大作だけが映画じゃない! 今年も豊作“ミニシアター”のススメ
#海外 #映画 #邦画
ようやく秋の気配を感じる今日この頃。映画業界では8月30日に『20世紀少年』『ハンコック』という洋邦の最後の大作が封切られ、市場はアート系、ラブストーリー映画などが多く出回る秋興行へと移行していく。
しかし、夏は大作ばかりというわけでもない。その陰で健闘するいわゆるミニシアター系の映画も数多く存在する。脂っこい料理ばかりでは胃もたれを起こすように、派手なアクション映画ばかりを見ていると、たまには気分を変えたくなるもの。今回はこの夏に公開され、現在も上映中の優れたミニシアター系の作品をいくつか紹介する。
まずは、『顔』『KT』といった社会派映画を得意とする阪本順治監督が、『血と骨』などで知られる梁石日の同名小説を映画化した『闇の子供たち』。タイで行われている臓器売買や児童買春を真正面から描いた骨太サスペンスドラマで、キャストは江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、佐藤浩市とスターがズラリ。幼児売春のシーンなど直接的な描写も臆することなく描いたり、対岸の火事と思われないよう、決して日本人も関係ない話ではないというメッセージも込められている。
昨今の日本映画といえば、TV局が主導で作られたマーケティング重視の人気ドラマや漫画の映画化作品ばかりが目立つが、こうした知られざる真実を描く骨太な映画も存在する(ちなみに、この映画の製作にTV局は絡んでいない)。『闇の子供たち』は今年の価値ある一本といえる。
製作委員会
また、蒼井優主演の『百万円と苦虫女』も、少ない劇場数ながら評価・興行ともなかなか健闘している。監督は『さくらん』の脚本家として知られ、前作『赤い文化住宅の初子』では各方面からの絶賛を浴びた女性監督タナダユキ。ふとした事情で家にいられなくなった主人公の鈴子(蒼井)が、100万円貯まるごとに住む土地を変えて転々としていく様子が描かれる、少しほろ苦い青春ドラマ。人との関わりを避けて生きようとする鈴子だが、結局はどこへ行こうと人が生きていくには人と関わらねばならず、なにかと生き難いと感じる現代人には共感しやすいのでは。ちなみに、ドラマにCMに引っ張りだこの人気者の蒼井優だが、意外にも映画での単独主演は3年ぶり。すでに公開されてから1カ月以上がたっているので、まだ未見の人はお見逃しなく。
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邦画を2本紹介したが、洋画ファンには『アクロス・ザ・ユニバース』がオススメ。ビートルズの楽曲33曲を使ったオリジナルミュージカルで、監督は舞台「ライオンキング」の演出家として有名なジュリー・テイモア。物語はビートルズが活躍した60年代、イギリスからアメリカに渡った青年ジュード(ジム・スタージェス)と、そこで出会った少女ルーシー(エヴァン・レイチェル・ウッド)のラブストーリー。“ジュード”と“ルーシー”というだけで、少しビートルズをかじったことがある人なら、どの曲が流れるか想像できるはず。なぜ今ビートルズなのか? という疑問もなくはないが、だからこそ彼らの楽曲のもつ普遍性や時代を超える魅力を再確認できる1本で、独創的な映像とあいまって興味深く見られるはずだ。
(eiga.com編集部・浅香義明)
作品の詳細は以下より。
『闇の子供たち』
『百万円と苦虫女』
『アクロス・ザ・ユニバース』
女流監督タナダユキの出世作。
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