“不良の格闘技大会”参加者たちの魂の叫びを聞け!(後編)
#格闘技 #前田日明 #THE OUTSIDER
10月19日にディファ有明で幕を下ろした『THE OUTSIDER(ジ・アウトサイダー)第参戦』。その出場選手たちに「日刊サイゾー」が玉砕覚悟の突撃インタビューを試みた。衝撃の前編に続いて、怒涛の後編をお届けしよう。
“栃木真岡 夜の代表取締役”
松本峰周(28歳・初出場)
スキンヘッドをテカらせながら、時には笑みさえ浮かべながら、2Rフルのドツキ合いを演じ、観客の胸を打ったのが、松本の一戦だ。互いにあえてガードを固めず、大振りのパンチを打ち合うその様は、まさに「拳の語り合い」。アウトサイダー史に残る名勝負を制し、引き揚げてきた松本に話を聞いた。
──楽しそうに殴り合ってる姿が印象的でした。
「やっぱり、まわりから期待されてる殴り合いですか、記録よりも記憶に残る試合をやりたかったので。僕はどっちかというとグラウンドのほうが得意なんですけど、相手の土俵で勝ってこそ、勝負師だと思うので」
──相手の岩本一貴選手(22歳・初出場)のパンチも、結構もらってましたよね。
「正直、ここまで長時間殴られ続けた経験はないですね。練習はいつも3分とか5分なんで」
──途中で記憶が飛んだりしませんでしたか?
「それは全然大丈夫ですね。いつも同じチームの吉永啓之輔(25歳・今大会のMVP)がスパーリングと称して、僕のことをボコボコに殴ってくれるんで(笑)、それに比べりゃラクかなと」
──普段は何のお仕事をなさってるんですか?
「前は飲食店を経営してたんですけど、今は会社を全部売っちゃって、大学生をやってます。格闘技をやるようになってケガすることが増えたので、自分のためにも仲間のためにも柔道整復師の資格を取ろうと思って勉強中です」
──ところで、夜の蝶っぽいド派手な格好をした女性の応援団がいましたが、あの人たちは何者なんですか?
「ああ(笑)、彼女らは昔からの友達です」
その女性陣にも話を聞いてみたところ、「松本さんは料理がすごく上手で優しい人。喧嘩しているところなんて見たことない。ちなみに私たちはキャバ嬢じゃない」とのことだった。
“リアル プリズンブレイク”
江田雄一(27歳・初出場)
「懲役6年/ストリートファイト無敗」という恐ろしい肩書きを引っさげて、アウトサイダーに殴り込みをかけてきた新顔の江田。対するは、前回大会、前々回大会で大活躍した実力者の吉永。期待と幻想が脹らむセミファイナル。その試合直前に、江田に話を聞いた。
──自己紹介文に「吉永とは背負ってるモノが違う」とありましたが、具体的に何を背負っているのでしょう?
「(記者を睨みつけながら)ワルさやって、ずっとアウトローやってきて、いつ死ぬか分からない世界で生きてきた人間と、ヌクヌク育ってきた人間とじゃ、やっぱ世界が違うでしょ。背負ってるモノが全部違う。両親も死んで、いないですし」
──そうだったんですか……。
「ずっと片親だったけど、ワルさして懲役いってる間に、父親も亡くして」
──非常に聞きづらいことですが、どんなワルさをしたのでしょう?
「人殺し以外は全部やったんじゃないかな」
──出所したのはいつですか?
「3年ぐらい前、25んとき」
──出所してすぐに更生を?
「一回グレーの世界に戻ったんすけど、仲間の支えもあって、また鳶の世界に戻って、ずっと鳶やってましたけどね」
──地元はどちらですか?
「池袋」
──ということは、ギャングのメンバーだったんですか?
「ギャングのケツ持ちしてました。兄貴分と」
亡き両親、そして更生へと導いてくれた仲間のために勝利を誓った江田だったが、善戦むなしく敗れ去った。試合後、再び話を聞いた。
──おつかれさまでした。
「悔しいですね。KOできたと思ったんで」
──それは、どの段階で?
「最後キメられるときも思ってましたよ。左手で押さえてたんで。あ、パウンドでいったかなーと思ったんですけど、隙つかれちゃった」
──戦い終えた感想は?
「やっぱ格闘技と喧嘩は違うかなー、って思ったっすね。(喧嘩に)寝技はないっすからね」
──今後の抱負は?
「もうちょっと寝技の勉強をしたいっすね。まだ6回ぐらいしかジム行ってないし、煙草もやめてないんで、まずはそこからっすかね。ちょっとナメてた部分あるんで。煙草やめて体を鍛えれば、ちょっとイケるかな、と自信つきましたね」
──再び吉永選手と戦える機会があったら?
