株主総会で露呈したフジテレビの迷走と失策
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6月27日、東京・台場のホテル・グランパシフィック LE DAIBAにおいて、フジテレビ株主総会が行われた。フジテレビの2008年3月期の連結売上高は、前期比1.2%減収の5754億8400万円。また、営業利益に関しては、民放キー5局の中でワーストの減収幅となる、前期比42.4%減益の243億7200万円という惨たんたる結果となった。
「総会当日、同社の放漫経営を非難する株主らによる団体が、会場最寄りのゆりかもめ台場駅周辺で宣伝活動を行ったのですが、フジテレビが駅職員らを動員するなどして鎮圧。また、20名ほどの湾岸署の警察官や救急車が駆けつけるなど、一時現場は騒然となりました」(民放局記者)
“ライブドアによる買収騒動”や“あるある捏造事件”など、問題が連発した近年の同社株主総会では、ピリピリムードがもはや恒例。だが、今年は大きな変化が見られたという。
「例年、会場周辺にはスーツ姿のコワモテのガードマンが100名程度配置され、不審者を尾行するなど、物々しい雰囲気に包まれます。しかし、今年はその数が減少。代わりに周辺の警備・案内役には、制服姿の初老の警備員やフジテレビの若手社員が多数駆り出されていました」(同)
その理由について、フジテレビ関係者はこのように説明する。
「同社では、今年初頭から本社ビルおよび湾岸スタジオの警備員の数も減らされましたが、これらがコスト削減の一環であることは明らか。総会の警備体制の変化も、まさに厳しい台所事情の表れですよ」
同社のコスト削減策は、これまで聖域だった番組制作費にも及んでいる。
「既報の通り、出演者のギャラと取材費がかさむ『新報道プレミアA』『ハッケン!!』が打ち切りになったのも制作費削減の余波ですが、株主総会の場においても太田英昭専務取締役は、08年1月~3月期の番組制作費について前期比10%カットしたと明言。さらに、継続的な予算の見直しを示唆しました。その一方で、豊田皓代表取締役社長ら経営陣たちは、口々に経営再建のポイントとして『コンテンツ力の強化』を主張しています。しかし、1本あたりの制作費が4500~5000万円だった『プレミアA』の後番組『サキヨミ』の制作費は、『プレミア』の3分の1。番組の質を高める計画の裏で、制作費が削られるという矛盾こそが低迷の要因だ、という声も聞こえてきます」(放送アナリスト)
さらに、同社の迷走ぶりは株価にも影響している。昨年7月に25万円近くあった株価は、現在(7月4日現在)では16万円台にまでに下落した。
「総会でも、株主から株価について質問が出ていました。これに対し、経営陣は株主優待制度の充実などにより安定株主の確保を図ると明言。しかし、彼らが優待制度の目玉として挙げたのは、女子アナグッズなどの提供のみ(苦笑)。経営陣の無能ぶりに呆れ果て、途中退席する株主もいましたよ」(前出・関係者)
会長と豊田皓社長(67期決算報告書より)
だが、そんな役員たち(取締役20名および監査役5名)に対して、今年も総額6060万円の役員賞与が支払われることが決まった。また、今回の総会の議案で注目を集めたのが「持株会社体制への移行」問題。
「同社とそのグループ会社は、今年10月1日に株式会社フジ・メディア・ホールディングス傘下に移行。当然総会でも、その承認が求められました。表向きの理由として、同社は変革期のメディア環境におけるグループ支配の適正化を図り、経営の意思決定の迅速化を目指すためと表明。が、実際のところ、ホールディングスの役員には同社の現役員がそっくりそのまま留任し、さらに新設分割するテレビ事業会社の役員も全員が兼務するなど、真の狙いは、実質的にフジを牛耳る日枝久代表取締役会長の長期独裁体制への布石とされています」(前出・放送アナリスト)
結局、業績悪化・株価低迷の打開策が見えないまま幕を閉じた株主総会。参加した一般株主は、「もちろん、日枝会長の退任を要求する声も上がり、経営的に大きな曲がり角に立たされていることも実感した」という。
同社の混迷を象徴するかのように、総会当日、同社社員がタクシー料金強盗により逮捕されるというニュースが報じられた。果たして、“視聴率競争は独走、経営は悪化の一途”の民放の雄は、現在の経営陣で再建を果たすことができるのだろうか?
(大崎量平/「サイゾー」8月号より)
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