トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 社会  > ドル安がアメリカと世界経済に及ぼす功罪とは?

ドル安がアメリカと世界経済に及ぼす功罪とは?

20080425_kabuyasu.jpg3月、ブッシュ大統領も「ドル高を目指す」と宣言し
たが……(CNBCニュースより)

サイゾーと企画会社「takibi」がプロデュースする、“投資と経済情報のコミュニティサイト”「株ココロ」で連載中の、注目コンテンツをお届け!

【NY発!ウォールストリート・アナリストの目】
 自他共に認める、世界経済の中心国アメリカ。その中でも、ニューヨークマンハッタン島に位置する「ウォールストリート」は、全世界のマーケット情報や人材が集まる金融の中心だ。そんな地において、第一線で活躍するアナリストたちが、日本からは見えにくいアメリカの実像、そしてアメリカから見た世界の微動・激動をレポートする。

■今月のアナリスト:リチャード・アイリー (Richard Iley)

 はじめまして。BNPパリバ・ニューヨークのリチャード・アイリーと申します。今回は私が、ドルの下落がアメリカやその他の国に与える影響について、簡単にお話をしたいと思います。

 まず、ここのところ、なぜアメリカのドルが安くなっているかということに関して説明します。その主な理由はいくつか挙げられていますが、直接的な理由としては、FRB(連邦準備理事会)が公定歩合を積極的に引き下げていることが挙げられるでしょう。FRB は、3月中旬にも公定歩合を3.50%から3.25%に引き下げることを決定し、即日実施しました。その結果、ドルの対ユーロ相場は最安値を更新したのです。

 FRBが、なぜこのようなことをするのか? それは、投資、特に外国から直接投資の対象国として、アメリカが世界のどこの国よりも魅力的となるレベルまで米ドルの価値を下げる必要があるので、積極的に公定歩合を引き下げているのです。

 では、なぜ、そこまでして外国からの投資を喚起したがるのか?それは、アメリカ経済を長期的に見た場合、経常収支赤字が膨大なため、その赤字を穴埋めする資金が必要とされていることが大きな理由として考えられます。アメリカの経常収支赤字の対名目GDP比率は、5.5パーセントにも上ります。アメリカ経済は、いわば海外からの借金に頼って回っているということです。最近、IMFが発表したデータは、世界中の資金の50パーセントが、アメリカに流れ込んでいる様子を示していました。米国の経常収支の赤字が、いかに膨大なものかおわかりになるでしょう。

ドル安が市民生活と国内経済に与える影響

 一般的には、アメリカが抱える巨額な双子の赤字(財政赤字と経常収支の赤字)がドル安の引き金になっているとみられています。その双子の赤字拡大は、アメリカの消費者(国民)が、貯蓄よりも消費に向かうという嗜好を反映しています。つまり、消費者の資金がアメリカの強大な金融市場に流入せず、結果、海外からの流入に頼ってしまっているわけです。赤字拡大は政府の政策に直接起因するものではなく、民間部門が生み出してきたものなのです。

 では、アメリカの家庭の貯蓄率は、なぜ極端に低いのか?アメリカでは近年、資産価格、特に住宅の評価額がとても高いレベルにあったため、アメリカの消費者はその資産を頼りにして、過去10年の間、貯蓄をしてこなかったのです。しかしその後、住宅市場のバブルが崩壊し、資産価格は通常のレベルへと是正されつつあります。つまり、現在、資産価格は期待していたほど高くないため、消費者は将来のことを考えて貯蓄せざるを得ない状況になっています。これは、双子の赤字を解消していくためには、必要な状況です。

 また、アメリカの家庭の貯蓄率が低い理由のひとつとして、簡単にお金を借りられたことも考えられます。数年前は貸し出しの利率がとても低く、また規制が緩いため、誰もが借りられました。資産価値の高い住宅を担保に入れてお金を借りれば、かなりの金額を借り入れることも可能でした。そうした銀行の貸し出しは金融機関によって行われているもので、FRBが規制しているものではないのです。こうした点も、家庭単位で赤字を生み出し、それがアメリカ経済に影響を与えてきた要因です。

 ところが、ドルが下落したことで、アメリカ国内のガソリンや輸入品が値上がりしたため、消費者は今まで以上にお金が必要になりました。結果、これまでのようにむやみに消費するのではなく、支出を抑制しなくてはならなくなるのです。こうした流れは、ドル安による、アメリカ経済の調整を意味します。ドル安により、消費が圧迫されることが重要なのです。

 一方で、ドル安により、多くの人々の収入は落ち込み、職を失う人も増えています。このような傾向が、いっそう消費者の支出を抑制しているのです。少なくとも、アメリカは07年の後半からすでに、3カ月間リセッション(景気後退)に入っているのです。このように、ドル安は長期的にみれば、アメリカ経済の調整役となりますが、短期的にみれば、国民生活を苦しめることになっています。

⇒この続きは、株ココロで!

リチャード・アイリー (Richard Iley)
イギリス出身。英国財務省に勤務後、ABNアムロ証券、ロンドンのBNP パリバ証券を経て、現在、ニューヨークのBNP パリバ証券にて、顧客やトレーダーにアメリカやカナダの金融、経済、政治情勢と予測を伝えている。フィナンシャルタイムス、BBC、CNN、CNBC、インターナショナル・ヘラルドトリビューンなど主要なメディアでコメンテーターを務める米国屈指の著名アナリスト。

【関連記事】 株安は外資排斥のせい!? 不景気の要因は国内にあり
【関連記事】 株式投資本を書いているタレントの、投資テクニックとは?
【関連記事】 「新興市場」「ITベンチャー」に光明はあるのか?

最終更新:2008/05/21 22:34
ページ上部へ戻る

配給映画