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市議会紛糾の問題作『コドモのコドモ』ついに公開!

kodomonokodomo.jpg『コドモのコドモ』/(C)2008「コドモのコドモ」製作委員会

 ネット上でちょっとした賛否を呼んでいる映画『コドモのコドモ』が、9月27日から公開される。原作は「神童」「マエストロ」などの人気漫画家さそうあきらの同名コミック。「神童」映画化でもメガホンを取った萩生田宏治監督が再びさそう作品の映画化に挑んだ。

 賛否を呼んでいる理由は、タイトルにある通り子供が子供を産む話だからだ。しかも、小学5年生の女の子がである。生理が始まったばかりの主人公の女の子が、幼馴染の同級生の男の子と”くっつけっこ”と称した遊びを、その行為の意味する本当のことを知らずにしてしまったゆえに、妊娠してしまう。確かにこれだけ聞くと驚きだ。実際にロケ地となった秋田県能代市では、廃校とはいえ実際の小学校の校舎を撮影に使わせるのはいかがなものかと反対意見も出たそうで、市議会で議論が交わされた。

 今年のアカデミー賞で脚本賞を受賞したアメリカ映画『JUNO/ジュノ』は16歳の女子高生の思わぬ妊娠を描いたもので、日本では「14才の母」という中学生が妊娠してしまうテレビドラマもあったが、「コドモのコドモ」の原作コミックはすでに2004年から連載されていたものだった。それが今、映画となったことで注目を浴びることになり、映画を紹介する記事などには反論のコメントが多数つけられているのを目にする。実際に小学生に妊娠や安産が可能かと言われれば疑問視せざるを得ないと思うし、映画はもちろん産婦人科医の助言などを受けているが、リアリティとファンタジーの境界線をかなり絶妙に取っているようだ(たとえば主演の女の子の身長では実際には産むことは難しいが、あまり大人びた子供に演じさせると生々しくなりすぎるので、あえてまだ子供らしさを残した子を選んだそうだ)。

 映画では(原作漫画でも)当然ながら直接的な性描写のシーンなどなく、映倫による年齢制限も一切ない。妊娠を知った主人公とそのクラスメイトたちは、自分たちの考えで頭がいっぱいで実のところ子供のことなどよく見えていない教師や保護者ら大人たちをよそに、自分たちの手で主人公の出産を助けようとする。製作サイドや監督は、そうした”子供たちの持つ力強さ”を描きたかったと語っている。大人たちは自分たちが決めつけた物事の範囲で、自分たちの価値観で全てを測ろうとするが、子供たちはその範疇を飛び出していく伸びやかな力を持っている。妊娠の是非を問うのではなく、妊娠・出産というのはそうしたテーマを語るための手段(と言い切ってしまってよいのか迷うが)として用いられているにすぎないとも取れる。

 とはいえ、やはり「小学生が妊娠する」という設定には眉をひそめてしまう人がいても不思議ではないが、業界内ではこの映画に対して批判的な声は聞こえてこないし、逆に全国のミニシアター系映画館の館主たちが構成する”シネマ・シンジケート”でも、「全国の映画館主が選ぶこだわりの1本」にも選ばれ、映画館側からも”観客に見てほしい映画”として評価を得ている。批判するにせよ、賛同するにせよ、まずは見てから論じるのが筋だろう。命とはなにか? 性教育・性の低年齢化の問題のありかたは? こうしたテーマを映画が描いていいのか? では、映画とは何か? 何を描くべきなのか? 映画に求めるものとは? 様々な議論が交わすことができそうで、そうした意味では、無難で語ることも見つからないような映画が大勢を占める日本映画界にあって、稀有な存在の1本と言えるかもしれない。映画を見た人とそれぞれ意見を交わしてみれば、その人との価値観の違いが判別できるかもしれない。
eiga.com編集部・浅香義明)

作品の詳細は以下より。
『コドモのコドモ』
『JUNO/ジュノ』

JUNO/ジュノ <特別編>

『JUNO/ジュノ』はアカデミー脚本賞を受賞した。

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最終更新:2008/09/27 11:00
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