仰天の新事実! 倒産した新風舎、そのあくどさ(前編)
#事件 #企業 #出版 #倒産
1000人にも及ぶ制作途上のお客の単行本を抱えて倒産した自費系出版最大手、新風舎の事業の一部が、同じ共同・協力出版系として新風舎と覇を競い合ったライバル企業の文芸社に譲渡された。旧聞に属し、時期はずれになってしまったものの、子細を報道したメディアがほとんどなかったので、記録の意味も含めて、「サイゾー」2月号の記事「モンダイ自費系出版社『新風舎』の内部資料を公開!」以降の状況を報告する。
事業譲渡を発表する記者会見は3月7日、東京高等裁判所内の司法記者クラブで開かれた。説明にあたったのは、新風舎の保全管理人である川島英明弁護士。松崎義行社長は姿を見せなかった。
新風舎は、企業再生を目指して民事再生手続に入ったものの、支援企業として名乗りを上げた印刷会社が直後に手を退き、再生手続が廃止になった。その際、仕掛かり中の単行本を含む事業の引き受け手を見つけてから、破産手続に入りたいと川島弁護士らは説明していた。未刊行のお客の救済策を探り、債権者への配当を少しでも増やすために、一時手続を棚上にしたかたちだった。ということは、会見の時点では、松崎氏は現職の社長のはず。だが、会見後、直接、川島弁護士に松崎氏の肩書きを尋ねると、「もう元社長でかまわない」とあきらめ顔だった。
川島弁護士が配布した文書では、文芸社に事業譲渡することになった経緯を次のように説明した。
〈2月1日に事業譲渡に関する交渉に着手しました。文芸社や他の出版社などに、仕掛品の完成・流通等を含めて検討をお願いしたものです。他の会社は、仕掛品の規模が大きすぎるために断念いたしました〉
〈仮に事業譲渡を行わず、新風舎が破産した場合、作家の方に対して「お金は返却されず、本を流通どころか完成もしない」事態となります。/作家の方に対して「本を廉価に造ります」等の勧誘も十分予測されるところですが、多くは零細事業者であり、代金の保全措置が行われるのか、流通に乗せられるのかという疑問がありました〉
〈(文芸社のしくみは)作者にとって最も有利なことであり、新風舎の外部作業者や印刷会社も安心できると判断しました〉
質疑では、次のようなことがわかった。既刊本の著者に、定価の2掛けで買い取りを求めたところ、在庫600万冊のうち60万冊がさばけ、1億 2000万円の収入となった。しかし、倒産後、倉庫会社には月々3000万円の支払いを行わなければならないので、差し引きすると実収入は半分程度になる。公租公課・未払い賃金などの優先債権は3億5000万円。文芸社への譲渡額は公開できない。この収入と本の代金などを充てても、優先債権の額に満たないため、一般債権の配当は不可能。仕掛かり中の著者が本を出すためには追加負担が生じるが、「文芸社は利益を見込まない最小限の額を提示する」。実際に本を出したいという意向を示しているのは、未完の著者1000人のうち650人ほど。残りは嫌気がさしたようだ。既刊本のデータやコンピュータの基幹システムも文芸社に譲渡した。既存の著者も、データが残っているので増刷を望めば文芸社からの出版も可能だろう――。
さらに、新たな事実も明らかになった。松崎氏は「裁判などによる風評被害によって、昨年7月以降、経営が傾きはじめた」と弁解していた。ところが、川島弁護士は、一昨年末来、社会保険料の支払いが滞っていたと説明した。そのために、債権の公租公課が膨らんでしまったわけだ。倒産時まで在籍していた元社員は、社員の賃金は遅配したのに、松崎氏は最後まで役員報酬を受け取っていたと証言していた。その額は3000万円ほどではないかという。まさに、お手盛りの放漫経営だったようだ。松崎元社長は、京都の匿名の企業が支援を申し出ていると公の席で説明していたが、川島弁護士に、その会社の件はどうなったのかと直接尋ねたところ、「そのような話そのものがなかったようだ。あの人(松崎氏)は何かが欠落している」と嘆いた。
(長岡義幸/後編へ続く)
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