評論家・佐高信が喝!「日本にいい企業なんて無い」(後編)
#企業 #インタビュー
【佐高】 『トヨタの正体』はトヨタの関連企業が集まる愛知県を中心に8万部売れたんですが、これはどういうことかというと、関連業者が同社のやり口、乾いた雑巾をさらに絞るというような、下請けいじめの「かんばん方式」に不満を抱いているという証拠です。
だいたいね、一族経営で、しかも自分の名字を企業名にするなんて、田舎根性丸出しですよ。トヨタは由緒ある挙母市という名前を「豊田市」に変えて、市長に元社員を送り込んで豊田市をトヨタの傀儡として操っているわけですが、まさに「日本国トヨタ藩」というありさま。社員は、殿様に逆らうことはできないんです。これは、松下電器産業(4位)、日立製作所(13位)にも同じことがいえます。まず、いずれも社宅がありますよね。日本は無宗教国といわれますが、トヨタ教や松下教、日立教といった「会社教」が存在します。
企業が宗教なら、社宅はオウム真理教のサティアンと同じなんです。24時間会社の監視下にさらされ、会社の考え方一色に染め上げられてしまう。
──その松下も広告出稿量が多いため、マスコミタブーとされていますね。
【佐高】 05年、松下が石油ファンヒーターの欠陥品を積極的に回収しましたが、あの回収事件を新聞で見たとき、「え、新聞が松下の批判をできるの?」と驚きました。
しかし、よく読んでみると「松下の発表によれば」という書き方をしていた。つまり、松下側が発表したから書けたんです。松下は約6000万世帯に回収する通知を送ったそうですが、それほどの欠陥商品を出したら普通は潰れてもおかしくない。なのに、積極的な姿勢が、逆に好感度アップにつながった。メディアコントロールが、非常に巧みなんですよね。私は、個人的に「松下政経塾」が好きじゃないんですよ。塾卒の議員である高市早苗や前原誠司とかの言動を見ているだけでも、「松下未熟塾」と言いたくなる(笑)。電気製品もまともに作れないのに、人間を育てられるわけない。
比較的マシな企業はソニーとホンダ
──この中(100位まで)で、佐高さんがいい企業だと思う会社は?
【佐高】 ないですね。
──し、強いて言うなら……。
【佐高】 ……マシなのは、ソニー(5位)とホンダ(22位)。つまり、国際的な企業ですね。ホンダ創業者の本田宗一郎は社宅制度にも反対でしたし、鈴鹿市側から「本田市」への名称変更の申し出をされても、「伝統ある市名を変えるなんて、とんでもない。地域あっての会社です」と断った。それに、名字を社名に残したことを一生悔いていた。ソニーは、アメリカ企業だと思っているアメリカ人も大勢いるほど、広く浸透した会社です。両社とも技術主導で、とにかくいい製品を作ろうという夢を目指した企業で、”マネシタ電器”と揶揄される松下なんかとは違う。
そもそも企業のいいイメージは、メディアが作り出したもの。「リクルートブック」みたいな学生向け企業ガイドの三井住友銀行の欄に、イトマン事件の「イ」の字も出てこないでしょう(笑)。だから、企業選びで大事なのは、企業に対して素直にならないこと。企業イメージに踊らされず、とにかくやりたい仕事を選ぶことが最善でしょう。なぜなら、多かれ少なかれ、どこの企業も社員を尊重しないわけですから。
(文・小川裕夫+編集部/写真・水野嘉之/「サイゾー」10月号より)
佐高 信(さたか・まこと)
1945年、山形県生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。経済誌「現代ビジョン」編集長を経て、現在は評論家、株式会社金曜日代表取締役。「サンデー毎日」(毎日新聞社)で長期連載中の「佐高信の政経外科」では、鋭い舌鋒で、腐り切った日本企業や政界批判を大展開している。著書に『佐高信の政経外科』シリーズ(毎日新聞社)、『新版 会社は誰のものか』(角川文庫)、『タレント文化人筆刀両断!』(ちくま文庫)など多数。
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