大手マスコミが「記者クラブ」で“報道の自由”を蹂躙!(前編)
#マスコミ #ジャーナリズム
記者クラブとは、主に官庁や自治体、警察などを取材するメディア各社で構成される組織で、公的機関の一角に常駐し、記者会見をはじめ、そこから発信される情報を一手に取り仕切る役割を担っている。クラブ関係者のみが優先的、独占的に情報を入手する制度であり、他の先進国には見られない日本独特の取材慣行となっている。
今年4月、長野でのオリンピック聖火リレーに合わせて来日し、中国の人権問題をアピールしたNGO「国境なき記者団」は、世界の「報道の自由度」ランキングを発表することでも知られる(2007年、日本は169カ国・地域中37位)。今年発表の日本に関する報告では、「記者クラブ」が、報道の自由を脅かす理由の筆頭に挙げられている。同NGOからすれば、記者クラブ問題とは、人権問題にほかならない。国民の知る権利を踏みにじる報道規制のシステムなのだ。大手マスコミが「国境なき記者団」を紹介するとき、その過激なパフォーマンスは紹介するが、彼らのこうした指摘は報道しない。それこそが、記者クラブ体制が生む、偏向報道の一例といえるだろう。
同じく4月、記者クラブの名のもとに、マスコミが粛々と表現の自由を踏みにじる事件を起こしていた。九州を中心に活動する、株式会社データ・マックス(福岡市)という企業がある。経営情報誌「I・B」を週2回、企業会員を中心に3000部以上発行、ニュースサイト「Net-IB」も開設し、連日2万件近いアクセスを誇る。このデータ・マックスが福岡県庁内で開催される記者会見への参加を希望したところ、同県庁内の「県政記者クラブ」が、その申し出を拒絶した。データ・マックスの担当者が語る。
「我々は福岡市の会見には、何年も前から参加が認められているんです。そこで県の会見にも出席したいと正式に申し入れたら、ダメだと言われました」
今回のケースでマスコミ16社でつくる「県政記者クラブ」は、正式に会議を開き、議決を採って、データ・マックスの排除を決定している。
「文書でもクラブ側に拒否の理由を問いただしたんですが、理由や各社の賛否すら明らかにしてくれません。我々はクラブに入りたいとすら言っていないんです。ただ会見の様子を報じたいというだけなのに、何がダメなんでしょうか?」(前出・担当者)
この決定について、当の「県政記者クラブ」の幹事社に問い合わせると、「各社の判断ですから」というだけで、拒否の理由を明かさない。さらに会見を開く側である福岡県庁の県民情報広報課に問い合わせても、「会見はクラブの主催になってますから、県としてはコメントできません」という。
このケースが注目されるのは、福岡県で起きたことだ。同県の地元紙、西日本新聞は、記者クラブ問題と因縁が深い。00年、森喜朗首相(当時)が「神の国」発言についての釈明会見を開いた際、首相官邸記者クラブに属するNHKの記者が、会見を穏便に済ますための「指南書」を渡していたことが発覚した。この事実をすっぱ抜いたのが、西日本新聞の記者だったのだ。
かねてから問題視されてきた、取材対象と記者の距離感のなさが典型的に表れた、記者クラブの弊害を象徴する事件として、そのスクープは高く評価された。実は、このときのスクープ報道にかかわった記者本人が、現在福岡の「県政記者クラブ」に詰めている。実はそのスクープには、直前に伏線となるエピソードがあって、西日本新聞の記者が、警察庁での同庁長官の記者会見に出席しようとしたところ、同社が警察庁記者クラブの常駐社ではないため、会見場から排除される事件が起きていた。中央で排除を経験した地方新聞が地元の記者クラブでどのように振る舞ったのかを取材するため、県政記者クラブでの西日本新聞社の対応を、同記者に直撃したが、回答を拒否されてしまった。
今回の県政記者クラブの決定は、全国の新聞社、テレビ局などからなる日本新聞協会の記者クラブに関する見解と、明らかに矛盾している。02年に発表された同見解には、「記者クラブは『開かれた存在』であるべきです」「記者会見はクラブ構成員以外も参加できるよう、記者クラブの実情を考慮に入れ努めていかなければならない」と書かれている。しかし実際のクラブ運営は、自治体の会見でさえ、新規参入を排除してのけたのだ。
(岡崎智/中編へ続く)
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