世界の映画賞を賑わせた日本映画の俊作2本が公開!
#映画 #北野武 #邦画
8月下旬から9月頭にかけて、世界をにぎわせた日本映画のニュースが多く耳に届いたと思う。そのうちの2本が立て続けに公開される。
まず、現在公開中の『おくりびと』は、第32回モントリオール世界映画祭(8月21日~9月1日)でグランプリを獲得。同映画祭では2006年にも奥田瑛二監督作『長い散歩』がグランプリほか3冠を達成しており、2年ぶりの日本映画の受賞となった。
映画は、本木雅弘が扮するチェロ奏者が所属オーケストラの解散によって職を失い、妻(広末涼子)とともに故郷山形に帰り、ふとしたことで遺体を棺に収める”納棺師”として働くことになる物語。最初は思わぬ仕事に戸惑い、眉をしかめることもあった主人公が、死者を手厚く送り出す納棺の儀式を通して、成長していく姿を描く。監督は『壬生義士伝』で日本アカデミー賞を受賞した滝田洋二郎、脚本は映画脚本は初めてとなる人気放送作家の小山薫堂、音楽は宮崎駿作品でおなじみの久石譲。
納棺師という職業にスポットを当てたユニークさはあるが、奇をてらわず。『たそがれ清兵衛』など山田洋次監督の藤沢周平文学3部作でもおなじみの山形県庄内地方のどこか懐かしい日本の四季の風景と、久石譲による叙情的な旋律にのって描かれる物語は、”納棺”を通して日本独自の死生観を描き、誰もが温かみを感じることができる仕上がり。日本特有の死生観を描いた作品である点も、日本人の琴線に触れることは請け合い。
また、世界3大映画祭のひとつ、第65回ベネチア国際映画祭(8月27日~9月6日)のコンペティション部門に出品されて話題となった北野武監督の最新作『アキレスと亀』も今週末9月20日より公開。
世間からまったく評価されない画家・真知寿(北野)と、彼を一心に支え続ける妻(樋口可南子)の夫婦愛を描く物語で、近年『TAKESHIS’』や『監督・ばんざい!』といった難解な映画で観客を置き去りにしつつあった北野監督が、「映画がヒットしなくて悩んだ」ということから、売れない画家である主人公に自身を投影。しかし、いかに世間から評価されなくとも「芸術は生み出し続けることが大切」という主張も込められているとか。しかし、見てみると、主人公・真知寿はやや共感を覚えにくい人物ではあるが、そこは一筋縄ではいかない北野作品ということで。
受賞こそしなかったものの、世界中から十数本しか選ばれないベネチア映画祭のコンペティション部門に出品されたというだけで、すでに大きな評価は得られている本作も、『おくりびと』ともども楽しんでみてはいかが。
(eiga.com編集部・浅香義明)
『TAKESHIS’』までの全12作品、12枚組BOX。
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