「今度は関節勉強して、関節キメ返したいですね」
最後にちょっと笑顔を見せた。
“封印解放 アウトレットブルース”
川村勝(29歳・初出場)
今大会、最大の注目選手として挙げられていたのが、初出場ながらメインイベントを飾った川村だ。185cm、90kg。隆起した肩と大胸筋にビッシリ彫られた立派な入墨。ぶっとい腕に、ぶっとい首。坊主頭に、据わった目。すべてが”ホンモノ”としか言いようのないド迫力! 試合前にバックステージを覗きにいくと、丸太のような腕をビュンビュン振り回しながら準備運動の真っ最中。しかし意外や意外、気さくに取材に応じてくれた。
──出場動機を教えてください。
「刑務所出てきて、組織を抜けて、大検取って、大学通って、こないだ卒業したばかりで。そのあと本も出して、自分なりに目指している夢もあるんですけど、これが雲を掴むような話で……。そんなさなか、自分にも子供ってものがラッキーにもできて、来年1月に生まれる予定なんですけど、すぐに仕事して満足な生活というか、大学卒業した人が送るような生活を彼女と子供に渡すことはまだできそうにないんです。かと言って、このまま黙って彼女にだけ苦労をかけるわけにもいかない。そんなこんなで何かをしなきゃ! ってときにこの大会に出会った、という感じですかね。いや、本当はもっと大きな動機があるんですけど、それを言うか言うまいか、ってこともまだ整理が付かない状態で……」
──刑務所にはどれぐらいの期間、いたんでしょう?
「自分はかつて、ある組織にいたんですけど、19歳のときに抗争事件が起きて、相手の組員を拉致してうんぬんかんぬんで、懲役2年3ヶ月。2002年に出所しました」
──更生を決意したのは、いつですか?
「独居房にいる最中ですかね。実際に組を抜けるのは簡単ではなかったですが……」
──どんな少年時代だったのでしょう?
「小学校んときから体がデカくて、髪を染めたりしてたんですけど、中学時代は世間が思うようなコテコテの不良ファッションではなかったです。髪を染めるのはやめにして、坊主頭にして、エンジニアブーツに皮ジャンとか。ちょっとこう、オシャレ系な感じでやってましたね。でも、中2の終わりぐらいに教室で暴れたりの問題を起こし、学校の敷地内に入れなくなってしまい、中3の2学期からは、駅2つ隣の違う中学へ通うようになりまして。まぁそれは、高校へ行け、っていう親の配慮だったんですけど……。ちなみに親はサラリーマン。なんでグレるの? っていう家庭でした。でも結局、せっかく入った高校にもなじめず、いろんな遊びや薬物も覚えて、喧嘩にも明け暮れ、16か17歳ぐらいから組事務所に住むようになって……という感じですかね」
──今日の試合に対する恐怖心はありますか?
「全然ないですね。殴られるのも負けるのも恐くない。そういうふうに地元・相模原で暴れてきて、まあ、ある程度、それがあるから僕というのもあったんですけど、今さら暴力とか腕っぷしで僕を認知している人たちってのは、それほど重要だとは思ってないんで。負けて何かを失う、ってのはないですね。あとはまぁ、リングが終わって、何を思い付くか、って感じですね。勝っても負けても」
結果は、勝った。そして勝利者マイクでは、観衆が見守る中、客席の彼女に向かってプロポーズ!
戦う前、「それを言うか言うまいか、ってこともまだ整理が付かない状態で……」と語っていたのは、このことだったのか。
“オマエは別腹 暴食怪人”
津谷健一(31歳・初出場)
コワモテばかり並べてきたので、最後に異色のファイターを紹介して終わりにしたい。体重100kgジャスト。出場選手中、最重量でありながら、最も小声で喋るオタク青年、津谷である。大会が終わり家路につく彼を、電車の中で直撃した。
──対戦相手の”サモア”こと向出秀孝選手(27歳・初出場)は、黒くて太くてスキンヘッド。得体の知れない恐さがあったと思いますが。
「実は僕、アマでの挌闘実績が20試合ぐらいあって、結構ああいう体型の人ともやってるんですよ。だからまぁなんとなく、予想した通りの動きでしたね」
と、勝者の余裕を見せたところで、ジムの先輩から横槍が入る。「全然ダメだよ。
悲しくなったよ。もっと動けたはずだし、もっとできたはず」。これを聞き、津谷はションボリしながら反省の弁。
「さんざん習ったことがまだ身に付いてなかった。いざとなったら、相手の腕を押さえてパウンドっていう、基本的なことしかできませんでした……」
──ところで津谷さんは、なぜに”暴食怪人”というキャッチフレーズが付いているんですか?
「実は僕、川崎の大食い大会で優勝したことがあるんです。ところがパンフレットには、そのことが一切記載されていなかったので、意味が分からなかったお客さんもいたかもしれませんね」
──どれぐらい大食いなんですか?
「4キロのカレーを20分で食べます」
──すごいですね!
「ところが、ジャイアント白田さんは、6キロのカレーを10分で食うんですよ。ああ、もう全然モノが違うんだな、その道では絶対にかなわない、と思いました……」
世の中広い。上には上がいるということだ。
次回アウトサイダー第4戦は、12月20日、場所は同じくディファ有明にて開催予定。今回大会を上回る、さらなる不良、さらなる強豪、さらなるオタクの登場に期待したい!
(取材・文=岡林敬太)
ねばねばした主題歌が耳に残ります。
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