オール電化はエコじゃない!?東京電力「企業優遇」の商魂(後編)
#環境 #企業
「私どもの見解としましては、ベストミックスというのですが、火力・水力・原子力の3つを組み合わせて発電しているということを前提としています。結果、10%の省エネルギー効果、25%のCO2の削減効果が期待できるため、(オール電化住宅は)省エネ性、環境性に優れた住宅であると考えています」(東京電力・広報担当)
東電の見解は、あくまでオール電化の電力は、水力、原子力からも持ってきているというもの。しかし、解釈がどうであれ、全体として排出されているCO2の量が減っているということはないのだ。
大口客=企業に優しい料金体系
田中氏は、家庭のせいにばかりする現状にも疑問を投げかける。
「そもそも、家庭のCO2排出量は全体の5分の1程度で、大半は産業なんです。でも、大口の顧客である産業界からの、『こっちに目を向けさせるな、消費者のライフスタイルのせいにしろ』という圧力があるので、家庭のせいにされています」
CMで、「電気を大切に」などと、さかんに宣伝されているため、電気の無駄遣いを反省する人も多いだろう。それ自体は非常に有益なことだ。しかし一方で、消費の大半を占める事業者の省エネ対策は、さほど進んではいない。その大きな原因のひとつに、電気料金の設定が挙げられる。
「今、企業は、3年で元が取れる省エネ設備すら導入しません。なぜなら、企業向けの電気料金は、基本料金が高くて単価が一定。使えば使うほど割安になるのです。だから、設備を導入して省エネするメリットがないんです。みんな省エネ製品を導入すれば、それだけで(CO2排出量を)約4割減らせる。仮に3割減らせば、それだけで京都議定書をクリアできますよ」(同)
家庭では、使用した量が多ければ多いほど、単価が上がり、割高になる。このため、消費者は省エネ家電を導入するメリットがある。企業に対しても同じことをすればいいのだ。
「そうしないのは、電気を使ってもらいたいからでしょう。そうすれば、発電所をもっと建てられる。産業界での地位が、もっと高まりますから」(同)
そうして増えに増えた日本の発電所。発電所は、電力需要のピーク時に電気を供給できるだけの数を用意しておく必要がある。日本はピークとそれ以外の時の差が大きく、発電所の稼働率が低く無駄が多いのだという。
「電気事業便覧というデータ集を見ると、日本の発電所の稼働率(負荷率)は60%程度。ドイツや北欧の72%に比べると、非常に効率が悪い。電力需要の波が大きすぎるのです。日本も同じように、稼働率を72%まで上げた場合、4つに1つの発電所を止められます」
では、その電力需要の波を穏やかにし、稼働率を上げるためには、どうすればいいのか?
「実は、ピークははっきりしています。夏の平日、気温が31度を超えた日の午後2時から3時にかけてだけなんですよ。だから、この時だけ電気料金を高くすれば、ピークを分散することができます」(同)
この点については、電力会社も対応を進めているようだ。
「大口のお客様の需要を抑制すべきだ、という指摘はごもっともな話です。ですので、すでにそうした取り組みは実施しております。たとえば時間帯別料金メニューなどを用意して、負荷の下がる時間帯や季節に応じて、ピークが分散されるように努めております。そうした契約【筆者注:使えば使うほど割安になる契約】もありますが、ほかにも省エネに繋がるような選択肢を増やして、お客様に選んでいただいている、という状況です」(東京電力広報担当)
そうした料金設定を選ぶ企業がどの程度いるのかについては「(データの)用意がない」として回答を得られなかったが、田中氏によれば「全体の2%しか契約していません」とのこと。もう少しピンポイントに料金の値上げを行い、省エネ設備の導入メリット(あるいは浪費のデメリット)を大きくすれば、さらなる効果が期待できるはずだが、強く出られないのはやはり「大口のお客様」に対する配慮だろうか。
環境への配慮をPRはするものの、結局、企業が最重要視しているのはコスト。省エネ=省コストではない現行システムのひずみが、環境への負荷を高めているといえるだろう。省コストと省エネを一致させるためにも、電力会社には、さらなる工夫が望まれる。
(逸見信介/「サイゾー」6月号より)
「有名企業のホンネ/オキテ破りのヤバイ本BEST60」
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