『文学賞メッタ斬り!』が文壇に取り込まれる!?
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出版業界にあって批判がタブーな作家たちを小気味よく斬り倒して熱烈な支持を集めてきた『文学賞メッタ斬り!』シリーズ(PARCO出版)。ライター・豊崎由美氏と翻訳家・大森望氏の2人が、芥川賞・直木賞ほか、各文学賞受賞作から、選考委員、選評までを毒舌批評するのが最大のウリだが、先頃刊行されたシリーズ4冊目となる最新刊『~2008年版 たいへんよくできました編』には、文芸関係者から戸惑いの声が上がっている。
「渡辺淳一はじめ、石原慎太郎や宮本輝といった大御所作家たちを臆せず批評する姿勢は敬服に値しますが、他方で、その評価はいかがなものかと思うものも少なくない。たとえば、芥川賞受賞作となった川上未映子の『乳と卵』の場合、彼女の特徴でもある難解さを押さえて、いわば“ゆるく”書かれている。にもかかわらず、これまでそうした“受賞狙い”に冷ややかなコメントを加えてきた2人がなんのツッコミも入れていません」(文芸誌編集者)
そのほか、かつては手厳しく批判していた山田詠美を最近では批判しなくなったどころか、同書では、前作でゲスト登場した作家・中原昌也氏の山田批判に関して、『山田さんにもご迷惑をおかけしたみたいで、わたしたちも心配してた』というくだりも。従来のタイトルに比べ、各所への気づかいが垣間見えるのだ。
「とりわけ豊崎氏は、“情が芽生えるから”という理由で作家と直接接触することなく辛口批判をしてきましたが、最近では、授賞式やその二次会などにも顔を出して、文壇人と近い関係を築いている。それ自体は悪いことではありませんが、それによってむしろ彼女のほうが文壇に取り込まれているように見えて気になります」(同)
最新の芥川賞・直木賞受賞予想をWで的中させ、『~2008年版 たいへんよくできました編』の裏表紙の帯には、“まさかのメッタ褒め?”という惹句が踊ったが、今後はさらに、文壇事情に配慮したメッタ褒めが展開される……なんてことは、ないですよね?
(編集部/「サイゾー」7月号より)
「文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編」
作品選考の裏話あたりもオモシロイです
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