オリエンタルラジオ「華やかな挫折の先に」
#お笑い #この芸人を見よ!
オリエンタルラジオは不遇の芸人である。突然こう書いても、にわかには信じられない人の方が多いかもしれない。何しろオリラジと言えば、「武勇伝」のネタで華々しいデビューを飾り、お笑い史上最速の出世スピードでゴールデンタイムに冠番組を獲得、その後もテレビ・ラジオを中心に活躍を続けている。この経歴のどこが不遇なのか、普通に考えれば全く理解できないだろう。
だが、問題はむしろその速すぎる出世にある。希有なスター性によって、彼らはテレビタレントとしての下積みをほとんど経ることなく、いきなり冠番組のメイン司会に納まってしまった。そして、ろくに準備もないままに司会者としての力量を試されることになったのである。
司会者のポジションとは本来、タレントが最後にたどり着く目的地だ。そこに行くまでにはいくつかの段階が必要となる。アドリブ力を磨き、自分たちのキャラクターを浸透させて、共演する他のタレントや芸人との人間関係を構築していく。そういったプロセスを経ることなく、いきなりポジションだけ与えられても、それをこなせる人間などいない。
彼らは周囲の過剰な期待から無理な仕事を押しつけられ、仕切りが下手だ、トークが未熟だとさんざん叩かれた。低視聴率によりいくつかの冠番組は打ち切られ、タレントとしてのオリエンタルラジオは大きな挫折を味わった。
だが、そんな逆境の中でも、彼らは決して腐らなかった。慌てず騒がず、芸人としての原点に帰って自分たちの「笑い」を一から作ろうとした。
それを象徴するのが、2008年3月にリリースされた、10本のお笑い映像作品を収めたDVD『十』である。彼らの持っている非凡なセンスと若手らしくない圧倒的なスケール感が凝縮された、お笑いDVD史上に残る名作である。
さらに、8月にリリースされた最新DVD『才』には、彼らが3月に行った80分ぶっ通しの漫才ライブの模様が収められている。白い十字架のオブジェを中央に据えたシンプルな舞台で、中田と藤森はノンストップでしゃべりまくった。
基本的には短いネタをつなげて長い一本の漫才にしているのだが、決して単調にならず、さまざまなパターンの笑いを次々にたたみかけてくる。テレビで得た人気も、それに伴い背負った汚名も関係なく、ただがむしゃらに漫才師としての才能と意欲をこれでもかと見せつけてくる、実に挑戦的な作品である。
オリエンタルラジオは今も、7月から11月にかけて行われている漫才ツアー『業』で全国を飛び回っている最中だ。テレビ・ラジオの仕事で多忙を極めながらも、彼らは黙々とお笑い芸人として牙を研いでいる。
1、2年前、品川庄司の品川祐は、オリラジの中田敦彦にこう語ったという。
「順調ってことは不運に似てるよ。芸人を強くするのは、挫折だから」
不運な売れ方をして挫折を味わい、そこからはい上がって一回り大きくなった二人。今年のM-1グランプリはそんな「芸人・オリエンタルラジオ」の底力を世に知らしめる絶好の機会となるかもしれない。
(お笑い評論家/ラリー遠田)
一歩一歩階段を登る。
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