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日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 東大出身バルーンアート全米王者・SHINOの膨らむ夢
【動画付インタビュー】

東大出身バルーンアート全米王者・SHINOの膨らむ夢

shino_main.jpg バルーンアートと聞いて私たちがまず思い浮かべるのは、路上やデパートのイベント会場などでピエロが風船をひねる姿だろう。鮮やかな手技から生み出される、小さな犬や、花や、愛らしいキャラクターたち……そんな大道芸としてのバルーンアートのイメージを、根底から覆す男がいる。そのアーティストの名は、SHINO。32歳のバルーンアート全米王者は、東大大学院博士課程単位修了という異色の経歴の持ち主でもある。
SHINOのパフォーマンス動画はこちらから

「東大の院出身という経歴は、別に公表しなくてもいいもの。だけど、今後の日本はコンテンツカルチャーで盛りたてていく時代になってゆくと思うので、あえて学歴を公表することにしたんです。それによって注目してくれる人もいるかと思いまして」

shino_sub02.jpg パフォーマーとして「風船ひねり」の腕を磨く一方、大規模な作品を次々に生み出しているSHINO。風船のオブジェで埋め尽くす迫力満点の空間演出は、企業や官公庁主催のイベントにもひっぱりだこだという。

 それにしても、東大大学院博士課程を出て、なぜバルーンの世界に足を踏み入れたのだろうか。

「小・中学校のときにNHKでマジックショーを見て感銘を受けました。僕は憧れると自分でやってみたいと思う性格なんですよ。それで、高校の時はマジックを始めて、その流れで大学はジャグリング、バルーンと挑戦して」

 高校時代から老人ホームの敬老会や文化祭などでショーを行ううちに、彼はエンターテイメントの世界に引きずりこまれていったという。

「バルーンを始めたのは大学一年から。この風船は特殊なゴムでできていて、最初は口で膨らませることすらできなかった。膨らませるコツを覚えるのに、3週間くらいかかりましたね。それからも、教本を見ながら試行錯誤しました」

 その後、大学院に進学したSHINOは、在学中にバルーンツイストの全米大会コンテストに日本人として初めての出場を果たす。

「01年に興味本位で参加してみたのですが、その時に、憧れのアーティストであるパトリック・ブラウン氏のプライベートレッスンを受ける機会があり、非常に刺激を受けました。それで、来年も来よう、来るからには優勝しよう! と、練習を重ねました」

shino_sub03.jpg上:02年の全米大会優勝作品『3人の海
賊 treasure hunters』/下:05年の全米
大会入賞作品。うねうねしたサボテンに使
われるテクニックはSHINOのオリジナル
技法。本名の高志→Takashiから「Tak
Weave(Weaveは複数のバルーンを編み
こむこと)」という名前がついている。

 その甲斐あって、翌年には見事、全米王者に。その後もアメリカやヨーロッパの大会に次々参加し、優勝、入賞を繰り返した。

 とはいえ、日本ではバルーンアートはいまだに大道芸の域を超えない。それをなぜ、本職として選んだのだろうか。東大博士課程に進むほどの明才。相当なる決心が必要だったはずだ。

「僕は研究者になるつもりでした。ですが、大学院在住中に、網膜剥離と白内障で両目を手術したんですね。それで、パソコンのモニターを長く見つめることができなくなったんです。その手術で入院した際に、隣の病室に親子がいたんですが、1歳くらいの子どもの目が見えない状態で……、お母さんがとても沈んでいたんです。それでどうしても何かしてあげたくて、バルーンを一つ作ったんですよ。そしたら、暗かったお母さんが急に笑顔になって、すごく喜んでくれて……。その時に、バルーンってこんなにも人の気持ちをポジティブにさせるんだ、と衝撃を受けました。それまでは趣味としてやっていましたが、そこから意識が変わりましたね」

 大学院では、空間と人との心理について研究していたSHINO。研究にも未練はあったが、やはり人々に直接影響を与えることをしたいという気持ちが強かった。悩んだ末に、卒業後のビジネスに彼はバルーンを選んだ。

「周りの人たちは驚いていましたね(笑)。でも父親は、今後は研究者になってもなかなか難しいので、より社会に実益的なことをした方がいいと思う、と背中を押してくれました」

 現在では、企業イベント・パーティなど大規模な展示を手がけ、テレビや新聞などにも多数出演し、精力的に活動している。サイトやパンフレット等も自作し、営業にも余念がない。4月に福島で開催したバルーンアート展では、異例の1万人という来場者数を記録した。

「今までバルーンアートは、大道芸からの派生したイベントとして捉えられていて、イベント場所も、ショッピングモールや駐車場などに、一過性のものとして設置されることが多かった。ですが、バルーンもきちんとした環境でやればもっと質の高いものが見せられます。確立された一つの芸術分野であるということを、色々な方々に知っていただきたいです」

shino_sub01.jpgステージショーの様子

shino_sub01.jpg08年ゴールデンウィークに開催したバルーンアート展

 来年2月には都内の大ホールでイベントを開催する予定だ。その後、徐々に本格的なイベントを増やしていきたいという。

 では今後、バルーンを通じて何を表現していきたいのか。

「今、興味があるのが、情操教育です。幼稚園や保育園でやると子どもがとても喜ぶんですよ。ですが、それだけだと事業としては厳しいので、企業イベントなどを事業の柱にしつつ、教育関連のイベントをたくさんやりたい。バルーンを媒体として、たくさんの人たちと繋がっていきたいですね」

 風船という一見安っぽい素材も、SHINOの魔法の手にかかれば、それは芸術作品であり、人々の和をつむぎだすツールとなる。

 病院であの親子が救われたように、SHINOのバルーンが社会にどのような影響をおよぼすのか、今後楽しみである。

「お客さんがいないと調子が出ませんね」と言いながらも、この手際!
見事です。

●SHINO
しの。1976年、東京生まれ。東京大学在学中にバルーンアートを始め、日本人初の全米大会優勝などの実績を残す。バルーンツイスト日本大会「Japan Balloon Twisters Convention」では初代ディレクターとして大会立ち上げの中心的役割を果たし、国内最大規模のバルーンアートイベントJBANではスペシャルゲストとして特別企画を担当するなど、バルーンアート・シーンをリードし、多大な影響を与えている。
http://www.shino.biz/

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最終更新:2008/10/21 15:10
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