宮崎『ポニョ』・押井『スカイ・クロラ』巨匠アニメが続々ベネチアへ
#映画 #アニメ
日本アニメーション界2大巨匠の新作が揃って公開中だ。ひとつはすでに大ヒットを記録中の宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』。もう一方は先週末2日から公開された押井守監督の『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』。この2本、どちらも今月27日から開催の第65回ベネチア国際映画祭で、最高賞の金獅子賞の対象となるコンペティション部門に出品が決定している。ちなみに北野武監督の『アキレスと亀』(9月20日公開)も同映画祭コンペ部門への出品が決定しており、コンペ部門全19作品中3作品が日本映画で、うち2作品がアニメーション映画という状況になっている。
『ポニョ』/(C)2008二馬力・GNDHDDT
アニメーションが“日本が世界に誇る文化”と取り沙汰されるようになって久しいが、宮崎・押井がその立役者として活躍してきたことは誰もが認めるところ(もちろん彼らだけではないが)。今年のベネチア映画祭の状況を見ても、海外からの彼らの作品に対する感心の高さは相変わらずのようだ。ちなみに押井監督は『イノセンス』がカンヌ映画祭のコンペ部門に出品されたこともあり、世界3大映画祭(ベネチア、カンヌ、ベルリン)のうち2つの映画祭のコンペ部門に出品された史上初のアニメーション監督である。
『崖の上のポニョ』はご存知のとおり、人間になりたいと願うさかなの子・ポニョと、5歳の人間の男の子・宗介の物語。子どもたちの純でまっすぐな気持ちを臆面もなく描き、シンプルだが躍動する画面に“アニメーション(=動く絵)”としての面白さも加わった快作。
『スカイ・クロラ』は、人気作家・森博嗣の同名小説の映画化。現実と似た架空の世界で、思春期の姿のまま成長を止め、殺されない限りは永遠に生き続ける“キルドレ”と呼ばれる青年たちが、平和維持のために大人たちによって作り出された“ショーとしての戦争”に戦闘機パイロットとして繰り出していく。飽食で物質に満たされた現代社会で、生きる意味を見失ったかのように見える若者たちに、永遠に変化のない日々を繰り返すキルドレたちの姿を重ね、“生きること”の意味を問いただす。
宮崎監督は『ポニョ』で、キャッチコピーにあるように「生まれてきてよかった」といえる物語を紡ぎ、押井監督は「もう一度生まれてきたいと思う?」というキャッチコピーの『スカイ・クロラ』を作った。2巨頭が全く同時期に“生きる”ことをテーマにした作品を作るというのも、なにか運命めいたものがあって面白いが、宮崎・押井といえば、1984年にともに現在のキャリアの一大起点ともいえる『風の谷のナウシカ』と『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を発表。2004年にも『ハウルの動く城』と『イノセンス』が同年公開で、そして今年の2作はともに2人が近年培ってきた作風を変えたという意味で新たな転機になりそうな作品。そんな不思議な偶然もある。
普段は映画やアニメを見なくても、宮崎作品だけは見るという人も少なくないほど国民的存在の宮崎アニメに対し、コアなアニメファン、映画ファンに支持される押井作品という印象があるが、どちらかを(あるいは両方を)食わず嫌いしている人がいたとするなら、今は2人の作品を同時に見られる良いチャンス。安易なTVドラマの映画化作品ばかりが蔓延している日本映画界にあって、世界にも通じる監督自身の作家性や、実写を超える表現力・技術力を備える彼らの作品を体験してほしい。
(eiga.com編集部)
作品の詳細は以下より。
『崖の上のポニョ』
『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』
『アキレスと亀』
『ポニョ』が宮崎版「人魚姫」なら、こちらはギリアム版「アリス」です。
【関連記事】 『ダークナイト』筆頭に“記録的”アメコミ映画が続々上陸!
【関連記事】 日本公開は奇跡!? 井口昇のモンダイ映画がついに解禁!
【関連記事】 『ポニョ』は中ヒット? 歴代人気作品と徹底比較分析!
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事