警察利権に「暴力団」は必須!? やくざとメディアの関係(中編)
#事件 #雑誌 #警察
「やくざは怖い」からこそ警察OBの食い扶持がある
A 政治家やインテリにももっとこの暴対法について深い議論をしてほしいんだけど、「暴力団対策」という名前にごまかされている。
B 今回の改正に唯一反対を表明しているのが、鈴木宗男議員。これまでは全会一致で成立・改正してきたのだから、画期的ともいえるね。
C 鈴木議員の場合、「まず、裏金問題などを抱えている警察が襟を正せ」「海外マフィア対策が先決」という主張。彼は裏に佐藤優などのブレーンがいるから、過激だけど的を射ていることも結構言っているんですよね。
A 結局、暴対法の根本的な問題は、規制する団体を国が恣意的に指定するところ。チーマーや海外マフィアなんかは対象外だし、そもそも存在していた「暴力行為等処罰に関する法律」の運用で、どんな組織も個人も一律に取り締まれば済むという主張も以前からあったんだよ。
B 今後は日本でも「やくざというだけで犯罪」というくらい、取り締まりが厳しくなっていく可能性が高い。ますます地下に潜るだけなんだけどね。
――法律面だけでなく、警察の締め付けも厳しくなっていますね。
A しかし、暴力団がなくなると、捜査の面で警察も困ると言ったけど、警察の天下り先である各都道府県にある暴対センターが縮小されるのも困るはず。ホテルや飲食業界にも「ヘンな客、怖い客の対策には警察OBを」という触れ込みで、人員を受け入れさせている。それも通用しなくなるわけだから。
C 結局、暴対法まで作って、暴力団は恐ろしいというイメージを流布させて、自分たちの利権に結び付けているんですね。アタマいいよなあ。でも、それを捜査に生かせないから、冤罪が増えるんですよ。我々の守備範囲でいうと、山口組幹部である後藤忠政組長まで一審で無罪になったのだから、すごいですよね。
A 傍聴している人間なら、絶対無実だとわかる案件だったけど、裁判所もあれだけの大物に無罪判決をそう簡単に出すかなーと思っていたよ。
B そんだけむちゃくちゃな裁判だったってことですね。もう最初から「後藤逮捕ありき」だったんですよ。
A しかも、あんな大物に対して、容疑は不動産登記の違反。失礼だよ(笑)。
B あまり冤罪が続いたので、警察庁は今年の初めに「反省文」【「富山事件及び志布志事件における警察捜査の問題点等について」(08年1月)/両事件の捜査ミス、証拠の取り扱い・吟味方法など、細かく反省している】も出しましたね。
A 国家賠償請求をどんどん起こされてるから、それに対するアリバイ作りだよ。「これだけ反省しました。勘弁してください」と。
B そうすると、裁判所も甘いんですよね。「反省してるから、もういいじゃないか」と、警察の責任も十分に追及せずに、和解に持ち込もうとする。結局、官僚同士ってことですよね。国は「カネを払えば、文句ないだろう」という姿勢で、冤罪事件の真相は出てきませんからね。
やくざの世界も少子高齢化が深刻!?
A ところで、「やくざ社会」というと、一般社会から切り離されたイメージがあるけど、内実はすごく似ている。
B まず、景気が悪いと、シノギがきつくなる。
C そうそう。別に暴対法だけのせいじゃないですよね、社会のみんなが不景気できついんだから。
A 特に地方はね。しかも、少子化の影響で、子分になる人間も少ないし。
C ていうか、いまどきの若者っていう言い方はどうかと思うけど、会社員も務まらないんだから、組員なんか絶対ムリでしょう。上下関係厳しすぎ。
B その代わり、親分衆は昔より長生になって元気だから、なかなか引退しない。高齢化は進む一方だよ。
A ただ、若い奴が親分衆から学ぶことは、たくさんあるんだけどね。
――そういう親分のカリスマ的なエピソードなんかをお聞きしたいのですが。
A 伝説になっている親分は多いね、健在の人も含めて。ただ、いい話でも、雑誌に書くのは難しいんだよね。子分たちには「うちのオヤジ(親分)のことを、気安く書かないでほしい」という気持ちがあるから。
C 神格化されてますからね。
――そこをなんとか、聞かせてくれませんか?
A 責任持てないけどなー(笑)。元祖カリスマといえば、三代目山口組の田岡一雄組長だけど、あの頃は神戸の職安の所長とかが田岡組長の葬儀に来たりね。65年頃は「頂上作戦」とかいって、警察がやくざを潰そうとしてバンバンやり合っていた頃だけど、政治家も官僚も上のほうの人間は、侠客にも敬意を表していたね。
B 銃刀法違反でいま収監中の六代目山口組・司忍組長は、冤罪ですよね。一審は無罪だったのに、司法の力技で上級審有罪となった。一緒にいた別の幹部は、ほぼ同じ条件で無罪だったし。でも、潔く収監されたことで人気がさらに高まったといわれてますね。
C 武士の心意気なんですよね。それに質素なことでも有名。事務所のスリッパなんかも、大親分なんだから自分だけ高いのを履くのは普通なのに、「枝(下部団体)の子たちと一緒でいいよ」と言ったそうで、若い衆が大感激したらしい。
A カタギにもやさしいよね。
(編集部/後編へ続く)
【関連記事】 総会屋を知らずして、経済を語るなかれ
【関連記事】 警視庁流出資料にあった暴力団と芸能プロの名前
【関連記事】 羽賀事件の裏で狙われる、大物芸能人の「危険度」
【関連記事】 光市母子殺人事件でも見られた「主文後回し」が示す“重さ”
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事