ザルな動物愛護法では“犬鍋”は取り締まれない!?
#動物 #ペット #犬
「ポシンタン(補身湯)」という韓国料理がある。いわゆる“犬鍋”と呼ばれるもので、日本でも東京・大久保界隈などのコリアンタウンで提供されている。筆者も食したことがあるが、これがなかなかの美味である。
しかし、ふと考えてみると、わが国には「動物愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)という動物の愛護推奨、虐待防止に関する法律がある。はたして犬鍋は、それにひっかからないのだろうか? そこで、同法を管轄する環境省に問い合わせてみると……。
「同法は、動物の虐待の防止などを定め、動物を愛護する気風を招来することなどを目的にしていますが、とくに犬食禁止というのは同法には規定がありません」(環境省動物愛護室)という回答! ということは犬、食べてもいいんですかぁ!?
この動物愛護管理法、1973年に制定されて以来、99年と2005年に2度改正されており、一昨年の改正では動物取扱業の登録制、罰則の強化などが盛り込まれている。ただし、この法律、さまざまな問題点を指摘されていて、“ザル法”という批判の声が数多く上がっている。
「“社会通念に照らして”とか、あいまいな表現が多いのです。そのためペット関連トラブルでも、法律的に解決できないことが多い。たとえば、“みだりに”餌をあげないと動物虐待に当たるのですが、“みだりに”というのがどの程度なのか、具体的な基準が明確にない。そういう条文が少なくありません」(ペット問題に詳しい行政書士・福本健一氏)
福本氏の指摘の通り、同法の条文に目を通してみると、“社会通念上”とか“できる限り”などの文言が、やけに目立つ。
「そういうご指摘も受けますし、警察当局から『これは虐待に当たるのか?』という問い合わせも頻繁にあります。ただしその反面、ペットの位置づけは社会背景や時代とともに変化しますから、あまりに明確な基準を定めてしまうと、対応できなくなってしまうというジレンマがあります」(環境省)
ペットの数は年々増加の一途を辿っており、現在犬と猫を中心に約2550万匹が飼われ、昔のような番犬や放し飼いの猫という存在そのものが消えつつある。すなわち、「ペット=愛玩動物」から「家族の一員」に格上げされたのだ。
そういった状況を受けての同法改正という流れだったはずだが、フタを開けてみれば、改正の内容を疑問視する向きもある。
「06年改正前に、売買トラブルが多いペットのインターネット販売を禁止するよう多くの動物関連団体が活動しましたが、それも盛り込まれませんでした。また所有者は“適正に保管すること”とありますが、“適正な保管”の中身が具体的に書かれていないため、リードなしで犬を散歩させても取り締まれない。そのような犬が人を噛んだりするトラブルも、いまだに絶えません」(福本氏)
これに対し行政側は「同法は05年改正時に、施行5年後をめどに見直しをすることが盛り込まれています。インターネット売買の問題や、社会におけるペットの位置づけも含めて、そこで改めて議論されることになります。動物と人間との共生を図るという法理念を軸により押し進めていくのではないでしょうか」(環境省)という。
犬鍋というと、「野蛮」「かわいそう」といった意見をやたら耳にするが、そんな感情に流されるよりも、犬や猫が年間約30万匹も殺処分されているという現実を直視し、飼い主や犬・猫を愛する人間たちが動物愛護管理法をしっかり理解した上で、さらなる法整備を進めていくことのほうが先決ではないだろうか?
(文・賀谷徹/「サイゾー」9月号より)
ねこ鍋は可。
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