ブリーダーから店頭まで……ペット生体販売に潜む闇
#動物 #ペット
「トップブリーダー推薦!」──ペットショップをのぞいてみると、さまざまなグッズのパッケージに、そんな文句が躍っている。ブリーダーとは本来は、動物の種の保存や改良を目的に、繁殖を行う人のことを指す。日本でも、2005年に改正され、06年に施行された改正動物愛護法によって、犬や猫を繁殖して販売する者に対し、動物取扱責任者の選任と、動物取扱業者登録が義務づけられるようになり、ブリーダーの責務は確立されたかのように見える。
しかし実際のところ、現在の日本では、犬のブリーディングの目的は若干異なっている。
犬の血統書を発行するジャパンケネルクラブによれば、本来は「犬種の向上と改良を目的として行われるべきであり、決して営利目的で行っていい行為ではない」とされているが、実際には消費者への直接販売や、競り市を通じてペットショップへ卸すなどして、子犬を商品として繁殖・飼育している”繁殖業者”が大半である。環境省が01年に行った調査によれば、ブリーダーなどの生産者の元で生まれたと思われる推定年間総生産数は約9万7800匹、このうち、生産者からペットショップや競り市に回るのが約8万8900匹と、実に90%以上を占めている。最終的に消費者の手元に届いたのは、約7万7000匹。生まれた数の約80%である。残りの20%の子犬たちは、どこへ行ってしまったのだろうか?
「流通の過程で病死してしまう場合もありますが、先天的に障害を持って生まれてきた子犬や、競り市で売れ残った子犬は、それぞれブリーダーや競り市業者などが処分しているのです。保健所に持ち込んだり、獣医師に頼んで安楽死させたり、もっとひどいと、獣医師免許もないのに業者が自分の手で薬殺する場合もあります。あるいは、別の業者が買い取って、実験動物として大学などに転売される。ペットショップで売れ残って大きくなりすぎた子犬も同様です」(地球生物会議ALIVE代表・野上ふさ子さん)
先天性障害を持つ子犬や病弱な子犬など、商品として売れない個体を業者が処分することは”淘汰”と呼ばれるが、現行法では、飼育されている犬は個人の財産と見なされるため、法にのっとって処分することは違法行為には当たらない。しかし、そもそもその障害や病気の原因が、ブリーダーによる過剰な繁殖や、劣悪な飼育環境にあることも少なくないという。
「過度のブリーディングを行っている人は、1人か2人で100匹以上の犬を飼育しています。でも、普通に考えたら1人の人間が一度に飼える犬の数なんて、2~3匹がいいところ。必然的に、散歩にも連れて行けず、犬舎の掃除もまともに行われない。そんなところで飼われていれば、病気になるのは当然です。また、繁殖を急ぎすぎるために近親交配が進み、障害を持った個体が生まれやすくなっているケースも多いのです」(同)
そもそもヨーロッパなどでは、競り市やペットショップといった流通経路を通じた生体販売はほとんど行われない。ある犬種を飼いたい人は、それを専門に代々ブリーディングを行っている人の元へ直接連絡をし、子犬が生まれるのを待つ。
「日本のように、繁殖状況や、子犬が生まれた環境を飼い主が全く知らないというのは問題が起きやすい形態です。また、犬を飼い始めるときに、子犬にばかり人気が集中するのも、欧米ではあまり見られません。アメリカなどでは『シェルター』と呼ばれる捨て犬の一時保護施設から、成長した犬を譲り受けて飼い始める人が多い。日本でもようやく、保健所に保護された犬を一般に譲渡する流れが出てきていますが、まだまだ浸透していないですね」(同)
ペットショップで「可愛い可愛い」と買われてゆく子犬や子猫。だが、その後ろには、愛情を受けるチャンスもなく、死んでいった命がある。昨年1年間に、保健所で処分された犬の数は11万7969匹だが、そのうち約4万4250匹が子犬。愛犬家、愛猫家を自称するなら、動物を買う前に一考してほしいものだ。
(松井哲郎/「サイゾー」9月号より)
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