子役たちのアドリブ演技が命の重さを問う『ブタがいた教室』
#映画 #邦画
小学6年生のクラスで、「卒業するときに食べる」ことを前提に子ブタを飼い始める。しかし、そこはまだ小学生の子どもたち。ブタをPちゃんと名づけて”家畜”というよりも”ペット”として愛情を注ぎ、飼育に熱をあげるが、案の定、情が移ってしまってとてもじゃないけど「Pちゃんを食べることなんてできない!」という事態に陥ってしまう……。
11月1日から公開される映画『ブタがいた教室』はこんな筋書きだが、これは実際に大阪の小学校で行われた授業を基にしたお話。
最近でこそ「食育」といった言葉が定着してるが、映画の基になった授業が行われたのは、1990~93年のこと。その様子が1993年にNHKでドキュメンタリーとして放送され、賛否両論を呼んだ。この授業の様子を映画化したのが本作で、つい先日閉幕した第21回東京国際映画祭でも観客賞を受賞。審査委員長を務めたアカデミー賞俳優のジョン・ヴォイトも、「世界中の子どもたちが見るべきだ」と絶賛していた。
映画は、妻夫木聡演じる新米教師の星先生が、命の大切さや命を育むということ、人は生きるためには動植物の命をいただいて食べなくてはならないということを子どもたちに実感させようと、ブタを飼う授業を行うのだが、クラスは「食べる」「食べない」で真っ二つに分かれ、大激論が交わされることになる。
主演は妻夫木聡だが、それ以上にオーディションで選ばれた26人の子どもたちが際立つ。Pちゃんを食べるべきか否かを議論するシーンでは子どもたちに台本は与えられず、結末についても知らされないままで、子どもたち自身の言葉で意見が交わされていったそうで、まるでドキュメンタリーの様相。あたかも同じクラスの中でその様子を見守っているかのような錯覚に陥る。言葉を詰まらせてしまったり、涙を流してしまう子どもたちの様子を見ていると、ある種の緊迫感が漂い、一体どういう結論に至るのか先が見えずにスリリングですらある。
「ブタ肉は食べる。でもPちゃんは食べない」「どうしてPちゃんだけが? 他のブタならいいのか?」。堂々巡りの議論はどちらが正しいとも間違っているとも言えず、見ている側も思わず一緒に考えてしまうはずだ。自分ならどうするか?と。また、子どもたちの真剣な姿に思わず涙を誘われる人もいるかもしれない。
どのような答えが出るかは映画を見て確認してほしいが、映画館を出た後は、「食べる」ということ、「いただきます」という言葉についてついて考えてしまうかも。この映画をデートで見に行くなら、その後の食事は肉料理にするかどうかは慎重にご検討を。
(eiga.com編集部・浅香義明)
作品の詳細は以下より。
『ブタがいた教室』
eiga.com映画評
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