倖田なき後はEXILE頼み!? 音楽業界に未来はあるのか(中編)
#音楽
アーティストを作れないレコード会社なんて不要
──レコード会社の必要性が薄れた経緯というのは?
A 昔はレコード会社が、原盤、出版、興行、マーチャンダイズといった音楽にまつわる権利を全部持っていたんです。そんな中、B,zやZARDを生み出したビーイングを始めとするプロダクションや事務所が、自ら売れるアーティストを発掘してレコード会社に持ち込み、ヒットを連発させた。レコード会社側は彼らにおんぶに抱っこだったわけですが、高い契約金を払って自社につなぎ留めた上に、徐々に原盤権や出版権が彼らに奪われ、さらにはヒットを生み出すノウハウまでも失っていったんです。これじゃ、ダメになるのも当然ですよ。
D しかも今は、CDそのものの売り上げが恐ろしい勢いで下がってきているわけで、レコード会社だけでなく、レコードショップもかなりやばい。
A この間は新星堂が赤字続きで事業再生計画を発表していたけれど、ショップは本当にどこもやばい。タワーレコードもHMVも頑張っているけれど、いつ潰れても誰も驚かない。
C 渋谷のタワーも、昔に比べると全然客がいなくなっちゃってるもんね。
B 実際、タワーレコードは東京ドーム7個分の在庫を抱えているという、業界内での都市伝説があります(苦笑)。
A CDを売って儲けるというビジネスモデル自体が、終わってきたんだよ。
C アメリカのタワーレコードは、06年に潰れていますね。07年のアメリカにおける音楽ソフト総売り上げのトップは、スーパーマーケットのウォルマートだった。2位はiTunes Storeで、ベスト5の、残る3つもスーパーマーケットでしたからね。それも売り上げは決して増えているわけでなく、スーパーは旧作だけでなく、新作も値引き販売するという奇策を用いてのことだからね。日本と違い、再販制度がないアメリカだから、できるんだけど。
──そんなにCDって売れていないんですか?
B 売れてない。だって、07年に10 0万枚を達成したのはEXILEとミスチル、コブクロくらい。ほかにミリオンが期待できるのは、宇多田ヒカルくらいでしょ。今年に入って徳永英明のカバーアルバムもミリオン行ったみたいだけど、今は50万枚以上を売るというのは奇跡に近い。
C しかも、CDは在庫がどんどんと残っていきますから。再販制度があるので、たとえば昔のCDを100円で売ってしまうというようなことはできないんです。5年前のものであっても、2~3割引きで売るのが精いっぱい。
──そういう部分も含めて、今後、日本の音楽業界の構造がガラリと変わるようなことはありますか?
C 業界全体に変わらなければという意識が共有されていればいいんだけど、アメリカと違って、日本はまだ音楽業界独自の流通経路が残っていて、その古い体制を守らないといけないという、しがらみがあるんですよ。
B エイベックスも一度、CDの値段を一律なものではなく、もっと安くしようと努力したことがあったんですが、業界の抵抗がきつくて断念してますよね。最近は、タイトルによっては値段が安いものも出せるようになってきたんですけれども。
A ほころびが出てきているよね。自戒を込めて言うんだけど、CDという形が音楽業界のメインになって20年がたっているんだから、そろそろ次のビジネスモデルが出てくることは当たり前なんですよ。
配信モデルは、次世代の音楽ビジネスに定着するか?
──いわゆる「着うた」等、音楽データの配信ビジネスも始まっていますけれど、これは次世代の音楽産業の中心になるのでしょうか?
D どうでしょう。それなりに売れているようですが、僕は配信オンリーになるようなことは考えづらいと思う。
B 音楽を購入するポイントとして、モノを所有するという部分も大きいですからね。
C 07年の音楽配信の総売り上げは、業界全体で755億円。伸びているし、それなりの数字なんですが、我々に入る利益でいえば、今の経営状況にとっては焼け石に水です。むしろ今は、CDをひとつのパッケージ商品として売る方向に進んでいる。DVDを付けたり、写真集を付けたり、いろいろな付加価値の部分を付けようと。
A CDがこのままじゃもうダメだということはみんながわかっているんだよね。しかし、「次はこれだ!」というアイデアがまだ生まれていない。これが一番の問題。音楽ビジネスが、配信モデルに完全に移行するとも思わない。そもそも、売っている自分たち自身に、配信がCDの売り上げに取って代わるほど拡大するという自信がない。
それより、音楽そのものに対する欲望みたいなものの水準が、全般的に下がってきている気がするんです。CDにせよデータにせよ、わざわざ購入するほどの魅力を感じないというか。
B 確かに、娯楽としてCD購入をする人が減っているとは思う。10年前はカラオケ文化がありましたよね。若者はみんなシングルを買ってカラオケに行っていた。携帯電話にお金を奪われている今の若い人たちに、そんな余裕はないですよ。音楽番組の視聴率は下がっていないし、音楽離れが起きているわけではない。しかし、CDは確実に売れなくなってきている。
C 音楽に対する需要は、減っていないと思いますよ。ただ、なぜか購入には結びついていないんですよね。
A お金よりも、消費者の時間をどう奪うかということだと思う。ゲームも携帯も、みんなすごい時間を消費しているじゃない? 結局、魅力的なものを我々が提供できていないんだよ。“ながら聴き”できる底の浅い音楽をお金を出してまで買おうと思えないのは当然のこと。新たなビジネスモデルを模索するとともに、業界のA&R(アーティストの発掘・育成から、楽曲の制作・宣伝までを一貫して行う職務)がもっと力をつけてくれれば、状況は改善されると思っているんだけどね。
(「サイゾー」5月号より/後編へ続く)
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