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毒入りギョーザもお役所対応 名ばかり“民間企業”JTの実態

 この4月で民営化から23年を迎えたJTこと日本たばこ産業。ところが、長年掲げてきた“民間”の看板は、お飾りでしかなく、今でも事実上は国策会社であることは、誰の目にも明らかだ。その実態を見ると、財務省はいまだJTの株式の50%を握っており、民営化の目的のひとつでもあった「経営や資本政策の自由度を高める」という状況には程遠く、一方でたばこの独占販売の地位は法律でしっかり守られている。それでも世界的に広まる禁煙の流れを受け、年々規模が縮小するたばこ市場への依存度を低め、事業の多角化を図ろうとしているJTだが、市場競争への適応力を欠くお役所体質が、新規事業進出へ足を引っ張っている。

「冷凍ギョーザに毒が入れられたことで一躍有名になった同社の食品事業ですが、その対応もお役所体質だった。今年1月30日に事件が発覚する2カ月以上も前から、『冷凍ギョーザから異臭がする』との声が複数の消費者から寄せられていたのに、JTは検査も回収もしなかった。しかも、社長が公式の場で謝罪したのが、事件発覚後8日目。国民のひんしゅくを買いました。この危機管理意識のなさは、民間企業では考えられません」(全国紙記者)

 こうした体たらくに、JT、そして同社が買収した加ト吉との食品事業統合を予定していた日清食品の安藤宏基社長が「根本的に食の安全の考え方が違う」と突き放して、事業統合を白紙に戻したのは記憶に新しい。

 そもそも、たばこに次ぐ事業の柱に育てたいと考えていた食品事業において、国内に生産設備を整えるのではなく、中国製品に頼ったほうがリスクも少なく、手っ取り早いという判断をしている時点で、本気で食品事業を拡大しようと考えていたのか疑問が生じる。

「こうしたJTの素人経営は、以前から目についた。96年に始めたレストラン事業では、バーガーキングを展開するも5年で撤退。一時は、すっぽんの養殖やスポーツクラブの運営にまで手を出したが、長続きはしなかった。大規模展開したアグリ(農業)ビジネスも、最終的に撤退しています。とにかく見通しが甘く、経営努力が足りないんです」(JT関係者)

 そんなJTが食品事業と同じく、近年注力しているのが、医薬品事業だ。JTが同事業に参入したのは、民営化の2年後の87年。88年に横浜に医薬研究所、93年には大阪・高槻市に本格的な研究所を設立。当時の本田勝彦社長は「医薬事業は、10年やっても成功するかどうかわからない。ハイリスク・
ハイリターンの事業」と公言していたが、確かにその通りで、ひとつの新薬開発には200億円以上の研究開発費が必要なものの、実際に新薬の開発に成功し、販売にこぎ着ける確率は1万分の1ともいわれ、期間も10~20年はかかる。一方で、大ヒット商品となれば数千億円規模の売り上げが期待できるのだから、昔から「新薬開発はばくち」といわれてきたのもわかる。

 当然、資金力がなければ、そんなばくちを打てないが、JTには、たばこ事業で培った技術と莫大な資金力があった。たばこ市場は9年連続で縮小しているといっても、JTはいまだ全事業合計で4305億円(08年3月期)の営業利益を誇っている。毎年200~300億円の大金を同事業に投じても大した痛みはないわけだが、その甘い考えゆえか、いまだ新薬開発は実現していない。

「ここまで来て、医薬品事業からも撤退ということはないだろうが、こうした放漫経営が許されるのは、たばこ事業で国の庇護を受けているから。現在も売上高6兆4000億円(08年3月期)の93%はたばこ事業で、食品事業、医薬品事業は各6%、1%のみ。昨年には、英国のたばこ会社を買収して、世界シェア3位になった。多角化を目指すといいながら、結局は国民の健康を犠牲に、たばこ事業で楽に儲けまくり、その緊張感のなさが食品事業での不祥事を生んだともいえる。もっと糾弾されてしかるべきです」(前出・記者)

 たばこを販売している限り、潰れることはないであろう国策企業JT。そのぬるま湯から抜けきれないのなら、せめて、国民生活を脅かすような事業には進出してこないことを祈りたい、とでも言いたくなる。
(舘澤貢次/「サイゾー6月号より」)

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最終更新:2008/06/17 19:16
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