金融庁もタヌキ寝入り!? ゆうちょ銀は“政治タブー”
#政治 #郵政公社
昨年10月の郵政民営化に伴い、傘下の金融2社――ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の監督官庁が、総務省から金融庁に移行した。金融庁といえば、「金融〝処分〟庁」の異名もあるこわもて官庁。両社も、金融庁の役人を前に頭を抱えているかと思いきや、「むしろ頭を抱えているのは金融庁のほう」(霞が関関係者)という声が上がっている。
金融庁の悩みのタネは、同庁の主要業務である「検査」に関して。金融庁による検査とは、「金融機関の業務の健全性と適切性の確保のため、立入検査の手法を中心に活用して問題点を指摘する」(「金融庁パンフレット」より抜粋)もので、金融機関にとっては「最もイヤなこと」(大手銀行幹部)だ。
「金融庁の担当者が検査に入ると、会議室などを借り切って、『○○の書類を持ってこい』などと社員に指示を出しまくる。おかしな点があれば、根掘り葉掘り質問攻めに遭うから堪らない。検査官がいる間は、役員もいつ呼び出されるかわからず、おちおち社外に出ることもできない」(同)
ゆうちょ銀行には昨年11月から、かんぽ生命には今年3月から金融庁の検査が入っているが、これが、通常の金融機関に対するものよりも、はるかに〝甘い〟内容なのだという。というのも、金融機関が最も嫌がる全国の営業拠点=郵便局には、検査が入っていないというのだ。郵便局では、被保険者と会わずに簡易保険に加入させる「無面接募集」や、顧客情報の漏洩などが過去に発覚しており、「検査が入れば一発アウトのはず」(生保幹部)だが、「それがわかっているからこそ検査に入れない」(金融業界関係者)という。
「不法行為が見つかれば、金融庁は行政処分を出さざるを得ない。しかしそうなると、『郵政民営化なんてしなければよかった』と世論が盛り上がるのは必至。小泉政権以来の“国策事業”である郵政民営化を頓挫させるわけにもいかないので、金融庁も動くことができない」(同)
政治的な理由から金融庁の動きが鈍くなるのは、日本郵政に対してだけではない。新銀行東京が1000億円を超える巨額の累積赤字を抱えたことが問題となったが、金融庁が同行の検査に入ったのは、問題が発覚してからかなりたった今年5月のことであった。
「検査が遅れたのは、同行が石原慎太郎・東京都知事の肝いりで設立され、さらには知事に経営悪化の責任があるとの指摘もあるから。検査の結果が政治問題化する可能性もあるので、金融庁は動けなかった」(前出の金融関係者)
さしもの「金融“処分”庁」も、政治問題には慎重にならざるを得ないご様子。しかしそれでは、恣意的な行政といわれても仕方がないのではなかろうか……。
(千代田文矢/「サイゾー」7月号より)
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