“防衛フィクサー”逮捕も政界ルートは着手せず!
#政治 #スキャンダル #防衛省
検察ウォッチャーを自任してきた本誌にとって、これほどヤキモキさせられる事件はない。疑惑の防衛商社「山田洋行」など数社から3年間にわたってコンサルタント料2億3000万円を受け取りながら申告せず、7400万円を脱税した疑いで、あの防衛フィクサー・秋山直紀が7月下旬に逮捕された。「ついに」という言葉が口をついて出るほど待たされた瞬間だった。
本誌がこの山田洋行に着目し、東京地検特捜部がひそかに同社幹部たちの事情聴取を始めた、といち早く伝えたのは1年も前の昨年9月。当時、記事の中で「政界ルートの最終ターゲットは『原爆はしょうがない』発言で辞めた久間章生前防衛相だ。特捜部は守屋(武昌元防衛事務次官)を叩いて、久間逮捕も目指す心づもりなんだ」と予告しておいた。その久間の代理人として山田洋行から秘密資金を受け取っていたのが秋山だったことから、今回の逮捕を受けて新聞・テレビは「ついに政界ルートがはじけた」とはしゃぎだし、久間を直撃取材して疑惑をぶつけるマスコミも相次いだ。
「確かに山田洋行は、久間の政治力を頼みに、秋山を窓口にしてさまざまな要求をしている。たとえば、福岡県の苅田港に沈んだ旧軍の毒ガス弾処理事業をうまく受注できるよう依頼したり、同社から独立してライバルになった新興企業『日本ミライズ』に次期輸送機CXのエンジン納入商権を取られないよう秋山を通じて久間に働きかけたり。秋山が受け取った秘密のコンサルタント料のうち、1億円以上は山田洋行の提供資金。その資金が、はたして久間にも渡っているかどうかに関心が向くのも無理はない」(社会部デスク)
だが、本当にこの事件は政界ルートへと波及するのか。本誌は、「決して政界ルートには発展しない」と断言する。その確かな理由がある。
実は、特捜部はすでに5月下旬に一度秋山の逮捕状を請求しようとしたものの、最高検察庁から物言いがついて見送ったいきさつがある。特捜部はこのとき、3000万円の脱税額で秋山を逮捕しようと試みた。任意捜査ではなく逮捕するには、脱税額が1億円を突破することが要件といわれてきたのだから、特捜部は無理を通そうとしたわけだ。当時のやりとりを再現しよう。
最高検 3000万円では額が低すぎる。別件逮捕か。秋山を叩いて政治家を摘発できる決定打はあるのか。
特捜部 確かな立件情報はない。
最高検 ではダメだ。さらに脱税額を積み上げないと逮捕できない。
反対したのは最高検刑事部。そのトップである刑事部長を務め、特捜部にブレーキをかけたのは、7月1日付で東京地検検事正に就いた岩村修二なのだ。岩村は、特捜部が脱税額を倍額の7000万円台まで積み上げたことを良しとし、政界ルートに及ばないのを承知でゴーサインを出した。
しかも、秋山と政界ルートをワンセットでやらせろと迫った特捜部長の八木宏幸には逮捕を許さず、7月14日付で八木と交代したばかりの右も左もわからない佐久間達哉に、淡々と脱税事件を立件させたのだ。実は、岩村と佐久間は言い得ぬ関係にある。
「10年前、経営破たんした旧日本長期信用銀行の粉飾決算事件で元頭取らを逮捕したのが、特捜部副部長だった岩村。戦後史上最大のこの粉飾決算を主任検事として解明したのが佐久間で、『将来の特捜部を背負うのは佐久間しかいない』と岩村は当時から絶賛だったんだ」(前出・社会部デスク)
この2人が手がけた長銀事件は“国策捜査”の走りといわれ、しかも7月18日、元頭取ら3人に最高裁は無罪を言い渡した。
「体制側によって決められた答え通りの逮捕劇を演じるのが、この2人の特徴。しかも、長銀事件で無罪を出してしまったことで、今後あらゆる事件を小さくまとめようとするだろう。その第1弾が政界ルートとは一切関係のないただの秋山脱税事件。
“最後の捜査派検事”と呼ばれた八木のような政界狙いの大胆な捜査など、もはや望むべくもない」と司法デスク。かたくなな政界ルートへの扉をこじ開けてさらに突き進む捜査など、今の特捜部には無理な相談なのだ。
(編集部/「サイゾー」9月号より)
とっかかりに。
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