読売新聞による“言論弾圧”著作権裁判が始まる!
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本サイトでも既報した(記事参照)ジャーナリストの黒藪哲哉氏が読売新聞西部本社(福岡市中央区)の法務室長・江崎徹志氏から著作権を侵害されたとして訴えられた裁判の第一回口頭弁論が4月14日10時30分から、東京地裁第526号法廷において行われた。傍聴にはフリーのジャーナリストたちをはじめ、社会問題に関心をもつ一般市民、さらにスーツ姿のサラリーマン風の男性などが席を埋めた。
被告席には黒藪氏とともに、久留米市に事務所を置き、新聞販売店の問題に取り組んでいる市橋康之弁護士が着いた。原告席には代理人である喜田村洋一弁護士のみで、江崎氏本人の姿はなかった。
まず、原告である読売側から、準備書面と証拠9点の提出が確認された。被告側からは答弁書と求釈明が提出され、裁判官によってこれらの文書確認が進められた。
その際に、清水節裁判長から原告・読売側代理人に対し、「(問題の)催告書が著作物であるとする具体的な論点を示したものを提出するように」と指示。被告側には「その他の点についての認否」を提示するよう述べ、事務的な確認を済ませて散会となった。
今回の裁判では、事務的な文書である「催告書」が著作物としての要件を満たしているのかが最大の争点であろう。散会後に行われた説明会で市橋弁護士がこの点に触れ、「訴状に記された原告による主張が不十分だったので、裁判所が釈明を求めたものの納得できるものではなかったようです」と説明。原告の主張に対して疑問を感じた裁判所が、さらに「この催告書を著作物とするより具体的なもの」を求めたというわけである。
著作権主張への疑問点
インターネットの普及とメディアの多様化などによって、著作権についての裁判や論争が飛躍的に増えている。しかし、それでも「催告書」やそれに類するような書類を著作物と主張したり、認めたりした裁判や判例はまだ見当たらない。
果たして読売側は、どれほど具体的かつ論理的な論拠を提出してくるのだろうか。そう考えていくと、「著作物たる要件」という点以外にも、さまざまな疑問が浮かび上がってくる。
たとえば、江崎氏が著作権侵害を主張することによって、何を補填できるのか。あるいは、どのような利益を得るのか。これが作家などの芸術家やジャーナリストなどの表現者であれば、自らの著作物に対する名誉と尊厳の問題となるであろうし、そもそも著作者にとって著作とは生活の糧を生み出すものであるから、著作権を守ることは自らの生命と財産を防衛することである。
しかし、江崎氏は読売新聞社の法務室長という職にあり、かつ当の催告書は無料で送付されたものである。そう考えると、その催告書の著作物性が認められたとして、はたして江崎氏にどのような利益が得られるのであろうか。
かく考えていくと、この訴えを起こした利益の可能性としては、黒藪氏への言いがかり、あるいは口封じ的な言論妨害ではなかろうかという疑惑がますます強くなってくる。
批判に対する意趣返しか !?
黒藪氏はこれまで、新聞業界ではタブーとされている「押し紙」の問題などについて粘り強く取材を続け、その成果を『新聞があぶない』(花伝社)、『崩壊する新聞』(同)、『新聞社の欺瞞商法』(リム出版新社)などの著書として発刊。また、インターネット配信のニュースサイト「マイ・ニュース・ジャパン」や、自らのサイト『新聞販売黒書』からも記事を発信している。だが、「押し紙」の問題についてマスコミによって報じられることはほとんどない。押し紙とは、簡単にいえば、新聞社が売り上げと発行部数を確保するために、販売店に買い取らせている“読者に届かぬ”新聞のことで、新聞社の売り上げの2~3割を占めるをいわれてきた。そうした新聞業界にとって知られたくないタブーを報じ続けている黒藪氏は、まさしく「目の上のたんこぶ」なのだろう。
近年、訴訟を「言論封じ」に乱用する事例が増えつつある。何人ものジャーナリストが訴えられた武富士裁判や、昨年に起きたオリコンによるジャーナリスト烏賀陽弘道氏が提訴された事件など、いわゆるSLAPP=恫喝訴訟と呼ばれる類のものである。今回の事件も、その色彩がないといえるだろうか。
それにしても、読売新聞ともあろう言論機関が、なぜ法的処置という強硬手段に出たのか。黒藪氏は、「いままでは『押し紙』について、(読売は)押さえつけ、ひねり潰して表沙汰にならないよう、極力知られないようにしてきた経緯があります。それら都合の悪い書類や情報が、表に出てくるのを恐れているのではないでしょうか」と話す。
この裁判を通じて、従来は新聞業界など一部でしか知られていなかった『押し紙』の問題が、より広く知られることとなったら、それは大きな意味があることは間違いなかろう。ただ、それによってどのような影響が生じ、誰が利益を手にするのかは筆者の推測できるところではないが。
次回口頭弁論は5月28日に決まったが、代理人等は出廷せずに電話会議の形で弁論準備が行われるのみなので、非公開で行われ傍聴はない。傍聴できる弁論の開催についてはまだ未定となっている。
(橋本玉泉)
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