「広告批評」休刊の真相 どうなる? マス広告の未来
#雑誌
広告クリエイター向け専門誌として30年近い歴史を持つ「広告批評」(マドラ出版)が、1年後の2009年4月号をもって休刊することを発表した。広告を大衆文化としてとらえた批評に加えて、クリエイティブ畑に近いとされるような芸人や作家、アーティストなどを多く登場させて話題になった「広告批評」。またアートディレクションにもこだわり、その華やかさ、スマートさで、広告業界に興味を持つ若者などの心をつかんできた。08年4月号巻末に、編集兼発行人・島森路子氏と、社主・天野祐吉氏との連名で休刊の挨拶が掲載されている。
その中で天野・島森両氏は、「広告がマスメディア一辺倒の時代からウェブとの連携時代へ、大きな転形期を迎え」、「マスメディア広告【編註:基本的には、テレビ、新聞、雑誌、ラジオの主要4媒体に出される広告を指す】と一緒に歩き続けてきた小誌としては、このへんでひとつの区切りをつけたい」と休刊の理由を述べ、「部数減が理由ではない」と、4月号より編集長に就任した河尻亨一氏も断言する。が、ウェブとの連携広告自体は「広告批評」でも今までにも取り上げてきたのだし、内容をシフトするという手もあったはず。さらに、最近では、紙媒体と並行してウェブ上で記事を公開している雑誌も多い。批評の対象の形が変わったなら、媒体の形を変えるという手段もあり得た。「広告批評」はそれらの道を選ぼうとは考えなかったのだろうか? 直接編集長に聞いてみた。
「ウェブ広告を今の『広告批評』のスタイルで批評するのには、自分としては、ある種の違和感とギャップを感じています。また、ウェブ上で形を変えて、というのは今のところ考えていません。あと1年、『広告批評』という『雑誌』が今やれることに大胆に果敢に、挑戦していきたい。広告という時代の表現と並走する、その役割を全うしたいと考えています」(「広告批評」編集長・河尻氏)
歴史を締めくくる大役だけに、新編集長の気合いは十分。とはいえ、広告の現場に立つ広告代理店社員からはこんな声も上がっている。
「ウェブ広告はマスメディア広告に比べて、クリエイターにとって参入の壁が低く、裾野が広がっています。『広告批評』は、そこで生まれるであろう膨大な無名クリエイターたちの可能性に、対応していっていなかった。マスメディア広告のクリエイター向けだけでは、あまりにニッチすぎます。かつて愛読していただけに個人的には寂しいですが、休刊は仕方ない気もします」(大手広告代理店社員)
インターネットにおける広告費が4800億円を超え、1700億円(06年当時)のラジオ、4777億円(同)の雑誌の広告費を抜いたのは2年前。その後も順調に増加し、07年には6000億円を突破、新聞広告費に迫る勢いを見せている。テレビ広告は依然として巨大な存在だが、それもHDDレコーダーなどの普及で視聴者によるCM飛ばしが可能になったことから、広告効果に疑念が生じており、広告出稿量の減少が予想される。マス広告の牙城は崩される一方だ。その台頭とともに生まれ、ともに幕を下ろす「広告批評」。専門誌の休刊は、広告の形が変化しきった証なのかもしれない。
がんばれ新編集長! 応援しています
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