「俺たちは“オリジナル”!」 前田日明×窪塚洋介(後編)
#対談 #前田日明 #窪塚洋介
前田 言うことも変わらないしね。かえってね、すごく調子いいときに、キツいこと言ってきて、「コイツ鬱陶しいな」と思ってたヤツが案外、親身に思ってくれていたりするもんだよ。
窪塚 そういう縁を大切にしていけば、ゴールに繋がるんだと今は思います。昔は、どっかに向かっていって、たどり着くみたいな感覚があったんですよ。でも、いざ、求めた場所にいってみたら、正直、そこには何もなかった。それで一気にやる気がなくなったときに、落っこちたんです。で、やる気もカネもなくなって、ケガして、仲間も減って……。落ちる前は怖いものなんか何もなかったけど、落ちた後、いろんなものが怖くなりました。
前田 でもあれはねぇ、窪塚君が役者をやっていく上で、すごくいい経験だったと思うよ。死ぬか生きるかの瀬戸際から生還するなんて、普通は経験できないからね。演技に必ず生きると思うよ。俺も独身時代は死ぬのなんか怖くなかったけど、結婚して子どもができてからは、健康面での不安が絶えない。でも運命は変えられても、いつ死ぬかという宿命は変えられない。決まったスパンの中でどうがんばって、自分の感情をどう刻むか。それが人生だよ。
ボブ・マーリィで繋がる
男たちの「点と線」
窪塚 家族や本当の仲間、大事なものがわかった今、余計に怖いことも増えたけど、だからこそ「俺がわかる範囲のことは言っていかなきゃ」と強く思いますね。自分の世代でどうにかできなくても、次の命、子どもの世代にはもっとマシな世の中になっていてほしいから、俺は今、「卍 LINE(マンジライン)」という名義で音楽活動もやってるんです。ジャンルはレゲエ。レゲエはレベル・ミュージックと言われ、世の中に反抗していったり、ジャマイカだと、それは教育だったりする音楽なんですよ。
前田 レゲエかぁ。そういえば俺、イギリスに遠征してた23歳の頃、練習仲間のジャマイカ人に、ボブ・マーリィのラストコンサートに無理やり連れて行かれたことがあるよ。
窪塚 ええええええ、見に行ったんですか? うぉおおお!
前田 なんか変な髪型したオッサンが歌ってるなぁと思ったけど(笑)、でも音楽はすごく良かった。彼によって黒人が勇気づけられているんだってね。
窪塚 そういう音楽だから始めたし、あと俺らの世代って、自分の国や地元にリスペクトがなかったり、どうでもいいよ、っていう最底辺をちょっと過ぎたあたりだと思うんですよ。だから逆にリバウンドしてて、自分のアイデンティティを意識するヤツがすごい増えた世代だと思ってて。それこそ「侍」だとか「大和魂」という言葉に反応できる若いヤツも多くなっているはずだから、それをキープしていくために、俺は毎週末、ライブで歌い続けてるんです。
前田 すごく良いことだね。アイデンティティっていうのは、自分の感情経験の連鎖。自分の中で沸き起こった感情に対して、どう自分で決着をつけるか、という繰り返しだからね。つまり自分自身との付き合いが大事で、自分に向き合ってさえいれば、仮にちょっと頭がおかしくなっても、“上手に狂える”んだよ。またそれが楽しいんだ。俺だっていろいろ隠れてやってきたし。首都高ルーレット族っているでしょ? 実は俺、あれの初代なんだよ(笑)。
窪塚 (爆笑)。めっちゃ秘話じゃないですか!!
前田 さすがに最近はやってないけどね(笑)。今は子どもを一人前に育てたいと思うから、教育や政治に関心が向きつつあるよ。腐った政治家連中は許せない。特に小泉(純一郎)みたいな売国奴は。
窪塚 あれは完全、売国奴。俺も政治には興味がありますよ。「うさんくせえな」という意味で。だからこそ音楽や芸術という表現活動を通じて、そういう不正や欺瞞をもっと知らしめていきたいと思う。そうすればいつかは「隣のヤツと仲良くなれたら、世界中が平和になる」っていう時代がやってくるのかな、と思うんですよね。
前田 今の世の中、絶望してるヤツがいっぱいいるじゃない? だからこそ窪塚君みたいな感覚的に優れた才能の持ち主が先頭に立ち、「諦めるな!」ってことを訴え続けてほしいね。
窪塚 がんばります!
前田 もうすぐ30歳だろ? 30代は時間の経過が20代の10倍早いぞ。だから駆け抜けるしかないな。
窪塚 駆け抜けます! 今日は会えて本当に良かったです。パワーをもらいました。情熱の炎がまた燃えてきましたよ。
前田 しんどいことがあったときも、とりあえず駆け出すんだよ。走りながら考えるんだよ。走りながら。止まって考えるよりも走りながら考えると、落とし穴もぬかるみもすべて見えてくるもんだよ。座して考えても、間抜けなことに景色が見えないもんだから、よく転ぶ。だから駆け抜けないとね。
窪塚 走り続けりゃいいんですね。
前田 そう。それでがんばってナンバーワンになって、デカい家に住んで、いいクルマ乗って、デカいモータークルーザー買ったら、俺にも運転させてくれよ。君ならそれぐらいチョロいもんだよ。
窪塚 そこがオチですか!(笑)
(構成/岡林敬太)
くぼづか・ようすけ
1979年、神奈川県生まれ。95年、ドラマ『金田一少年の事件簿』(日本テレビ)でデビュー。その後、『池袋ウエストゲートパーク』(TBS)や『GO』『凶気の桜』など数多くのドラマ・映画に出演し、人気を不動のものにする。映画『まぼろしの邪馬台国』『ICHI』が今秋公開予定。俳優業と並行して、レゲエ・Dee-Jay「卍LINE」としても年間100本近いライブをこなし、6月にはデビューアルバムをリリースした。
まえだ・あきら
1959年、大阪府生まれ。77年、新日本プロレス入門。UWF旗揚げを経て、リングスを設立。今年、「不良」を対象とした格闘技大会「THE OUTSIDER」を立ち上げ、3月30日にディファ有明において第1回大会を開催。7月19日には第2回が開催される。斬新な発想力でプロレス・格闘技界をリードしている。リングス公式サイト
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