創刊もいきなり赤字懸念!?「m9」編集長が語るm9(^Д^)な展開
#雑誌
今春になって、「思想地図」(NHK出版)、「ロスジェネ」(かもがわ出版)と、批評誌・オピニオン誌の創刊が相次いだ。そんな中、異色ともいえる存在が、4月26日に創刊された“ライトオピニオン誌”「m9」(晋遊舎)だ。「エムキュー」と読むこの雑誌名、創刊の辞によれば、アスキーアートの「m9(^Д^)」から取ったらしい。「元々は面白かったり驚いたりするときに使う顔文字らしいですが、『正論を突きつける』ときなどにも使われているようです」(「m9」『はじめに』より)と記し、このAAのように、「社会のあらゆることに人差し指を突きつけて、問題提起を行っていく」ことを目指しているそうだ。とはいえ、言論誌に元気がなくなったと言われるようになって久しい今、新たなオピニオン誌を創刊する勝算は、どこにあるのだろうか?
「m9」の目次を見てみると、特集の「格差・ニート・ワーキングプア」から、「アキバ系腐女子の間で大麻が大流行!?」「今こそキン肉マンを再評価せよ!」「野菜があぶない!」などなど、実に幅広い内容のタイトルが並んでいる。幅広すぎて、やや雑多な印象を受けるくらいだ。そもそも、「m9」が標榜する「ライトオピニオン」とは何なのだろう。
「『大文字の文学とライトノベル』の対比関係になぞらえた、『大文字の言論とライトオピニオン』という位置付けです。我ながら良いキャッチだと自讃しています(笑)。文学の分野では、価値観の変化による既存誌への馴染めなさが、『文学』の衰退とライトノベルの興隆、という形ですでに顕在化しています。『言論』分野でも同様に、仰々しい『言論・オピニオン』でなく、若い世代の感覚とリンクした『ライトオピニオン(Light Opinion)』という可能性を見出していきたいと考えています。言論誌の読者は年配の方がメインで、新しい若い読者が全然入ってこない。なぜかというと、既存誌にあるのは有閑階級のたわごとであり、老人同士の内ゲバに過ぎないから。老人の暇つぶしのような不毛な議論が幅をきかせている現状に、一石を投じたい。現代の若者はオピニオンがない、マーケットとして存在しないというわけではないと思います」(「m9」編集長・丹下晃秀さん)
「老人同士の内ゲバ」とはなかなか手厳しい。確かに、既存のオピニオン誌は装丁もジジ臭く、「m9」は今回表紙に漫画家・羽生生純のイラストを使うなど、ターゲットにしている層が異なることは一目瞭然。だが、「m9」を発行する晋遊舎といえば、表紙が「サイゾー」に似ていることでも一部話題になった月刊誌「スレッド」を発行していた出版社。「スレッド」は残念ながら3号で休刊になってしまったが、「m9」もその二の舞になるのでは、といった声が、ネットを中心に上がっている。しかも「m9」を一読したところ、雑誌内にはほとんど広告が見当たらない。これで収支のバランスは大丈夫なのか、心配になるが……。
「『スレッド』は予算をかなり超過してしまって、偉い人からこってり怒られました(笑)。その反省をふまえて、『m9』は制作費を抑えられる体裁になっていますが、儲からなければ当然、二の舞になります。広告に関しては、弊社お得意のエロ系などは入れない方向で営業の人にお願いしたところ、結果として今回ほとんど入らなかった(笑)。このまま広告が入らないと正直かなりツライというか、本の存続に関わる問題ですね。もともと実売だけではたいして利益は出ないので、『m9』からスピンアウトしたムックや書籍で儲けを出すなどしないと、すぐに休刊になるでしょう。弊社は新書もやっておりまして、『m9』は新書を量産するための母体にしていきたいという目論見もあったりします」(同)
たしかに、新書は書き下ろしがほとんどなので、雑誌の連載をまとめて発行することで効率化を図れるのかもしれない。とはいえ、単行本の発行より先に、母体の雑誌がなくなってしまっては元も子もないのだが……。「m9」さん、苦戦を強いられる雑誌市場で戦う者同士、頑張っていきましょうね!
(編集部)
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