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巨匠・小池一夫が喝!「俺がマンガ界の総理になる!!」(前編)

koikekazuo01.jpg写真/江森康之

 相次ぐ休刊、作家と編集者の軋轢、書店の衰退……はたして”マンガ”はどこへいくのか?

 原作者として『子連れ狼』『クライング フリーマン』などのヒット作を生みだした稀代のヒットメーカーにして、無数のクリエイターを育ててきた”マンガ界の父”でもある小池一夫が、混迷する現在のマンガ界に喝を入れる! 心して聞くべし!

──ここ数年、有名マンガ雑誌の休刊が相次いでいますが、この状況をどう感じていますか?

【小池一夫(以下、小池)】 とにかく、日本のマンガ界に危機的な状況が迫っていますよ。雑誌の休刊もそのひとつです。大手マンガ誌は15万から20万部は売れないと制作費のモトが取れないんですが、それが厳しくなっている。原稿料が高いなど、雑誌ビジネス不調の原因は多々あるけど、キャラクターのライツマネジメントがちゃんと展開されていないのが大きい。日本のマンガ界……”マンガ村”がそういうことを考えてこなかったからね。

──小池先生は30年以上も前から「劇画村塾」(77年に開講した、マンガ家やマンガ原作者の養成塾)といった独自の場を設けて、キャラクター論などいろいろと教えてこられていますよね。

【小池】 ずっと教えてきてます。マンガは、面白いキャラクターがあれば売れるんです。『北斗の拳』の原哲夫、『うる星やつら』の高橋留美子だってそう。『ドラゴンクエスト』も、『じゃりン子チエ』も、『あずみ』も、『グラップラー刃牙』も、劇画村塾で僕が教えた「マンガはキャラクターが命だ」という発想から生まれてると思いますよ。だから、もっとマンガ村を作り上げてきた長老の言うことを聞かなくちゃいけない。長老がみんな死んじゃってるでしょ。手塚治虫、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、横山光輝、梶原一騎、藤子・F・不二雄……残ったのは僕とさいとう・たかをと安孫子素雄(藤子不二雄A)ぐらいだよ(笑)。その中で、若い人たちに教えてるのは僕ぐらいでしょ?

──「若い」といえば、先ほど(取材前)も小池先生の会話の中に「ミクシィ」っていう単語が普通に出ていて、ビックリしたんですよ(笑)。

【小池】 今の世の中の流れの中に身を置いておかないとね(笑)。今だって、僕はマンガ雑誌も全部読むし、マンガのイベントにも行くし。アメリカやフランスなど海外のイベントにも、自分の作品の原画を持っていって展示して。でも、日本ではイベントそのものがない、誰もやろうとしないんだよ! もちろん、『デスノート』や『ナルト』を海外に売るところまではやってます。でも、マンガ文化そのものを啓蒙して、しっかり育てていかないと。今、マンガやアニメを中心としたコンテンツ産業の経済規模は年間13兆円っていわれてるんですよ。鉄鋼業が3兆、自動車業界が20兆です。これだけのお金を稼いでいるんだから、それをどう進めるのか考えなきゃまずい。なのに、日本マンガ界がそういったことに対して、あまりにも非協力的なんですよ。

──最近はわりとマンガ関係の文化事業の話も聞きますが……やはりまだ非協力的ですか?

【小池】 表面では「協力する」って言っても、実質的には協力してない。例えば海外のイベントにマンガ家を連れて行こうとしても、編集者が専属契約で抱えてるから、「締め切りに遅れる」とか言って、外に行かせない。今、世界中で消費されているコンテンツのほとんどは、先人たちの「遺産」でしょ。僕の『子連れ狼』もそう。それが飽きられたら、次に何が残るのか。それこそ『デスノート』や『ナルト』とか、わずかな作品しかない。そのためにも若い才能を発掘して、育てて、世に出さないと、と思ってるんです。50歳を越えて、マンガが売れて、余裕の出てきたような連中が、もうちょっと後進を育成していかないと。誰とは言わないけどね(笑)。

勉強ばっかりしてきた「ガリ勉編集者」じゃダメ

──『金色のガッシュ!!』の作者が小学館を訴えて話題になりました。最近、編集者と作家の関係が変になってきているのでは、と思うんですが、そのあたりはどう感じられますか?

【小池】 大学を卒業してメジャーな出版社に入って、いきなりマンガの部署に回されたような人にマンガのことがわかると思いますか? 逆に、マンガばっかり読んできた連中はメジャーな出版社の試験に通らない時代(笑)。勉強ばっかりしてきた連中が大手出版社に入って、偉そうなことを言う。それじゃダメ。……最近も、僕の『子連れ狼』をパクったアメコミが原作の『ロード・トゥ・パーディション』っていうハリウッド映画があって、その小説版を新潮社が出したんです。そうしたら、映画の冒頭で無断使用された「道は自分で選ばなくてはならない 小池一夫」っていう言葉が、今度は勝手に本にも入ってるんですよ。それで僕も「一言ぐらい挨拶しろよ」と言おうと思って自分で新潮社に電話したんです。そうしたら、電話に出た若い担当者が「小池一夫って誰ですか?」って言うんだよ(笑)。こっちも「もういいよ!」って。あとで上層部の知り合いが「改めてお詫びにいく」って言ってたけど、自分が作った本の元ネタの『子連れ狼』の作者を知らない編集者がいること自体、出版社としてはオシマイですよ!

──いきなり小池先生本人から電話がかかってきたら、動転しちゃうかもしれませんが(笑)……そういうところから、マンガ界、出版界の「教育」が必要なんですね。

【小池】 本当は出版社が編集者を教育するべきだけど、そもそも僕だってそういう塾を開いているんだから、「そこに来い」って思いますよ。デザインの世界だって、「来年はこういうモードがはやる」とか予想していくでしょう。出版社にいる編集者たちも、アンケート結果だけじゃなくて、時代を分析して方向性を作っていかなきゃいけない。

──一方、作家側はどうかという話ですが、昔のマンガ家さんは、人生経験の部分も濃かった、面白かったと思うんですよ。例えば小池先生も「さいとう・プロダクション」に入るさらに前に、農林省(当時)の役人をやっていた時代があったり、雀荘に勤めていた時代があったりしますよね。

【小池】 そうですね。僕も確かに官庁勤めの時代がありましたけど、「キャリア」じゃなかったですよ、頭悪かったから(笑)。10カ月ぐらい勤めて、つまらないからまた雀荘に戻ったんですよ。自分で雀荘をやっていたこともあるけど、自分で遊んでばっかりいたからつぶしちゃった(笑)。僕の人生にはいろいろありますよ。剣道もゴルフもやるからには徹底してやりましたね。
後編につづく/取材・文=大西祥平/「サイゾー」11月号より)

●こいけ・かずお
1936年生まれ。劇画原作者。「さいとう・プロダクション」を経て70年に独立。以降、『子連れ狼』『御用牙』『修羅雪姫』『クライング フリーマン』『実験人形ダミー・オスカー』『マッド・ブル34』など数多くのヒット作を生み出す。77年に自身の私塾「小池一夫劇画村塾」を設立し、高橋留美子、原哲夫、板垣恵介、山口貴由、堀井雄二、さくまあきら、狩撫麻礼、山本直樹など、数多くの才能を世に出した。現在は、大阪芸術大学芸術学部キャラクター造形学科教授、出版社「小池書院」の代表取締役会長でもある。

大阪芸術大学 小池一夫のキャラクター造形学

キャラクターの造り方、活かし方。驚くほど解りやすく。

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最終更新:2008/10/18 16:32
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