『ポニョ』に負けない、日本映画の秀作2本
#映画 #邦画 #堺雅人 #スタジオジブリ
今週末19日は今年最大のヒットが見込まれる宮崎駿監督の最新作『崖の上のポニョ』が公開。週末の劇場は公開を心待ちにしていたジブリファンや、多くの親子連れ、カップルで大混雑のはず。そんな人がごった返す映画館にわざわざ行きたくない!という人、世間の誰もが見るような映画はご免だ!という天邪鬼な人、また、映画を見て静かに人生を考えたいという人に、今週は2本の映画をオススメしたい。
ひとつは今週末19日から公開される、芥川賞作家・長嶋有の同名小説を映画化した『ジャージの二人』。
仕事を辞めたばかりで妻はほかの男と不倫中という、ちょっと冴えない32歳のボク(堺雅人)と、3度目の結婚が暗礁に乗り上げている54歳の父(ロックバンド「シーナ&ロケッツ」の鮎川誠)の2人が、軽井沢の古めかしい山荘で、なぜか昔ながらの(小学校の名前入りの)ジャージを着て、何をするでもなく夏を過ごしていく。時折訪ねてくる友人や家族たちとの交流はあるものの、やはり大きな事件は起きない。ジャージ姿がゆる~い雰囲気を醸し出し、最初は「なんでジャージ?」という疑問も、やがて頭の中で溶かされてどこかにいってしまう不思議な脱力系映画。
しかし単にゆるいだけでなく、この映画にも、父子や夫婦の言葉には出さないけれども微妙な距離感や優しさ、傷つけあってしまうことの寂しさが、そこはかとなく描かれている。はっきりと「これがいい」「これがいけない」とは言えないのに、「なんかわかる」と思えてくるのが魅力。クスリと笑える小さなギャグや、涼しげな森の山荘の生活は、映画館の暗闇の中で見ているだけで避暑気分だが、そのついでにちょっと親子や夫婦関係について思いを巡らせることができるかも。
もう1本は、『誰も知らない』で柳楽優弥に史上最年少のカンヌ国際映画祭主演男優賞をもたらした是枝裕和監督の最新作『歩いても 歩いても』(公開中)。
話はいたってシンプル。年老いた両親のいる実家に、息子と娘がそれぞれの家族を連れて戻ってきた、ある夏の一日を描く――ただそれだけの映画である。主人公は阿部寛扮する失業中の男で、彼は結婚して間もない妻とその連れ子と3人でやってくるが、どうも足取りが鈍い。それもそのはず、生きることに不器用な彼は、実家で待つ元開業医で頑固な父(原田芳雄)がいつまでたっても苦手なままなのだ。そのほか、旦那と2人の子どもを連れてきた姉(YOU)や専業主婦として家庭を支えてきた母(樹木希林)など、どこにでもいそうな家族の肖像が描かれていて、よほど特殊な家庭環境に育った人は別として、たいていの観客にとって、登場人物たちが自分や自分の家族の姿、環境などとダブって見えてくるはずである。大きな事件が起きるでもなく、説教がましく家族観を押しつける映画でもないが、この夏の一日を見終えたあとは、思わず年老いた両親に対する得がたい思いが募り、今年のお盆の里帰りはちょっと違った気持ちになるはずだ。
そんな小粒な映画を2本紹介したが、やっぱり『ポニョ』も気になるという人は、ぜひそちらでも。『ポニョ』は息の長い興行になりそうだから、混雑が嫌ならしばらく待ってからいっても問題なさそうですが。(eiga.com編集部・浅香義明)
各作品の詳細は以下より。
『ジャージの二人』
『歩いても 歩いても』
『崖の上のポニョ』
『ジャージの二人』は『アヒルと鴨のコインロッカー』の中村義洋監督作品です。
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