「よしりんと戦争勃発!」佐藤優ロングインタビュー(後編)
#マンガ #佐藤優 #小林よしのり
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──「小説新潮」(2008年10月号)の連載「功利主義者の読書術」で佐藤さんは、次のように書いています。
≪思想の質とその影響力は、まったく別の問題だ。功利主義者の筆者は、この種の知的水準があまり高くないにもかかわらず、現実に無視できない影響を与える思想(例えば、漫画家が行う歴史や政治思想の読み解き)がもつ危険性について、有識者はもう少し敏感になるべきと思う。≫
ここで言う≪漫画家≫とは、小林さんのことですか。
【佐藤】 違います。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)を描いた山野車輪さんのことです。私の認識では、小林さんは沖縄に関して排外主義的である。一方、中国や韓国、北朝鮮の領域においては排外主義的な言説が非常に少ない。これは小林さんの名誉のために言っておきますが、韓国や北朝鮮に対する言説において、山野車輪さんと小林さんは本質的に異なります。
私は今の沖縄の状況は、非常に危機的だと思っているんですよ。このままでは、沖縄と内地の溝は埋まらないくらいにひどくなってしまう。心ある人たちは、沖縄と内地の溝を埋めようと努力しています。沖縄独立論者だって、沖縄のことを真面目に考えているわけです。私が沖縄独立論に反対だということをわかっていながら、彼、彼女らは私に記事に書かせ、シンポジウムに呼ぶ。なぜか。沖縄と内地の溝を埋めたい、と真摯に考えているからです。
私は琉球新報に「ウチナー評論」という連載を書いています。私が思想的に右寄りに位置する保守的な人間だとわかっていながら、琉球新報は私にコラムをもたせている。これも、沖縄と内地の溝を埋めたいと思っているからです。琉球新報の人たちはリスクを負っている。少しずつリスクを負いながら、どこかで共通の言葉を見出せないか努力しているわけです。一方で、「沖縄は全体主義の島だ」という言説を出している沖縄の知識人がいます。彼らは沖縄での発言力もあるし、琉球新報で発言しようと思えばできるのに、その努力もしないで内地に行って発言してばかりで、リスクを負おうという姿勢が感じられません。私はこのことを言いたくて、「ウチナー論評」でも書いた。それを見た小林さんは、「『沖縄は全体主義の島だ』という有識者」を自分のことだと決めつけて、今回私を攻撃してきたわけですが、はっきり言って小林さんは念頭に置いていない。内地に行って小林さんと連携する沖縄の有識者たちの行動様式を問いたかったわけです。
──『国家と神とマルクス』(太陽企画出版、2007年4月刊行、下記引用の初出は「情況」2006年5・6月号)の中で、佐藤さんは小林さんのことを次のように評価しています。
≪小林よしのりさんは非常に真面目な人物です。他者の言説をきちんと聞いてその内在的論理を正確に捉えようとする思想の構えがあります。≫
【佐藤】 それは崩れました。2年前に比べて今の小林さんは、ずいぶんと変わってしまった。小林さんは西部邁さんと決別しました。かつては西部さんが思想的な組み立てをし、その土俵に乗ったうえで小林さんがマンガという形で表現してきた。その2人の有機的な関連が切れたところから、小林さんの迷走が始まったと私は見ています。
──先ほどの引用に続き、佐藤さんは『国家と神とマルクス』で次のように言っています。
≪それから小林さんは、右派、国家主義陣営の学者と比べて人間としての芯が強い。自分が咀嚼したものしか描かないので、迫力が違います。≫
この評価も、今では変わりましたか。
【佐藤】 変わった。小林さんは、自分が咀嚼できないようなものについてまでも描くようになった。例えば沖縄の集団自決問題です。私の認識では、この2年の間に小林さんの中で変化が起きた。これは私の推定ですが、小林さんの変化は本の部数にも影響しつつあると思います。
──つまり、小林さんの迷走に読者が愛想をつかし始めているということですか?
【佐藤】 愛想をつかしているかどうかはわからないけれども、読者は小林さんが変わってしまったことに気づいていると思う。
『国家と神とマルクス』で書いた小林さんに関する評価は、見誤ったとは思っていませんし、私自身が事実誤認をしたとも思いません。『国家と神とマルクス』以外にも私は、『論日本』(ブックマン社、2006年10月刊行)という本の解説で小林よしのり論を書いています。
≪小林氏の漫画は、『論日本』のような「絵解き解説本」ではなく、ストーリー性をもった文学作品である。(略)『論日本』では中国のナショナリズムが手放しで肯定されている。これに対して小林氏はナショナリズムの危険性を十分に認識している。≫
この評価も、撤回するつもりはまったくありません。
──なるほど。2年前の小林さんと今の小林さんは、マンガ家としてのスタンスが変わってしまったというわけですね。いずれにせよ、今回の「SAPIO」の一件に関しては、編集部のチェック機能が衰えているということですか。
【佐藤】 そう。もっと平たく言えば、「SAPIO」の編集権が働かなくなっているのではないですか?という話です。ペンで生きている論壇人の言説が「デタラメ」だと言われるということは、「お前は論壇の世界で食っていけないぞ」と言われているに等しい。私の言説が「デタラメ」だと言うからには、挙証責任があります。要約不適当、引用が不正確、そういう細かいことについて、小役人はうるさいですよ。「ミクロの決死隊」のような仕事は、すごく得意なんだから(笑)。
(2008年9月30日取材、構成=荒井香織)
【追記】
「SAPIO」(10月22日号)の「ゴーマニズム宣言」で小林よしのり氏は、欄外で次のように書いている。
≪佐藤優が「SPA!」の9月23日号で「大林わるのり」って人を、知恵を尽くし、工夫を凝らして、全力で罵ってます。見逃した人は図書館かどこかでバックナンバーを探して、ぜひ読んで下さい。この記事、できるだけ多くの人に見せてあげたいから、どんどん宣伝して下さい。≫
「知的水準があまり高くない思想」と名指しで。
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