深夜の”放送禁止”番組 人気の秘密は新感覚ホラーにあり!?(後編)
#テレビ #映画 #邦画
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──第1回(2003年4月1日放送)を作ってみてどうでしたか?
【長】 はっきり言って、あまり反響はなかったんです。すでに出来上がっていた脚本に「裏の真実」を後付けで付け足したりしたしたのが、上手くいかなかったという部分もあって。ただ、僕とプロデューサー陣がもう一度やりたいと思って、続編を作ることことになりました、で、第1回の反省も踏まえて作った2回目は反響もありましたし、自分もスタッフも手ごたえを感じられたので、1年に1回程、不定期で放送するようになりました。
──第6回「デスリミテッド」(08年6月23日放送)は、「やらせ」によって報道被害を犯したとされるジャーナリストが制裁を受ける、というストーリーでした。これはテレビ番組の制作における「やらせ」問題への批判が込められているのかな、とも思いました。
【長】 「”やらせ”と”演出”の境界線はどこにあるのか?」という問題は、絶えず考えていますね。「実際の取材対象者の意図を無視して番組を作ってしまうことが、どれだけその取材対象者傷付けてしまうか」ということも、身に染みてわかっているつもりです。というのも、実は僕自身が、取材対象者としてドキュメンタリー番組に出たことがあるんです。それが実際に放送されたものを観た際、「ちょっとここは違うな」という演出があったんです。「やらせ」とまでは言えないものだったんですが。でも、こうした些細な行き違いが、報道被害と呼ばれる大きな社会問題にも繋がっていく。制作側としては、襟を正していかなくては、と考えています。
──『放送禁止』の映像は、偶然番組を観た場合は言わずもがな、フィクションだとわかって観ていても、常に緊張感が画面に漂っていて怖いですよね?
【長】 映像がノンフィクションの質感だからですね。でも、そもそもテレビに日々氾濫している、人の死を伝えるニュース映像の数々って、実はある意味において、すべてが怖いものだと思うんです。例えば、事故現場を空撮して、ブルーシートの上に被害者の名前のテロップがかぶさっているニュース映像。死体そのものが映っていなくても、十分怖いんです。
あるいは、映画『リング』の「呪いのビデオ」の中でほっかむりをして指を差している男が一瞬映るシーンがあります。原作版にはにそういった描写は一切ないんですが、異常な不気味さがある。あれはある事件の実況見分の様子を模したものなんだそうです。それだけだとなんの意味もない映像でも、実際に起こった恐ろしい事件というものが背景にあって、それをみんなが「すごくイヤなものだ」と感じている。『放送禁止』では、日々刷り込まれているからこそ忘れがちな、そうしたリアルな恐怖の感覚を喚起させたかったんです。
──『放送禁止 劇場版 密着68日 復讐執行人』についてお話頂けますか?
【長】 テレビやDVDと違い、映画館では映像を巻き戻したり一時停止したりといったことが出来ませんし、「偶然深夜に見かけたドキュメンタリー番組」という見方も当然されないので、作り方をガラッと変えました。ちなみに、遊びカットでテレビ版の第1~6回までに関する映像がチラッと出てきます。何が出てくるかはお楽しみということで。テーマは、「復讐」です。「目には目を」という人間が本来持っている残虐性を、現行の法制度がうまくコントロール出来ているのか、という問題を描いています。
──最後に、作り手から見た「今のテレビ業界の問題点」について聞かせて下さい。
【長】 視聴者からのクレームに、制作側が弱くなっているという傾向はありますね。ただ、よく言われる「視聴者がダメになっている」「視聴者ののレベルが落ちている」という意見は、欺瞞じゃないかな。視聴率というのは、日本という共同体が持つ思想の表れの一種なんですから、そこに受け入れられなかったとすれば、テレビ番組の作り手としては終わりだと思うんです。『放送禁止』で大きな反響をいただいたり、そのDVD版を多くの方々にご購入いただいたりして、まだまだ世の中捨てたもんじゃないな、と思いましたしね(笑)。僕は視聴者を信じています。
(取材・文=岡島紳士)
●『放送禁止 劇場版 密着68日 復讐執行人』
料金を払って復讐を代行する闇サイト「復讐専門サイト”シエロ”」の管理者である仮面の女「七川ノラム」を、取材スタッフが追う。「テレビ版5本分くらいのアイディアを詰め込んでいるので、内容はかなり濃密です」(長江氏)とのこと。
池袋シネマ・ロサほかにて、全国公開中
監督/長江俊和 配給/ジョリー・ロジャー、ポニーキャニオン
公式サイト<http://www.housoukinshi-movie.com>
●長江俊和
ながえ・としかず 1966年、大阪府生まれ。演出家、映像監督。『富豪刑事』(テレビ朝日)、『MMR』『木曜の怪談 妖怪新聞』(ともにフジテレビ)などのドラマや、バラエティ『奇跡体験!アンビリバボー』(同)など、多数の番組を手がけている。
いや、本当に怖いって。
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