注目の若手写真家・梅佳代的ファミリーポートレイトの極意!
#アート
「長生きっぽい写真かなあ……」と梅佳代は、今回の写真集『じいちゃんさま』(リトルモア)に選んだ写真の基準を話す。弱冠27歳にしてファースト写真集『うめめ』(同)が11万部突破。その写真集で、写真界の芥川賞ともいわれる木村伊兵衛写真賞を受賞。続く2作目の写真集『男子』(同)では、小学生男子の“バカで無敵な格好良さ”を切り取り、新たな評価とファンを獲得した。そんな、今最も注目される写真家である彼女の3作目となる写真集が、『じいちゃんさま』だ。被写体は彼女の実の祖父。写真を始めた高校生の頃から撮り始め、今も時間を見つけて帰省しては撮り続けているという。
「まず、驚いたのは、じいちゃん変わってないんですよ。あたしが生まれたときにもう60代後半で、90歳超えたときにはうっすら神様系やったから、今は仙人の域。一緒に写ってる妹はすごい勢いで成長してるのに、じいちゃんはなんにも変わってない。へんな時間が流れてる(笑)」
祖父の写真集を出す根底には、「長生きしてほしい」という願いがある。
「あたし、小学生の頃からじいちゃんとばあちゃんと寝とって、ふたりが死ぬときのことをいろんなパターンで勝手に空想しとったら、本気で怖くなって哀しくなって勝手に泣いたりしとって。だから、遺影っぽい写真になるのは絶対嫌やなって。でも、じいちゃんたちのほうは自分の死を完全に普通に受け入れてて、それがすごすぎですよ」
だから、今回の写真集は「全10巻のうちの第1巻くらいの感じ」で、特別劇的なものという意識は持ちたくないという。とはいえ、自分の家族や実家の風景が写真集として世の中に出るのは、これまでとは違う悩みもあるようだ。
「高校の頃に撮ったスナップ写真を見直すと、ちょー貧乏くさい! 部屋の隅にじいちゃんの股引がぶら下がってたり、妹と弟がラーメン食べてる写真とかめっちゃ貧乏くさくて、ああ、こんなん見られたら本当に貧乏だと思われるって。ひとんちを撮るなら気にしないんですけど(笑)」
ところで、じいちゃんさまばかりで、ばあちゃんさまはひがまない?
「いや、ばあちゃんも撮ってるんですよ。でも、ばあちゃんは可愛く写りたいからヘンな顔で写ってるとNG出してくる(笑)。オンナはいくつになっても現役のオンナなんですよ」
(山下 卓/「サイゾー」8月号より)
「わたしが写真を撮っとれば、じいちゃんはしなんかも。」
梅佳代『じいちゃんさま』
石川県柳田村の山深い故郷を舞台に、梅家三世代(雑種犬のリョウ含む)、とりわけ最も尊敬するじいちゃん(93歳)の姿を、あじさいが見事な庭先から家族団らんのこたつの中までズイズイ追いかけた、“梅佳代的ファミリーポートレイト”。梅佳代自身による解説付き。 発行/リトルモア 価格/1890円(税込) 発売日/7月下旬
うめ・かよ
1981年、石川県柳田村(現・能登町)生まれ。02年、大阪の日本写真映像専門学校を卒業。同年、若手写真家の登竜門である「写真新世紀」で、『男子』『女子中学生』が、佳作を受賞。07年、『うめめ』で第32回木村伊兵衛写真賞を受賞。現在は東京を拠点に、海外でも写真展を開催している。
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