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警察利権に「暴力団」は必須!? やくざとメディアの関係(後編)

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――いいハナシですねー。もっとヘンなハナシはないんですか?

A もー、そんなこと言ってるとガラス割られるぞ(事務所に銃弾を撃ち込まれる、の意味)、マジで。

B そうそう。甘えるのはいいけど、なめるなよって言われちゃいますよ。

C 悪い話じゃなければ、少しくらいはいいんじゃないですか。僕の大好きなある親分なんだけど、抗争中にテレビで組事務所を映されて、「威圧感のある建物だ」とキャスターが言ったのにキレて、超ポップな色にペンキで塗り替えちゃった人がいます。この人は本当にシャレのきいた人で、地元では超慕われていますね。

A 慕われるのは、やっぱり子分思いとカネ集めの才能。ある関東の大親分も、押し入れの中にキャッシュでウン億円あって、ガサ入れ(家宅捜索)の時に捜査員から「こりゃなんだ?」と聞かれて、「こりゃカネだ」と答えたという話もあり。

B 関西の大親分は、札束で鴨川をせき止められるといわれてたね。カネは、とにかくあったようだよ。
やくざ記事執筆の注意点とは?

――やくざに関する記事を作るための注意点も多いと思うんですが。取材も簡単にはできないですよね?

A まあ、相変わらず神戸(山口組)は取材拒否が前提だけど、あとは、基本的には取材には協力的。でも、気をつけてることは多いよ。特に、進行中の抗争については書きにくい。報道されている事実であっても気を使う。揉めている双方に話を聞いて書いたら、双方からクレームが来たこともあるし。

B あと、組織と人の名前は絶対に間違えられませんね。

C カネ絡みの表現も難しいですね。

A 「上納金」は警察用語だから、使わないね。「会費」でもクレームが来ることがある。

B 要するに、カネのハナシはまずいんですよね。「相互扶助組織」というような言い方はしますね。

A あとは、幹部の健康問題もダメ。懲役に行ってる組員にも心配かけられないし。

B 身柄拘束されている幹部の健康不安を書くのも、ご法度。病気を理由に執行停止や保釈を請求している時に、メディアに先に情報が出てしまうと、裁判所への心証を悪くしてしまう。

A 服役中に病気を放置されて、事実上獄死したカリスマもいるからね。本当は、政府や法務省のむちゃくちゃぶりをもっと報道したいんだけども。

B 徳島刑務所で医師が服役囚を虐待して、それに反発したやくざを中心とした服役囚が暴動を起したという問題も、マスコミが報道したことで、収容者への締め付けがさらに厳しくなったという話もありますね。

C でも、あれは泣き寝入りしていた人が多いんだから、書いたほうがよかったんじゃないですかね。

B あとは、誰々が指を詰めたとかいう話は書けないですね。

C 一般の人は気になる部分だと思うんだけど、いいことをして指を詰めることはないんだから、書かれたほうが放っておかないですよ。

A 意外に多いのは、見出しへのクレーム。編集者がつけて、我々ライターが校正ゲラを見ないときは、トラブルが起こる可能性が高まる。「抗争終結へ」の「へ」が抜けちゃうだけで、マズイこともあるからね。

B 記事を読めばそうでないことがわかるんだけど、見出しはインパクト強いから。

A そんなこんなで事務所に呼ばれちゃうと、さすがに緊張するよね。

B Aさんでも、そんなことがあるんですか?(笑)

A まあ、顔見知りだとね、「オヤジ(親分)の手前、説明に来てよ」みたいな。

B 釈明しに行ったとき、事務所に木刀とか飾ってあると、さすがに緊張します(苦笑)。

C 木刀はコワイ(笑)。でも、実際にライターが殴られたって話は聞かないし、カネで解決しろと迫られることもまずない。名誉毀損の裁判もないし。

A 彼らはカネじゃなくて、メンツが大事だから。そういった意味では、謝罪広告で誠意を見せることを求められることが多いんだね。

――昨年は、「実話時報」(竹書房)と「アサヒ芸能」(徳間書店)が、表紙をめくった次の1ページに全面で、やくざに関する記事について謝罪広告を、立て続けに載せていましたね。

B あれは、「お前ら、もっと緊張感を持って仕事をしろ」という、我々へのメッセージとして受け止めました。

A 殊勝な心がけだね(笑)。悪意のある嘘を書かなければ、きちんと事情を説明して、謝ればわかってくれるんだけど、常に緊張感は必要だね。聞いた話をそのまま書いちゃだめなんだよ。「アサ芸」も、ひとつの情報源だけを頼りに書いて問題になったと言われている。今はどこの出版社もリストラが進んで、編集者1人当たりの仕事量が多くなっているから、ウラを取ったりする手が回らないという現実もある。他人事ではないなあ。ほかにも、表沙汰にならないだけで、現役やくざから「この記事を書いたヤツの住所を教えろ」とか聞かれることだってある。「今は使用者責任がうるさくて、親分に迷惑がかかるから、弁護士を通じて出版社に抗議したほうがいいですよ」とか言って止めてるけどね。

B 逆におめでたいこと、襲名とか事始(12月13日。来年の準備を始める)とかは「取材に来てや」って言ってくれますね。

A そうそう。襲名や縁組を報道するのは重要。読者も好きだからね。

B 先日も、大きい襲名披露がありましたね。今後が楽しみです。

A 結局、取材する側で最も大事なのは礼儀だよ。あと、「遠慮してくれ」って言われたら、しつこくしない。芸能レポーターとは違うんだから。
(編集部/「サイゾー」5月号より)

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最終更新:2008/06/17 19:10
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