じゃないと、トップになれない組織なんです。私は不倫はやりたきゃやればいいと思っていますが、ふすまを閉めてやるべきで、世間に公開するバカがいるかと（笑）。それで、そのとき広報が不倫報道について「プライベートなことなので答えられない」ってバカな回答をしていたんですが、日本を代表するメガバンクの頭取にプライベートはない。しかも、こんな騒動を起こしても頭取は辞任しない。これじゃ、山本モナが気の毒ですよ（笑）。

　また、高杉良さんの経済小説『金融腐食列島』（角川文庫）でも、第一勧業銀行（現みずほ銀行）の総会屋事件について触れていますが、銀行は総会屋やヤクザなどの闇社会とつながっているという、ダーティーな側面がある。基本的に総会屋は銀行が雇う。株主総会でデタラメな融資とかを株主に追及されないよう、事前に総会屋を介して株主を籠絡したりし、揉み消しているわけです。その一方で、三菱自動車がリコール隠しでメディアに叩かれても潰れなかったのは、同じ三菱グループの三菱東京UFJが財政支援したからでしょう。昔から銀行はこうした私利私欲に走ったデタラメな業務をしてきたにもかかわらず、銀行というだけで潰されず、生き残ってこれたわけです。

──3位のトヨタについては、佐高さんは共著『トヨタの正体』（金曜日）でも痛烈に批判していますね。

【佐高】　秋葉原通り魔殺人事件は、日研総業がトヨタ系列の関東自動車に派遣した社員による凶行でした。しかし、トヨタの社名を伏せるマスコミも少なくなかった。それは、トヨタがマスコミ最大の広告スポンサーだからです。

（後編につづく／文・小川裕夫＋編集部／写真・水野嘉之／「サイゾー」10月号より）

佐高 信（さたか・まこと）
1945年、山形県生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。経済誌「現代ビジョン」編集長を経て、現在は評論家、株式会社金曜日代表取締役。「サンデー毎日」（毎日新聞社）で長期連載中の「佐高信の政経外科」では、鋭い舌鋒で、腐り切った日本企業や政界批判を大展開している。著書に『佐高信の政経外科』シリーズ（毎日新聞社）、『新版 会社は誰のものか』（角川文庫）、『タレント文化人筆刀両断!』（ちくま文庫）など多数。

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